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ワクチン接種後の人生計画

この前女友達と飲んでいてワクチンの話になった。

ワクチンを打つか打たないか、打つとしたら「自治体」「会社」「業界の職域接種」など複数の選択肢があって、どこでいつ打つかはたとえ夫婦であってもそれぞれの判断に委ねられる。友人は既往症があるために順番が早くまわってきて、首尾よく予約してほっとしていたら、ご主人が職域接種のチャンスがあったのに「ファイザー」にこだわったためにタイミングを逃し、まだ予約ができないらしく、夫婦でちょっとした争いになったらしい。

「もしかして、ワクチン離婚ってあるかもね」と言うと、

「あるある、それきっとあるよ」と妙に納得していた。

「職域接種」という仕組みが導入されたあたりからワクチンの選択肢がうわっと広がった。昨年のマスク不足と同じで、結局はそう時間がかからず希望者全員が受けられるにしても、個人の決定プロセスには、何というか、人生の片鱗が見えるのだ。

まず「ワクチン反対派」がいる。そしてワクチンを打ちたい人の中でも「少しでも早く打ちたい」と積極派と「順番が回ってくるまで待ちます」という受け身派で大きく分かれる。前者はそのための情報収集を自分から行うだろうし、職域の機会にはすぐに飛びつくだろう。受け身派は、急がずに自治体からはがきが来るまで待とうというスタイルだ。とりあえずいろんな職域接種に申し込んで、一番早いものにしようとする人もいる。その中には不要になった予約をきっちりキャンセルする人と、キャンセルすることすら思い浮かばずドタキャンをして貴重なワクチンを無駄にしてしまう人もいる。もっといえば、自ら名乗りを上げて、死ぬほど面倒な職域接種運営を買って出てる人もいる。一段落したら「あなたはどんなふうにワクチンと向きあいましたか」という質問で記事を書いたら面白いかもしれない。

私の場合は、実は6月頭までワクチンのことはあまり気にしていなくて「順番が回ってくるまで待ちます」派だった。その頃「自衛隊の集団接種で大量の摂取体制を準備したのに予約が入らなくて困っている」ことがニュースになっていたが、まるで人ごと、「自衛隊がやるんだー」ぐらいの感じだったのだ。

しかし、持つべきものは情報通の友人だ。あるとき電話がかかってきて、「ワクチン、打つなら早く打った方が良いよ。自衛隊の予約サイトで今ならすぐに申し込める。大手町だから東京駅に近いしさっと新幹線に乗って打って帰ってくればいいんだから、今よ今!」と薦めてくれたのだ。

それまで、私は住民票以外のところでは打てないと思い込んでいたのだが、東京に住んでなくても自治体発行の接種用の番号さえあれば予約できることをそこで知った。ちょうどその一日前に自治体から「お知らせ」が届いたところだったので、自分の番号で予約してみたら、6月21日に簡単に予約できた。

タッチの差だったようで、予約した時には「数万」レベルで残っていたのだが、その日の夜にもう一度見るとどの日程もクローズされていた。余っていると報道されたのが広まって、そこからは一気に埋まったらしい。

東京に行く前に地元の保健所で接種券を発行してもらうという手間が少しだけあったのと、往復の新幹線代はかかったが、自衛隊の集団接種の見事なオペレーションに感動しつつモデルナの一回目を終了。10日後に無事?モデルナアームとなり、まだまだ自分は若いかも、と自己満足している。

あれから1ヶ月。今週、同じ場所で2回目の接種を受ける。今度は出張ががうまく重なったので「ついで打ち」なので少しラクだ。

かくして、「ワクチン受け身派」だった私は、図らずも情報通の友人のおかげで通常より数ヶ月も早くミッション完了となる。それにしても、友人の情報力と、タイミングを逃さない行動力には感服だ。こういう人はどんな状況下でも生き延びられると思った。私はその点、まだまだだ。

結果的に、早めにワクチンが受けられて友人には感謝している。私の場合、観光業界しかも戦略企画系、幅広い知識とアイデア勝負の仕事だ。「アイデアの量は移動した距離に比例する」を旨として、公私にわたって移動をするタイプだったので、この1年半の移動制限はかなりきつかった。ステイホームはそれなりに楽しんではいたけれど、何しろ根が「移動の民」なので、同じ景色、同じ食べ物、同じルーティーンが続くと息が詰まってしまうのだ。不要不急の仕事で東京往復もしていたが、批判を恐れてSNSには投稿しなかったし、そしてそんな「批判を恐れる自分」が情けなく、さらに息が詰まっていった。

もちろんワクチンを打ったからと言って罹患リスクはゼロではないので、変わらず注意はしていくが、ここからは「マスクをする、しない」「旅行する、しない」「それを発信する、しない」は個人の責任においての「キメ」でしかなく、誰かに与えられるものではない。

私のように息が詰まっている人は多いと思う。報道で聞こえてくる今回のオリンピック運営側と海外メディアとの軋轢などを見ていると、1年半の厳しい行動制限によって日本人のメンタルが必要以上に追い込まれ、世界常識とのズレが大きくなり、いわゆるガラパゴス化しているのを感じる。ワクチン普及によってコロナとの共生が次のステージに移った今、締め切った窓を開けて、外の風を思い切り入れて家の空気をかき混ぜるのがよいと思う。今日本に足りないのは「身軽さ」と「風通し」じゃないかと思っている。

ということで、2回目の接種から2週をあけた8月頭からは、自分の仕事でありライフテーマである「地域づくり」を切り口に、興味のある場所、先端の町を訪ねる旅を始めようと思っている。






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