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『夜は短し歩けよ乙女』

京大NFに行ったりムーンウォークで電気ブランを飲んだりした晩秋を思い出しました。黒髪の乙女の突き抜けっぷりは本でも映画でも惚れ惚れします。

館内にいた高校生たちがわけわからなかった難しいーと感想を漏らしていましたが、それが正常な反応でよろしいのではないかな、とか自分の一観客である立場を放棄して思いました。風邪の妄想シーンが大分イっちゃってましたし。

そもそもなぜ『夜は短し歩けよ乙女』に興味を持ったかというと、私自身が京大吉田寮に住まう友人に学祭に誘われて、本作の舞台となっている京都へ行くことになったからです。
あそこまで謎企画に溢れてはいませんが、京大生のクレージーな様にワクワクドキドキが抑えきれなくなるのは事実でした。

というのがざっと浮かんだ映画鑑賞後の感想なんですが、何と言っても「黒髪の乙女」という呼び名が胸を高ぶらせるのです。黒髪の乙女。素敵すぎて反則です。

かく言う私も「黒髪の乙女」に恋したことがあったもので、小説でその文字を目にする度に作中の「先輩」と同じ、ストーカーになりかねない程純粋な恋心に支配されました。

後ろ姿だけでわかるのですよね、黒髪の乙女の凛とした姿。しかもあんな綺麗な瞳でありながらトンデモナイ酒豪で、周囲の人を従えるのも共通していました。

小説と現実の区別をつけることは無益なことに思えて、あの本を貪り読みました。インドネシアに旅したときには、インドネシア語版のマンガも買って読みました。

黒髪の乙女は可愛らしいけれど、可愛いだけじゃない。他人じゃ理解不能な自分の道を突き進んでいて、たまにバカになることもできて、思いやりもあって、最高ですよね。

これ書いてる私は、「君が好きになる人って、変わってるよね」と言われることがあるのですが、つまりは「黒髪の乙女」のような無茶苦茶な魅力のある人を好きになるのですよね。

今まで好きになった相手の特徴を思い出すと、
例えば「好きな本」「よく読む本」を挙げるならば、日本史資料、神話、哲学書、なんかを私の惹かれた人たちは読んでいて、誰も流行りの小説を手に取りはしないっていうね。

ある人は「最近ハマっていることは、ゾンビ映画を観ながら編み物をすること」、

ある人は授業中他の学生がうちわで暑さを凌ぐのに反し、華麗な扇子で風を起こしていました、

またある人は私が「ヘッセ詩集好き」と呟くと、『デミアン』の原文を送ってきました。何のコメントもなくドイツ語だけ送られてきた私はびっくり仰天しつつ、共通のフォロワーでドイツ語を読める人がいないものだから、勝手に二人だけの秘密みたいに感じて嬉しかった。

好きになるポイントがわけわからない、と言われるのは仕方ないですね。自分にもなんでそんなヘンなところに惹きつけられるのかわかりません。というより、好きな人の第一印象が「ヘンな人だな…」から始まることがあるもので。

映画では黒髪の乙女についてどういうところが好きかとか一切語られないのだけど、なんだか魅力的で、ふっと好きになっちゃうのわかるなあ、といつの間にか先輩を応援したくなりました。理由説明できないその人らしさを纏っている人は素敵だなーと思います。

#エッセイ #映画

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