旅の出会い ギャラリーペイジ

その日は良く晴れていて、
私はぼうっと窓の外の海を眺めていた。

海沿いをひたすら車で走っていると、ふとカモメの看板と白い家が目に入った。
「ギャラリーペイジ」という文字を目の端で捉え、こんな海沿いにギャラリーを構えるなんてどんなところだろうと思い、近くに車を停め
行ってみることにした。

看板は出ているものの屋内は暗く、
書いてあった電話番号に掛けてみた。
電話口に出たギャラリーのオーナーは、
開けるので少し待ってくれないかと少し慌てた様子でこたえた。
私は海辺を散策しながら待っていた。
再び行ってみると、玄関のガラス戸の向こうにオーナーらしき人物がいて、招き入れてくれた。

中に入ってパッと目に飛び込んで来たのは
青い海の画。
白い砂浜と青い海、澄んだ空がそれには描かれていた。
観ているだけで穏やかな波の音が聞こえてくるような、優しい風を感じるような、そんな画だ。
何回も絵の具を重ねたのだろう、波打つ水面や砂浜のサラサラとした質感が油絵の具で表現されていた。

オーナーの手作りだという白を基調とした内装は、
シンプルでいて木のぬくもりを感じる居心地の良い空間だった。
こじんまりとした室内には、海や月夜を描いた画が数点と、ガラスのアクセサリーが展示されていた。
ガラスのアクセサリーもオーナー手作りだという。
中には笹川流れの浜辺の砂をガラスの中に閉じ込めたアクセサリーもあり、光の当て方によって表情を変えるので、光に透かしながらキラキラと色が変わる様を楽しんでいた。

オーナーの名ははんださんという。
私が静かにうきうきと展示を楽しんでいると、
画の説明やガラス細工の説明を丁寧にしてくれた。
作品のことを語る彼はとても生き生きとしていて、
聴いてる私にも何かキラキラしたものが心の中に流れ込んでくるようだった。
この人の眼で世界を見たらいったいどんな風だろうと、少し羨ましく思った。

姉と私はアクセサリーとポストカードを買うことにした。
本当は画を買いたかったが、
なにぶん学生なものでそこまでの経済力はない。
浜辺の砂をハート型に閉じ込めた赤いガラス玉のネックレスを、私は買うことにした。
姉は悩みに悩んで、砂の月が中にあしらわれた薄紫のネックレスを買った。
オーナーは包装に時間がかかるので、
紅茶を淹れるから待っていてほしいと言った。
彼は海の色をしたマグカップを置くとき、
カップの持ち手を気にして私たちに利き手を尋ねた。
とても几帳面な人だと、思わず姉と顔を見合わせて笑ってしまった。

のんびりと紅茶をいただいた後、ねじれの一つも無いように丁寧に包装してくれたネックレスをもらって、私たちはギャラリーを後にした。
若葉色をしたドアを開けると、心地よい日差しと爽やかな海風を感じた。

私はそう遠くないうちに、またこの小さな白いギャラリーを訪れるだろう。
きっとその時は赤いガラス玉のネックレスをつけて、土産話を持って行こう。
そしてまた、のんびり紅茶を飲みながら画の話を聞けたらいい。