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イケポのつくりかた02_情報の整理

こんにちは。あなたのパワポを簡単な5ステップで改善する「イケポのつくりかた」講座の第2回目です。前回はイケポの特徴とパワポを開く前の準備についてお話しました。今回は「情報の整理」のやり方を説明していきます。

「情報の整理」ってどういうこと?

例えば、散らかった家の中を片付けたい時は「整理→整頓→清潔」の順番で行う必要があります。つまり、まず家の中にあるモノを全て取り出して総量を把握したら、本当に必要なものだけを残して不要なモノを捨てます。次に使用頻度の高いモノを取り出しやすいように並び替え、最後にモノのメンテナンスを行って清潔さを保つことで、心地よく住みやすい環境を作ることができます。

これと同じように、パワポをイケポにしたい時は「情報の整理→情報の整頓→デザイン」の順番で行う必要があります。つまり、まずパワポの中にある情報を全て取り出して一覧できる状態にし、プレゼンのゴールから逆算した「伝えるべきポイント」を絞り込んで不要な情報を全て捨てます(情報の整理)。次に残った情報を意味的・視覚的に分かりやすく並べ替えます(情報の整頓)。最後に残ったスライドのデザインをブラッシュアップすることで、世界観のあるパワポを作ることができます(デザイン)。

実は、プレゼンクリエイターのお仕事で多いのが「パワポのリデザイン」の依頼で、クライアントの担当者から「もっとシンプルで分かりやすいスライドにしたい」という要望を頂きます。しかし、多くの担当者がこの「情報の整理」の部分、つまり伝えるべき情報を取捨選択して不要な情報を捨てる、という事を苦手としています。

メタボなパワポが量産される理由

私がサラリーマン時代に感じたのは、多くの日本企業では「加点主義」でなく「減点主義」で人事評価されるということです。このような評価のもとでは、「情報を取捨選択した見やすいスライドを作って結果を出す」ことよりも、「情報を雪だるま式に増やして失点を防ぐ」ことにインセンティブが働きがちです。

また、日本の学校教育でもプレゼンする機会が少ないため、学生時代にパワポを作る経験があまりないまま、社会人になる人が多いのも原因のひとつだと思います。パワポのあるべき姿が分からないので不安になり、あれもこれも情報を詰め込んだ結果、自分でも何を言いたいのか分からないパワポができて、さらに苦手意識が増す…という悪循環に陥っている人も少なくありません。

今まで経験のないことに取り組むのは勇気がいりますが、苦手意識を断ち切るためにも、上司の顔色を気にしすぎず、自分自身の考えや信念に基づいてパワポに向き合いましょう。情報を減らしてプレゼンがうまくいかなければ改善すればよいだけなので、トライ&エラーを繰返しながら自分らしい「イケポ」を完成させてほしいと思います。

それでは、いよいよパワポを開いて不要な情報を捨てていきましょう。

プレゼンのあるべき姿(=ゴール×時間×枚数)をイメージする

イケポにしたいパワポを開いたら、パワポを見ながら紙に黒いペンでスライド番号(S1、S2…とつけます)とタイトル(なければ、内容が分かる短いメモでOK)を記載して、パワポの全体像を把握します。ここで大事なのは、スライド全体の項目が一覧できるように1枚の紙に全ての情報をおさめることです。

全部書き出せたら、これから作りたいプレゼンのあるべき姿を「ゴール」「時間」「枚数」に分けて確認します。プレゼンのゴールとは、プレゼンをしてどんな結果をだしたいのかという目的、プレゼン時間はプレゼンターが発表できる時間、プレゼン枚数は製作するべきスライド枚数です。

「プレゼンのゴール」については前回お話ししたように、パワポを製作する前にプレゼンをした結果、誰にどう動いてほしいのかを考えておく必要があります。最短距離で目的地にたどりつくために、プレゼンのゴールを具体的に考えて紙に書きだしておきましょう。

「プレゼン時間」はあらかじめ決められている場合もありますが、プレゼンターが自由に決められる場合は、自分で何分のプレゼンをするか考えておく必要があります。有名な10/20/30ルールでは「スライドは10枚以内、時間は20分以内、文字サイズは30ポイント以上」とされます。世界的なプレゼンアーカイブであるTEDでも20分以内のプレゼンが中心です。プレゼンの内容や場面によっても異なりますが、ここでは20分程度のプレゼンを基準に考えていきます(文字サイズについては諸説あるので、次回にまとめます)。

