卒業アルバム

少々気になる事があったため高校の卒業アルバムを開いた。初めて他クラスのページを見てみたら驚きの事実が判明した。知らない人しかいない。誰、誰、誰?知ってたけど忘れてしまったという比喩でもなんでもなく殆どの人がはじめましてだった。名前は聞いたことあるけど〜でも顔は見たことあるけど〜でもなくもう殆ど知らない。こんなにも知らないのか、四分の一くらいしか知ってる顔の人が出てこない。俺の脳内の東京ホテイソンが「い〜や誰〜?」って何の例えもする事なく突っ込んでるくらい知らない顔しかいない。うっかり高校同じ人たちはみんななんとなく把握してる気になってた。記憶が塗り替えられてる。

自分のクラスに入ったら途端に知ってる人が多くなって逆に不思議な感覚に陥った。え、ここ一列みんな知ってるじゃん!っていうビンゴが揃ったみたいな気持ちになった、みんな知ってるの当たり前なのに。そんで自分の顔改めて見たら全然喋らないでクラスの輪に入らず端っこでノートに魔法陣の落書きしてそうな顔だった。クラスが盛り上がった時に「見て!熊谷くんも笑ってるよ!」って言われるタイプのぎこちない笑顔をしてた。ああでもいかにもネットでイキってクラスの人の悪口をこっそりブログに書きそうな顔でもあった。顔は性格に収束するのかもしれない。

自分が誰〜?って学年の四分の三に対して感じたってことは逆に学年の四分の三ないしそれ以上の人から誰〜?って思われてるって事か、いやそもそも存在を知られてないのか。なんならクラスメイトから「知ってる顔ビンゴがこの熊谷ってやつのせいで揃わない」とまで思われてるかもしれない。思ってる以上に自分の世界って狭いんだな、うっかり世界の中心顔で生きるところだった。いや知ってる顔ビンゴってなんだよ。

あの熊谷が無職?って思われるのが恥ずかしいなと思って就活してないことを言うのを躊躇ったりしてたけどはたから言わせればまずどの熊谷?誰?って感じだったな。恥ずかしがってんのが恥ずかしい。全然存在薄いんだから身の程を弁えなきゃとも思ったけど逆になにしてもいいな。これからは堂々と恥かいていこうかな。

万が一お金を捨てようという発想に至った場合のみ僕に引き受けさせてください。リターンはありません。