福岡県送迎バス内置き去り男児死亡事故への反応から生まれた懸念。あなたはプロの保育士ですか?ただ免許を持っているだけの素人ですか?というお話

 2021年7月29日に福岡県中間市にて、保育園の送迎バス車中に置き去りにされた5歳男児が死亡するという、痛ましく悲しい事故が起きてから1ヶ月になります。

 送迎バスへの乗り込み時に名簿確認がなされていなかった事や、降車後の車内点検をせずに施錠をしたなど、通常では考えられないとされる人為的ミスによりこの事故は引き起こされたとの報道がされました。
 保育業界関係者出ない老若男女から、『園長は人様の子どもを何だと思っているんだ!』『誰でも分かる初歩的ミス!園が杜撰(ずさん)過ぎて酷い!』など今現在もなお批判で溢れています。実際その通りだと思います。この事によって、送迎バスを出している保育園は、送迎バスのマニュアルを見直し同じ事故が起きない様に徹底した事でしょう。

保育関係者が世間と同じ様に批判だけしているのを見るとゾッとしました。それでもプロですか?と。

 今回のこの事件で、心を痛めない保育士は皆無だと思います。
ただ、この事件に関して保育士をはじめとする保育関係者が、保育関係者でもない人と同じ様に非難だけしているのを沢山目にしました。正直この事にも今回の事故同様にゾッとしました。『あなた達は素人ですか?』としか思えないからです。

『こんな杜撰な事は普通あり得ません。酷い園です。ウチではちゃんとしてます。本当に酷く悲しい事故としか言いようがありません』ばかり。ではあなたの保育・あなたの園では事故はゼロなんですか?今後もゼロなんですね?完璧なんですね!そんな園があるとは知りませんでした!としか思えません。

 何故なら、今回、男児が死亡するという悲しいニュースだったから大きく取り上げられ、皆が非難していますが、正直言って事故の本質を保育士視点で見ると【多くの保育士が起こす可能性を持っている事故】だからです。もっと言うと【現在の日本の保育園での事故の“多くは”今まで死者が出ていないラッキーが続いているというだけ】なのです。

事故の原因の根本は、【保育士の“安易な自分本位の慣れ”と“意味を考えない安直な考えによる作業の変更”によるもの】です。

 先程、“多くは”と表現したのには理由があり、例外と言える保育の事故は、【見守り保育の意味】【ポジショニングの取り方と意味】【人様のお子さんを預かると言う事の意味】などの【保育の基本の意味】を日々念頭に置き、人からの意見を自分の保育の向上の為、子どもたちの為にと真摯に取り組んでいる人たちの保育の中で起きたものだけです。これだけの事を園の何人かがではなく園の保育士“全員”が考え見て動いていれば、事故は起きても大きな事故にはまずなりませんので。

 そして、それらを意識し注意しながら保育の基本を行なっている保育士は、【保育に絶対安全はない】【明日は我が身】が念頭にあるので、この事故の批判だけなどしません。【改めて自分の園の保育の安全性の再確認】を自然とする習慣が身に付いているのです。他人事になんてしません。
それが正真正銘の【プロの保育士】がする事です。

 今回の事故を起こした保育園の園長や保育士も、もし、他園で同じ様な事故があったら同じく心を痛め、自園での事故を防ぐ様に考えた事でしょう。でも、今回自分たちの園で【誰からみても何故していなかったの?というレベルの基本的チェック】がされていなく事故を起こしたのです。

 今までに見てきた、保育の基本すら出来ていない保育の質が悪い園の保育士たちも皆が、『子どもたちを愛している』『子どもの事を大切に思っている』『子どもたちには無事に園を卒園して欲しい』『真剣に保育をしている』『私たちは保育士の資格を持っているプロです』と口にします。
 誰もが、【保育を適当にやっている】という意識ではない中で事故は起きるのです。意識していて保育の質が悪いのであれば、意識して良くするのはある意味で簡単です。しかし、本人が悪いという意識がないにも関わらず質が悪いというのはとてもタチが悪い状況で、改善は容易ではありません。

 本当の意味でプロとしての意識とスキルで保育に取り組んでいれば、今回の様な事故は起きなかったでしょう。勿論、プロであってもミスはします。しかし、ミスの内容が確実に違ってきます。
 要するに、気持ちと実際のスキルや行動に大きなズレがあるのです。

 今回の痛ましい事故によって、保育士という保育士全員が自分を見つめ直し自分のいる園の保育を見直す事をし、日本の保育の質の底上げが起こり得るのであれば、私の活動は必要ありませんし、喜んで別の仕事をします。
残念ながらそうならないのが現状です。それにも、ちゃんとした原因があるからです。

今日の保育業界は、その場その場のうわべの改善だけをする園や保育士が増えている。

 今日の保育業界は(話を聞いていると教育業界もらしいですが)、とても閉鎖的です。なので、自分たちの保育水準が最低限をクリア出来ているかどうかという心配やチェックを、園内で起きた怪我などの事故の発生でのみ判断する傾向があります。勿論、法人のトップや園長などのトップが定期的にチェックし改善に努めて水準を保っている園もあります。前者が、必ずしも悪いという訳ではありません。しかし、前者で水準を良くするには園にいる保育士1人1人が良質な保育を意識しお互いを高め合っている状態にないと、正直、良い保育は保てません。何故なら、人間は意識しないとすぐに楽や慣れに流れます。

 最初に伝えた様に、保育士は今回の様な事故を知ると、同じシチュエーションでの事故が起きない様にと、改善にその時は努めます。しかし、結局、事故が時間と共に風化していく中で、人員が年月と共に入れ替わっていく中で、上がしっかり継続して改善点をチェックするか保育士全員がプロ意識で改善を持続させない限り、事故が起きない限り、楽や慣れで改善がいつの間にか元に戻ってしまうのです。

【慣れ】【意味を持たない安直な作業変更】がどれだけ保育にとっての敵かという事、それが事故の原因になるという事、それを念頭に置かない保育士はプロではないという事を今回は書きました。

皆さん、どうか今一度、自分の保育・園の保育・保育士の連携を見直して下さい。

保育士がこの記事を読んで、『いやいや私は大丈夫だから』と思う人がいないこと願っています。そう思った時点でその人は自分を過信している素人の保育士ですから。


1ヶ月が経ちました。
本当にご愁傷様でございます。ご両親をはじめご家族のお悲しみは計り知れないことと存じます。心からお悔やみ申し上げます。


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