稀代の掃除音痴が家事代行サービスを使ってみた結果
小田原への引越しが十月一日に迫っている。あと二ヶ月あるので「迫っている」というほどでもないのでは? と思われる方もいらっしゃるかも知れないが、掃除と整理整頓が壊滅的に不得手な私にとっては二ヶ月の期限というのはなかなかどうして逼迫した状況と言えるのだ。一刻も早く引越しに纏わる作業へ手をつけなければ、この家を出る数日前からほぼ徹夜で荷造りと掃除をしなければならなくなる。(引越しの一ヶ月前まで作業に手をつけなかった前回がそうだった)
なので今回は、前回の反省をもとに出来得る限り早めの行動に移すことにした。まずは掃除だ。
前述したが、私は掃除が不得手。否、できないといっても過言ではない。特に我が家のキッチン周りの汚れといったら目も当てられない状態だった。恥ずかしながら、換気扇とガス台は約三年前に今の家に越してきてから掃除をしたことがないのである。想像してみてほしい。油汚れが幾重にも重なって黒くこびり着いたガス台に、茶色い埃がびっしりの換気扇フィルター。全く以って手に負える気がしない。
なので、悩んだ末に白旗を上げプロの手を借りることにした。即ち、家事代行サービスの利用である。
今回はテレビでもよく紹介されている「ピナイ家事代行サービス」さんを利用させて頂いた。
決め手は、派遣されるスタッフさんとの遣り取りが最小限で済むと某番組で紹介されていたためだ。初めて会う人とのコミュニケーションが苦手というわけではないのだが、上記の状態のキッチンを掃除してもらう人との交流となると、恥が先に立って居た堪れない。尤も、先方のスタッフさんもプロの方であるからしてこれは私の自意識過剰である蓋然性が高いのだが。
我が家に訪れたのは、恐らくは二十代の小柄な可愛らしい女性スタッフさんであった。作業時間は三時間。とにかくガス台周りを綺麗にしてほしい。とこちらの要望をお伝えすると、洗面所で手を洗うのもそこそこにさっと作業へ取り掛かってくれた。評判通り「黙々と」という言葉がこれ以上似合う人もいないだろうというほどの集中ぶり。
そうして三時間後。ガス台と換気扇フィルターは見違えるほど綺麗になった。家事代行のお姉さん様様である。実をいうと三時間では手が回らなかったという部分もあるのだが、それはそもそも依頼した箇所の汚れが酷過ぎたためなので全くもってお姉さんに否はない。
さて。この家事代行サービスの利用であるが、私の意識に些かの変化を齎した。
今、私は荷造りの合間の休憩がてら、暇さえあれば家中のそこここを磨いており、ガス台も使う度にキッチンクリーナーのシートで拭き上げて現状維持を保っている。割れ窓理論の逆で、プロに掃除してもらった部分以外の汚れが目立つのが気になり始め掃除の意欲が高まったのだ。
この変化に、私は大いに驚いている。あの掃除嫌いの私があれから掃除機を手にしない日がないとは、これぞまさに驚天動地である。
家事代行サービス。正直なところ私にとっては少々心理的にハードルの高い買い物であったが、頼んでみれば期待以上の成果を上げてくれた。一番いいのはこうしたサービスを利用しなくてもいいくらいハウスキープができることなのだろうが、今回こうして味を占めた私はきっとまた何か家事で途方に暮れた時はすぐにサービスを利用するに違いない。
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