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『ゆるく。とりあえず、やってみよう』の結果 第1回ゆる読書会レポート(前半)

【読書会をやってみたい】

僕は、“ブックバー月に開く”の常連客アライ。
普段は養豚場で社員として働いている本好きの中年だ。
だいたい週一で訪れるが、酒にはめっぽう弱いため、毎回コーヒーで長居している。

マスターのコエヌマカズユキさん主宰の読書会には、よく参加させてもらっている。

読書は基本ひとりでインプットだけれども、読書会であれば『みんなでアウトプット、そしてフィードバック』に変換できる素晴らしい場だと、僕は感じている。
とくにマスターが企画し司会進行する読書会は、参加者が題材の本について丁寧に語り合いつつも、ときにマスターがジョークを混ぜて楽しく進行していくので、リラックスできて居心地がいい。

僕は参加するたびに、自分で企画してみたいという想いが、じわじわと沸き出てきていた。

やってみたい。しかし、はたして出来るだろうか。
そもそもイベントを自分で仕掛けることすら、今までしたこともない。

でも迷うくらいなら、やってみよう。

そう思わせてくれたのは、以前開催された【論理ガール】という本を題材とした読書会での、あるメッセージとの出会いだった。

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論理ガールとは、ド理系女子高生とド文系アラサーホテルマンが、『人間関係・お金・仕事・遊び・恋愛・未来』といった人生の課題に対して数学的対話をかさね、人間的に成長していく姿を描いた物語。

読書会では論理ガールの担当編集者の小谷俊介さんが、ゲスト参加されていた。
小谷さんは、作中の『好きなことが共通する人たちと等距離の関係性を築き、自分が中心の一点となって“円”を作る。そして、その面積を広げていくことで、人生が豊かになり、自分の可能性も広がる』といった内容を取り上げ、『自分と著者の深沢真太郎さんが読者に伝えたい共通のメッセージ』として、「自分が中心となって、好きなことで円をつくること。これをぜひ実践してもらいたいです」と話してくれた。

『自分が中心となって、好きなことで円をつくる』
このメッセージが心に響いた。

じわじわ湧き出た想いと、たまたま響いたメッセージを、運命的だと勝手につなぎ合わせ、僕は読書会をやってみようと決めた。


【課題図書は自己啓発本の原典】

さて課題図書は何にしようかと考えたときに、僕の頭に浮かんだのは、
デール・カーネギーの“人を動かす”
だった。


約80年前にアメリカで出版された本で、自己啓発本の原典ともいわれる一冊。
進学や就職といった人生の門出に送られる本としても、使われることがあるそうだ。
いっぽう、人間関係における多くの事例凡例で構成され、300ページを超える骨太な本であるため、読み切ることに骨が折れる本でもある。
そのため、『持ってはいるが、読んだことがない』、『家の本棚にはあるはずだが、どこにあるかわからない』、『某・大型リサイクル店の古本コーナーでよく見かける』といった印象もあるのではないだろうか。


【人を動かすとの出会い】

僕がこの本と出会ったキッカケは、4年前、とある外資系企業で営業マンをしている知人のSさん(43)が話してくれた思い出話だった。
Sさんが20年ほど前、新入社員だったときに先輩から「これだけは絶対に読んでおけ」と言われたのが、『人を動かす』だったそうだ。
当時は「うわー、なんだこの本。読むのだるいなぁ。マンガとかないの」と内心思ったらしい。
けれど今思うと、仕事をしていくなかで、一番役に立っている本だという。

のらりくらりとしていつつも、バリバリ仕事ができて、僕とは違うものの考え方をするSさんを、僕は尊敬している。
そのSさんが今のSさんになるキッカケになる本だったのならば、一度読んでみようと思い、『人を動かす』を手に取ったのだった。

実際、はじめて読んだ時は、頭上に湧き上がる「?」マークと、押し寄せる睡魔によって、なかなかページが進まず、読み終えるのに数週間を要してしまった。
読み終えはしたものの、内容は『笑顔で挨拶をする・人の悪口を言わない・自分がまちがっていたら謝る』といったこと。
道徳の教科書に書いてありそうな、あたりまえの規範行動が列挙されているだけのように感じてしまい、昭和の校長先生の集会挨拶のように、長くて退屈な本というのが正直な感想。

けれど4年間、いろいろな人と出会い、悩み、七転八倒していくうちに、不思議と本の内容が自分の身に起こる出来事とつながり、体内に積み重なっていった。
今では頭のなかの本棚に、付箋まみれで収まっている本となり、Sさんの言っていたことが、腹に落ちている。

では、他の人たちはこの本を読んでどう感じているのか知りたいと思い、デール・カーネギーの“人を動かす”を課題図書に選んだのだった。


【読書会当日】

読書会の開催を決めた僕は、まずパワーポイントでチラシを作った。
チラシは店に置き、マスターにも協力をお願いし、月に開くのTwitterやFacebookで告知してもらった。

そしてむかえた読書会当日。
誰も来なかったらどうしようと正直不安。
大々的にやりたいだなんて思ってはいなかったけれど、誰も来なかったら正直、寂しい。
前向きだけど、気が小さい、心はフラジール(割れ物注意)な自分。
でも、参加者ゼロならば、そのときはそのとき。
いつもはコーヒーだけれど、今回はビールを飲んで酔客となり、店員さんにクダを巻けばいいだけの話だ。

開始10分前、そんな僕の不安を拭い去るように、一人また一人と参加者が入店。
見知った常連さんや、僕の知人、チラシをみて参加してくれた人、計6人が集まってくれた。
僕は目頭が熱くなった。

さっそく読書会を始めようと、みなさんには円卓を囲んで座ってもらう。
最初に、「バチバチ議論ではなく、ゆるく気軽にやりましょう」と伝え、簡単に自己紹介をしてもらった。

集まったのは、主婦のMさん、経営者のAさん、教員のHさん、事務職のTさん、自称無職のNさん(僕と顔見知りの常連さん)、医療関係者のRさんの6人。

そして、極度の緊張のなか、僕が主宰する初めての読書会が幕を開けた。


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