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価値ある人

仕事をしていない私に価値は無い?
と、押しかけ女房よろしく母子家庭に転がり込んできた男に尋ねる。
もしも私がこのまま復帰できへんかったら、もしもこのまま治らへんかったら、そしたらここを出て行くやんな?

異動の打診があってから、転職しようかどうか悩んでいた。聞きたくても聞けなかったことをこの人に切り出せるようになったのは、生活から仕事を完全に切り離し、睡眠をとって食事をとって、言いたいことも泣きたいことも内に秘めて我慢していた自分に気づいたからだ。

そんなことない、そんな風に思っていたなんて。
と、傷ついた顔をする人を見て少し安心する。

仕事に行けなくなってからは、泣けると帯に書いてある小説や、笑えると評判の漫画、自律神経を整えるビジネス書などを買い漁った。
食欲を無くし、夜中に何度も覚醒する日々が半年以上続いていた。空が青いとか木々が緑で、ケーキが美味しい、といった日々の小さな幸せを積み重ねられなくなっている中で、本だけは手に取ることができた。

ヤマシタトモコの違国日記を読み返す。何度読んでも泣く。心が抉られる。
これは私の物語だと思ってもらえる人のために描いている、という作者のコメントを見つけ、
ああ、そうか。仕事をしていない私に価値は無いと思っているのは、私自身なんだ、と気づいた。

noteに書き連ねることで、その小さな頃からの呪縛を解いていこうと思う。
心に穴を穿ちながら、自分を苛める作業だ。
それでも、なんとか書いていこうと思う。価値が無いと言われて育った私の、これはリハビリだから。

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