新書が好き 第1150話・4.17

「伝説の安心感?」図書館で不思議なタイトルの本を手にしたが、ちょうど1冊分空いたスペースに戻した。「引っ越し後に落ち着いたらでいいか」

 今日は引っ越し予定の街に来ている。来週の引っ越しを前にどんな町なのか見に来ていたのだ。「大事なスポットを回らないと」

 会社の上司から転勤の辞令が下り、いよいよ来週から新しい事業所で働くことが決まった。あわただしく引っ越しの準備を済ませ、明日が引っ越し日となる。
「昨日は飲みすぎたが...…」部署の送別会は大いに盛り上がった。ここ3年近く飲み会についてはいろいろと制限されている。十分にできなかったことへの反動だろう。送別会の主賓と合って二次会にも連れていかれた。どうにか終電に乗って帰られたが、翌朝は二日酔いである。
「けど、見ておいたほうがな」頭が痛いのをこらえて、引っ越し先に来た。電車に乗ること2時間近く。車内で眠っていたおかげで二日酔いは収まり、お昼前にはほぼ収まっていた。

「酔いがさめるまで」と思って最初に来たのは図書館である。新しい家は図書館に近い場所にあった。だから新しい住処をチェックしてから自然にここに来た。個人的にで本を借りるのが好きだから自然に足が動いたのだろう。
「ほう、この図書館は」図書館は今まで住んでいた街のところよりも新しいのか清潔感がある。大好きな新書も多く置いてあった。それ以上に気に入った点としてカフェが併設してあり、そこでお昼が食べられるのだ。
「今日はここにしようかな」さっそく図書館の横にあるカフェに入った。
「メニューは、っと」入口にディスプレイされている食べものがある。
「日替わりランチ、カレーライス、ラーメンにうどんね」定番といえば定番だし、インパクトがない気もしていたが、そんなことを言っている場合ではない。とりあえず今日は日替わりを注文することにしたのだ。

「ほう、なかなかボリュームがありそうだね」この日の日替わりはハンバーグランチであった。大きなハンバーグを中心にマカロニサラダ、それからひじきのような小鉢と漬物がついている。ハンバーグだがあくまで和風のようで、茶碗にご飯が乗っていて箸で食べるようになっているらしい。あと味噌汁がついていた。

「いただきます」手を合わせてご飯を食べる。ハンバーグはデミグラスソースがしっかりとついていておいしい。手作りのような気がした。マカロニサラダはどこにでもあるのを使っているのだろう。可もなく不可もなくだ。それからひじきもマカロニと似たようなもの。さてご飯を食べる。アツアツの白米で炊かれたご飯。特に○○産のコメとかそんなことは一切書かれていないが、炊き方もちょうどよくおいしいため、バクバクと食べられた。

 最後に味噌汁だ。おかずやごはんばかりに目が行って味噌汁を飲むのを忘れてしまい、ほとんどおかずが残っていない状態で味噌汁を飲む。
「赤だしか、いいねえ」赤だしなので塩味が若干強めのような気がしたが、個人的にはこのほうが良かった。

「満足したよ、ふう」図書館のランチでしっかり味わい、外に出るとこの時かねてから読みたいと思っていた本のことを思い出す。
「あるかなあ」その本が置いているコーナーに向かった。「あ、あった!」思わず喜んだ。なぜならば前の街の図書館ではいつ行っても誰かが借りてしまうのか置いていなかった。だからすぐに見つかり、すぐに新書の本を手にした。
「そうか、まだ住民票とかも変えていないし...…」図書館を借りるための申請ができるかどうか不安だったので借りられない。だけどここで手放すと今度はいつ手にできるかわからない。
「ならば、読むしかないな」というわけで空いている席に座ると読み始めた。

「面白い、期待通りだ」お目当ての本を最初から読み進める。どんどん読み進めていけばいくほど飽きずに読めた。そのまま時間が過ぎていったが、気にせずに読み続けることに。
「あと一息」どのくらいたったのかわからないが、若干速読ができるためか、残り数ページだ。ここまで来たら全部読み切ろうとしていた。すると図書館内に耳慣れたBGMが流れ出す。
「あ、閉店だ」そう、ホタルノヒカリが流れ出した。だがここまで来れば読み切るしかない。閉館のアナウンスを無視してどうにか最後まで読み切った。

「よかった、全部読めたよ!」満足感を前に新書の本を返すと図書館を出た。だが図書館を出てから肝心なことに気づく。「あれ、今日はこの街に何があるかを調べるために来たのに...…」結局、片道2時間かけて新しい家と図書館だけしか行っていないことに気づいたのだ。

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