「プレゼン枚数」については、一般的に1枚のスライドについて1~3分程度といわれています。これもスライドの文字数やプレゼンターが話すスピード等、様々な要因によって変わります。ここでは1枚のスライドを2分で説明する計算で、20分のプレゼンを10枚のスライドで説明する場合を基準にします。

プレゼンのあるべき姿(=ゴール×時間×枚数)をイメージしたら、自然にプレゼン構成の目安が決まります。例えば10枚のスライドであれば以下の構成を基本として、場面に応じて調整しましょう。

・オープニング:表紙(1)、目次(1)、ビジョン(1)の合計3枚
・ボディ(SDS型):概要(1)、詳細(3)、まとめ(1)の合計5枚
・クロージング:未来(1)、結論(1)の合計2枚

ここまでできたらパワポの全体像を書き出したノートに戻り、現状のパワポ構成と「プレゼンのあるべき姿」がどの程度乖離しているかを確認します。

伝えるべきポイントを絞り込もう

「情報の整理」は不要な情報を捨てることを意味します。このステップにおいて必要なのが「スライド枚数の絞り込み」「1スライド1メッセージ」「文字数の絞り込み」です。

スライド枚数の絞り込み

まずは「現状の構成」と「あるべき構成」を比較して、現状のパワポ枚数があるべき姿より大幅に多い場合は、本当に必要なスライド以外は全て捨てる必要があります。人間はモノや情報を捨てる際に、本能的に恐怖を感じる性質がありますが、自分で決めた「あるべき構成」を信じてスライド枚数を絞り込みます。

スライドが多すぎてどれを捨てるべきか判断しづらい場合は、複数の類似したスライドを丸で囲んでグルーピングしてから、内容が重複したスライドや重要度の低いスライドグループを削除すると、作業しやすくなります。

逆に「あるべき構成」で必要なスライドが「現状の構成」に含まれていない場合は、赤ペンで必要なスライドタイトルを追加してバランスの良い構成にすることも必要です。

紙の上で取捨選択すべきスライドを決めたら、PCで現状のパワポを開いて不要なスライドを削除していきます(誤って削除しすぎても問題ないように、念のため現状のパワポのコピーをPCに保存しておきましょう)。この際に追加するスライドがあれば、白紙のスライドを追加してタイトルを記入しておきます。

1スライド1メッセージ

PC上でスライド枚数を絞り込んだら、次は各スライドが「1スライド1メッセージ」になっていることを確認しましょう。1枚のスライドに複数のメッセージが含まれているとポイントがぼやけて、説明するときに相手に伝わりづらくなります。複数のメッセージを伝えたい場合はスライドを分けて製作するのがおすすめです。

文字数の絞り込み

最後に、メッセージを伝える際の文字数を絞り込みます。資料であればフォントが小さく、時間をかけて読むことができるので長文での説明で構いません。しかしパワポの場合は投影しても見やすいようにフォントを大きくする必要があり、プレゼン時間の制約もあります。パワポの文章は、一瞬で理解できるような短くて分かりやすい簡潔なものにしましょう。

まとめ

今回は、イケポをつくる5つのステップの2つ目「情報の整理」について説明しました。伝わりやすいストーリーや注目されるデザインを考える前に、まずは「プレゼンのゴール」から逆算して「あるべき構成」を考える必要があります。

「あるべき構成」ができたら、紙の上で「現状の構成」から取捨選択する情報を決めます(スライド枚数が10枚程度であれば紙でノートに書きだすほうが分かりやすいですが、スライド枚数が多い場合はエクセル等のスプレッドシートの方が情報管理や編集がやりやすいです)。

「あるべき構成」と「現状の構成」の乖離を把握した後に、PCを開いて現状のパワポを編集していきましょう。

次回は、いよいよ「情報の整理」です。図解やデータなどの表現を使って実際にパワポスライドを製作する方法を説明しますので、楽しみにお待ちくださいね。

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