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第100話 未来にあるもの

もし、なんでも夢が叶うとしたら、
あなたはどんな夢を描きますか?


夢は何ですか?

そう聞かれたら、私は何と答えるだろうか。


望み
願い

具体的には、どう違うのだろうか。

願いはある。
でも、きっと叶わないからと、
諦めているものも、たくさんある。


私の父は大工さんだった。
私は父が仕事をしているのを、
見ているのが好きだった。

工業高校の建築科に進学すると、
自分の家を設計して、父に建ててもらう。

それが私の夢になった。

高校を卒業して設計事務所に就職すると、
私が自分で設計事務所を作り、
父が家を建て、一緒に仕事をする。

それが父の夢になった。


数年して建築業界の景気が悪くなると、私の働いていた設計事務所も規模を縮小した。
リストラされた私は、建築業界を離れた。

私は父の夢を叶えてあげることが出来なかった。

それから私は結婚して、
子供が産まれ、
長い時間が経った。

私の夢はまだ持ち続けていたけれど、
10年前に東京に引っ越して、
その夢も叶うことはなかった。

そして今年、父は亡くなった。

最後まで心配をかけていた。
父の夢を叶えてあげることも出来なかった。

私は、いい娘だったのだろうか。


父が亡くなった後、
転職を決めた。

今は、ずっと戻りたかったけれど、
怖くて戻れなかった建築業界で働いている。

昔みたいに設計なんて大変な仕事ではない。
建築の知識なんて、あってもなくても出来る仕事だ。

それでも、今の仕事は楽しい。


父が、
人生はいつ終わるか分からない。と教えてくれた。
嫌な場所に居る時間はない。
あっという間に、終わってしまうかもしれない。


今年も来年も、
お盆もお正月も、
私達を待っていてくれると思っていた父は
もう居ない。


私は、父の分まで楽しく生きようと思う。
やりたい事をやって、
たくさん笑って生きようと思う。


叶っても叶わなくても
たくさん夢をみて
悩んだり迷ったりしながら、
生きていこうと思う。


今はまた、自分の家が欲しいと夢見ている。

子供達が巣立っていったら、
海の見える場所に、小さな家が欲しい。

どんな間取にする?
どんな家具を置く?
考えているだけで、幸せな気持ちになる。

大きくなった子供達が、自分の子供達を連れて遊びに来る。
私もきっと、
父や母のように、
それを楽しみに待つのだろう。

一緒にご飯を食べて
たくさん話をする。


私の夢や、
願いや、望みは、
いつも、当たり前の日常のすぐ隣にある。

手を伸ばせば届きそうで、
でも届かないところ。


私の未来に、
何が起こっているのかは分からない。

ただ分かるのは、
私はきっと、
大雑把で、男らしくて、
淋しがりやで、強がりなままで
今と変わらず、笑いながら生きていくのだろう。

それが、私の生き方だから。



今日でnoteを書き始めて、ちょうど9ヶ月になりました。
そして、100話目の投稿です!

区切りを大切にしたい。
そう思っています。

気が付くと、あっという間に日々が過ぎ去っている。
だから何かの区切りの時、少しだけ立ち止まって後ろを振り返る。

平坦な道でも、凸凹の道でも、
全てが私が歩いてきた道。
どんな出来事も、これでよかった。そう信じて、また前を向いて歩き出す。

ずっと、この繰り返し。

これからも、書き続けていきます。
いつも読んでくださる方、
コメントをくださる方、
本当に嬉しいです。

この出会いが
いつか、幸せに繋がると信じて。


ありがとうございます。


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