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「ひとり親家庭の親子が安心して暮らせる社会を」 特定非営利活動法人 あっとすくーる 理事長 ”渡 剛さん”

母子家庭で生まれ育ったご自身の原体験から、ひとり親の家庭の苦労や不幸の連鎖を終わらせたい想いで、大学在学中から親御さんや子どもに寄り添う学習塾を立ち上げられた渡 剛さんのお話をお伺いしました。

渡 剛さんプロフィール
出身地:熊本県
活動地域:大阪府
経歴:1989年熊本県生まれ。未婚の母子家庭で育つ。自分と同じような境遇にある子どもたちを支えたいという想いから大学3年生次に友人らとあっとすくーるを設立。現在に至る。
現在の職業および活動:特定非営利活動法人  あっとすくーる  理事長
ひとり親家庭の子どもたちへの学習支援
座右の銘:諦めない限り失敗はない

「ひとり親家庭の親子が安心して暮らせる社会をつくる」

Q1.渡 剛さん(以下、渡 敬称略)はどのような夢やビジョンをお持ちですか?

 ひとり親の家庭は母子家庭が圧倒的に多く、「女手ひとつで社会に出て恥ずかしくない子どもを育てたい」と、自分でなんとかしようと思われる方が多くいらっしゃいます。なぜなら、ひとり親に対して「自己責任だよね」とか「我慢しなさいよ」という目線も多いからなんですね。そして子どもから進路相談をされても仕事を削れず、子どもとの時間をつくれない状況があります。

子どもも忙しそうな親を見たら、わがままは言えず気持ちを押し殺し、お金を気にして塾に行けない子もたくさんいます。そんな時に、身近に勉強を教えてくれる大人が居たり、困りごとをフォローしてくれる人がいる街をつくりたいと思いました。

離婚をしても、突然親を亡くしても、誰かから支えられて安心して暮らせる日本にしていきたいです。

「箕面市で理解者を増やし、モデルをつくる」

Q2.その夢やビジョンを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

 「ひとり親家庭の子どもの大学進学率を上げたい」と、あっとすくーるを立ち上げ10年になりました。経済状況に関わらず学習の機会を得て大学に進学し、貧困の連鎖を断ち切りたいという想いがありました。立ち上げ当初に高校進学を諦めている子と出会い、自分たちが考えている以上に問題は根深く、真剣に向き合わないとと思いました。10年の中で多くの出会いと葛藤もあり、今は「学習支援をする団体として子ども達を支えたい」と思っています。

まずは、僕たちが活動している箕面市の方たちに理解者を増やし、ひとり親の親子が安心して暮らせる街としてモデルとなりたいと思っています。

そして、僕たちの活動を見てもらい「自分の地域でもやりたい」という人が増えて、その地域の課題に合った取り組みをしてもらい、安心して暮らせる街が増えていくのが次のステップですね。

「子ども達の発言に興味を持ち、寄り添う。」

Q3.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?

 子どもたちの発言に興味を持ち、寄り添う事を大切にしています。たとえば、宿題をやらない子どもは学校では怒られますよね。でも、やらない子には、やらない理由があるんです。たとえば、弟や妹の面倒をみないといけなくて宿題を出来ない、など理由もあるのです。理由を分からずに否定してしまっては、根本的な解決にはなりません。「何で宿題をしないのだろう?」と、その子の背景に興味を持ち、寄り添いたいと思っています。

なぜなら、原因にあたる阻害要因さえ取り除けば、子どもたちは”自分から”やり出します。自分にスイッチが入ると、半年でテストの点が200点伸びるなど、予測のできない変化を起こして行くんですね!時間がかかる事もありますが、子どもたちの本来の可能性を引き出していきたいと思っています。

「子どもの貧困の本と出会い、自分の原体験と重なった」

Q4.「ひとり親家庭の親子が安心して暮らせる社会をつくる」という、夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

 人生の中で何度かきっかけがあり、意志が育っていきました。

生まれながらに母子家庭で父がいなかった僕は、小学校5・6年の時の担任の先生が大好きで憧れていました。大人の男性に接するのが初めてだったんですね。休みの日に先生と遊んだり、家にお泊りに行ったりして、本当に楽しかったんですね。憧れの人が先生だったので、僕の夢は「先生」になりました。中学・高校の時期に僕も家庭で色々あり、僕みたいに相談できない子どもの助けになれる先生になりたいと、先生のイメージが具体的になってきたんですね。

