老執事も昔は青年だった〜『バットマン』アルフレッドと『アイアンマン』ジャーヴィスの青年化〜
『日本の執事イメージ史』では、様々な作品で脇役・年齢に見合った年齢の執事が、次第に青年・少年として描かれ、さらに主人公化するトレンドを追いました。
そうした「描かれた執事」イメージの海外での強いイメージに、「ヒーロー作品で主人公を助ける執事」という役回りがあります。中でも、『バットマン』の執事アルフレッド・ペニーワースは、以下のように紹介されるほどに、「バットマン」を支える存在でした。
執事が盛り上がっていく1990年代から2000年代の大作映画『バットマン』に登場した「万能執事」アルフレッド
『日本の執事イメージ史』では1990年代に、日本で執事のイメージが青年化・少年化し、また主人公化していき2006年に執事喫茶誕生に代表される「執事ブーム」へのトレンドを追いかけていきましたが、実はこの同じ時期に、『バットマン』の映画化が続き、そこに登場する「執事アルフレッド」もまた、執事イメージを広げる存在であり続けました(初出は1943年。「万能執事」の元祖はジーヴスの1915年と思いますが)。
1989年に映画『バットマン』が始まってからの映画の流れを以下に列挙します。
1989年 『バットマン』
1992年 『バットマン リターンズ』
1995年 『バットマン フォーエバー』
1997年 『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』
そして間隔が空きますが、執事ブームの2006年の前年2005年には、クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』三部作がスタートします。
2005年 『バットマン ビギンズ』
2008年 『ダークナイト』
2012年 『ダークナイト ライジング』
ちょうど執事が盛り上がる時期の7作品を取り上げましたが、詳細を細部まで記憶していないのでどういうアルフレッドの描き方をしているかは後日確認しますが、執事が世界的大作の主人公のサポート役として存在することは、執事イメージを広げる上で重要だったことでしょう(私がリアルタイムで観たのは『ダークナイト』三部作)。
主人公の親代わりとなり、また成人してからも仕え続ける点で、執事は一定の年齢を重ねた人物である必要がありました。
ただ、「執事といえばセバスチャンはいつ成立したのか?」のコラムと同様に、「どれぐらい、執事といえばアルフレッド」と思うぐらいに影響を与えたのかは、まだ調査前です(どう調べるのかという気もしますが、3%ぐらいの確率で調べるかも)。セバスチャンと異なり、私が公開している執事リストには、アルフレッドをオマージュした名前を捕捉できていません。
「老執事」の「青年(執事?)」時代を描く海外ドラマ
『バットマン』に関する記述をある程度、『日本の執事イメージ史』で書きつつ、一緒に少しだけ触れたのが『アイアンマン』のトニー・スタークの父ハワード・スタークに仕えた執事エドウィン・ジャーヴィスです(初出は1964年とのこと。現在の映画ではAIの名前の由来に)。
その調査中に、『Agent Carter』(2015年)というテレビシリーズで、若き日のジャーヴィスが出てくるのです。このように「過去を描けば、執事も若返る」というのは、「青年執事」あるいは「老執事ではない執事」の描き方として、新しかったのかもしれません。
というのも、先述した『バットマン』の執事アルフレッドも、前日譚『GOTHAM』(2014年)からさらに若返り、父トーマスが存命だった頃を描くドラマの発表を読んで、「あれ? そういう執事の若返らせ方があるの?」と思い至り、このテキストを書きました。
厳密に言えば、「執事の青年時代」であって、「青年執事」として描かれるのか、「これから執事になっていくのか」で言えば、普通に考えると後者のような気もするのですが、「ヒーローを支える執事の若い頃を描く」ことが続いているのも、そしてメインキャラクター化しているのも、「日本の執事ブーム」とは違った角度で成立しており、興味深いです。
そんな中、一つの作品で、老執事・青年(執事)・少年(執事)を描いた、『HELLSING』は、稀有な作品と言えますね。
そしていずれの執事アルフレッドが英SAS、ジャーヴィスがカナダの空軍でのパイロットだった点で、「戦う執事」の系譜でもありますね。
今回取り上げているアルフレッドとジャーヴィスは、軍で従卒をしていたわけではないようですが、第一次世界大戦中に「従卒として士官に仕えた軍人」が、そのまま戦後に従者・執事となるエピソード・設定は、実話をベースに、創作(『ダウントン・アビー』のグランサム伯爵とベイツや、『貴族探偵ウィムジー』のバンターなど)にも用いられています。
と、今回はライト目の執事メモでした。
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