見出し画像

株式会社龍角散 代表取締役社長 藤井隆太さん

江戸時代に生まれた龍角散は、いかにして進化したか
龍角散の救世主となった「龍角散ダイレクト」を生み出した、8代目社長である藤井さん。藤井さんの社長としての直感・戦略・哲学は、変革期に必要な学びとなる。


1)龍角散の誕生は江戸時代

藤沢:藤沢久美の社長Talk、今日のゲストをご紹介します。今日は、株式会社龍角散、代表取締役社長藤井隆太さんです。藤井さん、よろしくお願いいたします。

藤井:よろしくどうぞ。

藤沢:もう龍角散は誰もが知っている龍角散なんですけれども。

藤井:ありがとうございます。

藤沢:はい。最近は、私なんかもラジオやっていますから、「龍角散ダイレクト」は手放せない。

藤井:ありがとうございます。

藤沢:はい。龍角散と言えば、とても歴史があって、創業が明治4年。

藤井:そうですね。創業ということになりますと明治4年ですが、当社の歴史を見ますと、創薬と、いつ薬ができたのかということをひもときますと、江戸時代なんです。寛政年間です。当時、私のご先祖様はお医者さんで、その当時に仕えていたのが秋田の佐竹公でした。佐竹公が、どうも喉が弱かったということで、殿のために調合したのが龍角散だといわれております。それは、書いたものがあるわけじゃないですけれども、ただ、古文書を見ますと、一般に売られるはるか前から、文久年間から龍角散と書いてあるんです。だから、存在はしました。正式には、明治になって藩の産業振興の一環として一般向けにも龍角散を売りなさいということで、東京に出てきて起業したということだと思うんです。ただ、その前からどうも売っていたようなので、どこが起源かというのは、なかなか難しいところなんです。だから、創薬は、寛政年間というふうにしてあるわけです。

藤沢:ということは、もう200年以上前からあるという。

藤井:そういうことです。はい。

藤沢:ですね。

藤井:でも、日本には、こういう家庭薬はたくさんありますので、400年以上のメーカーもいますし、うちなんかは中規模じゃないですかね。そこそこの長さだと思います。

藤沢:そんな歴史のある龍角散の藤井さんは、何代目ですか。

藤井:私は、8代目でございます。

2)「龍角散ダイレクト」はいかにして生まれたか

藤沢:8代目。この8代目の藤井さんが社長になられてから、まさに私も大好きな「龍角散ダイレクト」が生まれたんですよね。

藤井:ありがとうございます。

藤沢:あれは本当に画期的で、やっぱり私たちが龍角散というと、あの丸い缶に入っている、あの粉をスプーンですくって飲むというイメージだったのが、全く別のイメージに変わったんですけれども、この発想はどうして生まれてきたんですか?

藤井:私は25年前に社長になったわけですが、当時はどん底でございました。私はもともと音楽家ですけれども、10年ぐらいサラリーマン経験をした後、おやじががんになったというので、急きょ戻ってきて引き継ぐことになったんですが、売り上げが40億ぐらいで、借金は40億以上あるんだから、これはもう会社じゃないなと。当然、原点の龍角散パウダーの売り上げはがたがた。誰がこんなものを使うんだというぐらいひどい落ち方でございました。私が気が付いたのは、うちの社員は、これは駄目だ駄目だと言うんです。こんなものはやめて、もっと市場規模の大きい胃薬とか、風邪薬をやったらいいんじゃないかという意見がほとんどでした。社内でも色んな会議をやったり、コンサルにも意見を伺ったりしたんですけれども、みんな、そこそこ知名度があるんだから、もっと大きい市場に出たらいいんじゃないのという意見がほとんどだったんです。私は、ちょっと違ったんです。そんなうちみたいなところが大企業のまね事をしたって何も面白くはない。だけど、私が興味があったのは、昔、小林製薬に勤めていましたので、「のどぬ~る」というのは、私が、当時、最初の担当なんです。だから、喉の関係のことは多少勉強していましたし、龍角散という会社を外から見て、弱さというのがわかったんです。何しろ古臭くて新しいことは何もできないなと。いつまでも過去の歴史にしがみついている駄目な会社だ、ぐらいにしか思っていなかった。ところが、帰ってきてみると、確かに売り上げは落ちているんだけれども、龍角散パウダーはちゃんと売れているんです。これはおかしいなと。なぜかなと思って社員に聞いてみたって何も知りません。そんなのは昔からやっているからじゃないですかとか、効くからじゃないですかとか、「ゴホン!といえば 龍角散」で知っているからと。何を言っているんだ、これでは頼りにならんと思って、実際に愛用者を集めて色々意見を聞いてみたり、色々調査をかけたんです。そうしたら、すごいことがわかった。誰が見ても、この時代に、缶にこうやってスプーンですくって、はい、「ゴホン!といえば龍角散」って、そんなことをやるかと思ったんだけれども、じゃあ、これがお店に行って売っていなかったらどうされますかと言ったら、いや、そんなことは許せん。どこにでも探しに行くと言われる愛用者の皆さんがたくさんいらっしゃった。全体から見ると少ないですよ。だけど、僕は、涙が出るほどうれしかったです。ということは、やっぱりこの古臭くて駄目だと見える製品にも何かいいところがあるんだなと色々調べてみたら、生薬で、血中に入って効くんじゃないから、マイルドなんです。だから、妊婦さんとか、あるいは、持病があって、強い薬が飲めないという方が、喉だけを元気にしたいというときに使っていただいている。ノンシュガーだし、確かに使いにくいけれどもしょうがないなと。しょうがなくて使っていただいていたんです。これは申し訳ないなというので、じゃあ、その生薬のよさを生かしてもっとできないかなと考えたのが今のダイレクトなんですけれども、もともとうちには、水なしで溶ける顆粒の技術はあったんです。

ここから先は

14,525字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?