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「逆輸入」という言葉の説明を求めたら切れた中国人日本語教師と「和製漢語」のお話

中国国内の日本語教材に「逆輸入」という言葉がでてきました。その問題文を抜粋します。

「哲学」や「社会」という言葉が、日本から逆輸入されたのと同じように、「少子化」もこれからは中国で広く使われるようになるかもしれません。

特に違和感のない文章ですし、内容にも著者の意見にもおかしな所はありません。ですから、わたしは気にもしていなかったのですが、中国人日本語教師は違ったようです。

この「逆輸入」という言葉を説明し始めました。その中国人教師Aさんは、逆輸入とは1度国外に出たものが形をかえて元の国に戻ることです。例えば「三国演義」は中国人が書いたものですが、それが日本に行き「三国志」として帰ってきましたと説明します。

Aさんの言う「三国志」が何を指すのかわからないのですが、中国でも関羽が緑色の服を着ていたり、諸葛亮が扇を持って白い服を着ているのはコーエーテクモのお手柄だと思います。

これを逆輸入と言って良いのかどうかと考えていると、最近入社した教務担当者Bさんが突然持論を展開し始めました。

興奮していたので、何を言っているのか良くわからなかったのですが、どうやら彼女は「逆輸入」とは中国の文化が日本へ入り、そして日本で変化して中国へ戻ったことだと説明しているようです。

だから三国志の例えは良くないと説明します。

何がどう良くないのかさっぱりわからないので、「逆輸入」のそもそもの意味がわかっていますかと質問すると火がついたようになり、面倒くさくなったので「以后再说吧(またあとで話しましょう)」と会話を打ち切りました。

そもそも新人研修の途中で、トレイナー側がトレイニーの前でもめるは良くありません。

さて、Bさん、逆輸入をどう理解していたのでしょうか?

確認してみると「輸入」という言葉を勘違いしていたようです。中国人が思う「輸入」は日本で言う「入力」もしくは「送り込む」ことです。そして経済用語として認識できれば日本語と同じく「輸入する」という意味になります。

そもそも「輸入」という言葉は、物を外部から内部に入れることを指しています。ですから日本語で「資本投入」は、中国語では「资本输入」になります。

そうなると「逆輸入」って言葉の意味はすぐにわかりそうなものです。本来であれば中国から日本へ「漢字」や「漢字で作った言葉」が移動するはずなのですが、日本から中国へ移動してきた漢字がある。見た目は中国製だけど、日本製の製品が日本から入ってきたぞという感覚でしょう。

これだけのことなのに、ちょっと質問したり確認したりすると火がついたように切れたり不機嫌になる。挙げ句の果てには慇懃無礼な態度をとる始末。お子様過ぎて困ったものです。

もちろんこれは中国人に限った反応ではありません。日本でも同じような反応があって「ヤレヤレだぜ」と思ったことはありますしね。

きっと彼らは、自分と違う意見を述べる人を見ると、自分のことを批判しているととってしまう傾向があるのでしょう。なんとか自己弁護したい、もしくは自分を否定するとは生意気な奴だと思って攻撃してくるのでしょう。

対処法は、落ち着くまでほっておく。そして忘れるに限ります。正直に言うと、彼らがどんな意見を持っていようが構わないのです。わたしは疑問に思ったことを尋ねただけで、当人がそれに答えられないわけですから気にする必要もありません。

それだけのことです。

さてさて蛇足ですが、中華人民共和国の若い子たちは「社会」とかとか「共和国」という言葉は外国語を日本語に翻訳するときに作られた言葉だと知らないようです。他にも「法律」とか「人権」とかも和製漢語ですね。

歴史とか文化とか文明とか常識とか教養とか倫理とかも、もともとは外国語で日本語に翻訳され中国に渡った言葉のようです。言葉があって初めて概念を認識したり共有することができるので、これらの概念が漢字で表現されているって素晴らしいことです。

本当に、これらの概念を言語化できて本当に良かったです。日本人だってこういう和製漢語を作る前は言語化できてなかった。つまり考えたことはあっても表現したり共有したりできなかったわけですしね。

それにしても非常に長い歴史と豊かな文化を誇るあの国が使っている「歴史」とか「文化」という言葉が、せいぜい200年くらいの歴史しかない言葉で、しかも「逆輸入」だったとは・・・ちょっと面白いです(やめなさい)

今日も最後まで読んでくれてありがとう。また明日。

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