死にたい欲求、殺したい欲求
夫に連休があったので、富士急ハイランドと池袋のアックススローBARへ行ってきた。
富士急ハイランドは言わずもがな絶叫マシーンの聖地。アックススローはダーツの斧版といったようなスポーツで、こちらの店舗ではアックススローの他に「物壊し放題」「落書きし放題」といったようなインモラルな行為を安全かつ合法的に娯楽として楽しむことができる。
煙となんとかは高いところが好きとはよく言ったもので、私も例に漏れず高いところが好きだ。なので高低差の激しい絶叫マシーンやバンジージャンプも好む。スリルを味わいたいからというのが一番の理由だが、その「スリル」というのは、私にとってはイコールで「死」の疑似体験である。なんてことをメンヘラの私が書くとわりとシャレにならんな。とは思うが、そうしたスリルを求める人は意外と多いのではないだろうか。
そんな次第で、絶叫マシンでスリルを味わうことは、私にとっては希死念慮の発散方法の一つになるなと今回ひとつ学びを得た。(かと言って、うつ状態の酷い時に遊園地まで行けるかというと到底無理なのだが)
翻って夫は、今回富士急ハイランドへ行って絶叫マシンが苦手であることが判明した。どうやら彼は高いところがやや苦手というのもあるが、それよりもマシンの安全面に不安を覚える性質であるらしい。「ええじゃないか」「ZOKKON」と立て続けに乗り、昼食を摂った後あたりからしきりに「マシンから放り出されそうで怖い」と言い始めた。
私はそんなことを全く考えたことがなかったので、これには目から鱗であった。強風などで運行に危険が伴うならそのマシンは運休になるであろうし、施設の安全対策を鵜呑みにするのが私である。何かあれば、まあその時はその時だ。やはり私には命を軽んじがちなところがあるのかも知れない。
アックススローBARを訪れたのは翌日のことだ。富士急ハイランドの絶叫マシンから打って変わってこちらは夫もノリノリであった。
斧を投げて的に当てるのは夫婦ともに初めての体験であったが、少しのコツを掴めば思っていたより命中するもので、爽快感がある。一方オプションで付けた手裏剣打ちの方は斧よりもやや難易度が高く、なかなか的に届かない。忍者の卵たちは随分と厳しい訓練をしていたのだなあと感心することしきりであった。(私は子どもの頃から「落第忍者乱太郎」のファンである)
アックススローの後は「物壊し放題」を愉しんだ。これはいくつかの割れ物と小型家電をバールや鉄パイプで破壊しまくるというわりと無茶苦茶なアトラクションである。
つなぎとヘルメット、安全靴と手袋を装備しいざ物壊しルームへ。用意された皿やグラス、ポット、圧力鍋を薙ぎ倒し、叩き割り、蹴飛ばし破壊する。自然と雄叫びが上がる。
普段なら、手を滑らせて皿を割ろうものなら肩を落としてしょぼしょぼと破片を集めて掃除機をかけ、心の中で「すまない、皿よ……」と詫びの一つも入れているところである。
一方この場では趣旨通り壊し放題。物に対してやりたい放題の暴力と蹂躙を許される。
これもまた爽快であり、また少しの背徳感もあり、興味深いアトラクションであった。絶叫マシンが「死にたい欲求」の発散であるとするならば、こちらは「殺したい欲求」の発散とでもいったところか。(別に殺したいほど憎い人間がいるかといえばそうでもないのだが)
そんな次第で二日間存分に、そして安全かつ合法的に自分の命や物の在り方を軽んじ、表裏一体のストレス発散に勤しんだ。ある意味「自傷」と「他害」に勤しんだとも言える。出不精の私にとってストレス発散の方法といえば専ら睡眠ばかりであったが、日の元に出てみれば案外と多様なストレス発散の手段があるものだ。
そうしてストレス発散をした後、気が大きくなったのか推したちのフィギュアやアクスタをいくつか購入したりもして些か散財した。なので来る宝塚記念で取り返したいところだったが、馬券はまるっと外した。ブローザホーン号と菅原明騎手、初G1勝利おめでとうございます。
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