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「卓越性を目指す、情熱」で人をみる

「テレビのない家」

というのが増えているという。実際、周りの友人でも「テレビを全く見ない」という20代・30代は増えているように見える。僕もそうだ。だからこそ、正月に実家に帰ると、「テレビ番組のインフレ」が起きる。これは、普通のテレビを見ると、ものすごく新鮮に映り勉強になることがある、という意味だ。たとえば

「Netflixの展開と全然違う!」
「今こんな、俳優さんが人気なんだ! なんでだろう?」

とかだ。その中で、最も印象的だったのは、ヤンキーズで大活躍されている、田中将大選手が出ていた正月番組だった。田中選手はメジャーリーグで今年、6年連続で10勝をあげ、日本人投手としてはじめての快挙を遂げたらしい。彼の会話の中で"仕事観"に迫る話があり、こういう会話があった。

「田中選手が、大事にしていることってありますか?」
「毎年、もっと上手くなりたいなとは思っています」

と。メジャーリーグで6年連続で10勝を挙げる、という成果を出されながらも、毎年「もっと上手くなりたい」といえる。これって、カッコよすぎないだろうか? (いや、というか、カッコよすぎる!)

この「もっと上手くなりたい」というモチベーションは、よくよく考えればすごくシンプルだが、最も大事な原理原則かもしれないと思う。

冷静に考えると、スポーツや音楽、趣味の領域ではこの「もっと上手くなりたい」と思えるモチベーションは普通に起こり得る。でも、それを仕事に対して思えている人は、どれぐらいいるのだろうか? というと難しい。

話は少し代わり、「現代最高の経営実務書はなにか?」と聞かれたら、僕はそのうちの1冊はこの本だと思っている。

通称、「緑のピクサー本」。ピクサーの本には、いくつかの種類があり、オレンジの本が割と有名だ。でも、個人的にはこの緑の本は「創造と才能と組織」の全てが描かれている絶対的な経営書だと思う。それぐらいすごい本だ。(ただしめちゃくちゃ長い)

本の後半に、スティーブ・ジョブズが「人を判断する際の軸」の話がある。ジョブズは一般的なイメージでいうと傲慢で、高圧的。理想が強く、人に対して容赦がない。一方で、ある特定の人には強いリスペクトを持っていたという。彼は独自の判断軸で人を評価していたらしい。その判断軸とは

「卓越性を目指す、情熱の量」

らしい。具体的には、卓越性(素晴らしいものをつくること、技術)を目指す情熱を強く持っている人は、とても評価をしていたらしい。違う言葉を使うなら「最上志向があるひと」ということだ。たしかに、この「卓越性への情熱」というのは、新しいものを作る人や、パイオニアにとって最も重要な要素かもしれない。

なぜなら、仕事というのは成果を出せば出すほど、必ず「誰かの模倣をしたくても、わかりやすく模倣できる人がいない」領域にたどり着くからだ。

当然、ビジネスにしても、スポーツにしても、自分がベストを出したからといって、必ずしも成果がでるわけではない。普段は100しか能力を出せない人が本番で驚異的にうまくいき、150を出したとしても、相手がさらにそれを上回る151を出したら、負ける。つまり、成果は努力に対して嘘をつくことがあるのだ。では、何を私たちはモチベーションにおけばいいのか?

それが「もっと上手くなりたい」という、卓越性を目指すための情熱なのだろう。「北野さんは、なぜ、文章を書くのですか?」と聞かれることが増えてきたが、それは最近明らかに答えが変わった。それはシンプルに「もっと上手くなりたい」からだ。そして、それはきっと多くの人を勇気付けるための武器になりえるからだ。

ようは、いくつになっても「もっと上手くなるにはどうすればいいか?」、その気持ちと情熱を忘れずにいたいものだ。


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