そんな僕が、大学1年の授業で”子どもの貧困”を扱う本と出会います。その本を読んで、涙が止まらなくなりました。「こんなに頑張ってるのに、親が一人というだけで、なぜ苦しい状態から抜け出せないのか?!」自分の人生とリンクし、辛かった思い出が一気に蘇えり、悲しみと怒りの様な感情がこみあげてきました。本を通して、僕と同じ境遇の子が300万人も居ることが初めて分かり、「何とかしたい」と思いました。

その後、大学2年の時に、社会起業家を育成・支援するコンペに出る機会があり、自分の想いを話したら、ひとり親のお母さんから右手をぎゅっと握られ「あなたみたいな人を待っていた」と言われたことも強烈でした。初めて「自分の考えが人から必要とされるんだ!」と、本当に嬉しかったです。コンペは最終審査まで残り、応援をしてくれる人も沢山現れ、そのまま大学3年の時に起業をしました。

起業後も、親御さんや子ども達と関わる中で「大学に行くことが本当に幸せなのか?」と葛藤も生まれました。勉強が苦手な子に、勉強という選択肢だけに向き合わさせなきゃいけませんでした。サポートしているはずの僕らが子どもを傷つけてしまってはいないか?親御さんも大学進学の為に、子どもとの時間を削って重労働をしていることなど、色々悩んだ上で今思う事は、全ての子どもたちが大学に行かなくて良いし、僕らは大学に行きたい子や、行きたいとなるキッカケをつくれたら良いと思っています。僕らでは支えきれないことは、他の誰かに支えになってもらい、家族が何があっても子どもの成長に関わる大人が沢山いる社会をつくりたいですね。

「自分の力だけでは限界  人の支えで助けられた」

Q5.「子どもの貧困の本と出会い、自分の原体験と重なった」という、発見や出会いの背景には何があったのですか?

 ひとり親家庭で育ち、その中でずっと満たされない何かがあったからですね。

大学進学前に、個人の努力の限界を感じたことが大きいです。母も僕も努力をして、何とか大学に進学出来そうだったのですが、僕が高校3年の時に兄が借金をしたんです。その時「終わったな」と思いました。自分たちだけでは越えられない壁だった。「もう無理だ、これ以上は頑張れない。もう死んだ方がマシだ!」と、母に「死のう」ともいいました。その時に、僕の父にあたる人がたまたま亡くなり遺産が入り大阪大学に進学できたんですね。この時、もし大学に入れなかったら、家族や社会に対して恨みしかなく、死んでいたかもしれません。

「子どもの貧困の本」を読んだ時、ひとり親のお母さんがトリプルワークで体がボロボロ、だけど仕事を休んだら生活が出来なくなる話に共感し、涙しました。本当に自分たちだけじゃどうしようも出来ないんです。僕はたまたま、人の支えで進学ができました。支え合うことで不幸の連鎖を終わらせたいのです。

「子どもたちの周りにいる人達へ」

Q6.読者へのメッセージをお願いします。

 子どもの周りにいる人達、学校の先生たちへ。子どもたちから見た時に「話を聞いてくれてる、理解してくれてる」と思える人が周りに居るだけで、子どもの安心感は全然変わってきます。ぜひ子ども達に関心を持ってあげてほしいです。

記者 ありがとうございました!渡さんのメッセージは、ひとり親の家族の方たちだけでなく、多くの方たちが共感し、希望を持てるメッセージだと思いました。今、日本には孤独に生きている方は多くいらっしゃいます。支え合いが当たり前で、安心して暮らせる社会は、今の日本にとって本当に必要だと思いました。このメッセージが多くの方に届き、渡さんのご活動がどんどん知られていくことを、心から応援しています!

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書籍:子どもの貧困対策と教育支援(共著)

【編集後記】インタビューの記者を担当した熊倉と吉田です。

渡さんのお話をお聞きして、ひとり親の家庭がどれだけ大変なのか。ひとり親でなくても、今を生きる家族がどれだけ苦労をしているのか。ものすごく涙を感じました。家族がどんな状態でもお互いに支え合い、安心して暮らせる社会を本当に実現は、私たち日本人の明るい未来にもつながると思います。渡さんの生き方は、人間の悲哀も抱きしめ、新しい生き方に導ける人だと思いました。貴重なお話を、本当にありがとうございました!

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。



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