10年前とこれからと

※2016/6/20,23に前後編に分けて別のブログに掲載した記事の転載です※


2016年6月18日。あの日からちょうど10年が経った。

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やりたい仕事が見つからない

 10年前、私は大学院博士課程に進学したばかりだった。もともと博士課程まで進学するつもりはなかったので、想定外に3年間、学生生活が延びることになった。専攻は材料工学で、金属の研究だった。

 修士の時、就職活動をし、鉄鋼メーカーや金属メーカーを訪問した。工場を見学し、先輩方の話を聞いた。工場は面白かった。巨大な機械が動いているだけで心躍った。でも、自分がそこで働くイメージが全く持てなかった。そして、これからの人生について、初めて本気で悩むことになる。

「自分は何がしたいのだろう」

「来る専攻を間違えたかもしれない」

 そんなことを考えながら日々を過ごす。でも、具体的にやりたい仕事なんて思いつかない。何をしていいかわからず、自分の過去に手がかりを探す・・・。ひとつだけあった。強い関心と問題意識を感じたものが。

それは「学校教育」だった。

生徒たちからの問いかけ

 私は大学1年生の時から塾講師や家庭教師のアルバイトをしていた。小学4年生から高校3年生までの算数・数学、理科の指導経験があった。その時、指導を始めて5年が経過していたが、毎年、生徒に尋ねられることがあった。

「この勉強をして、将来何の役に立つの?」

受験指導をしていた私は、

「君たちは受験をするんだろう?そのためにここに勉強にきている。すぐに(受験で)役に立つじゃないか」

そんな回答をしていた。そんなことしか言えない自分を恥じた。そして思った。

「学校教育は、どうしてこんなに社会や将来とのつながりが見えにくいだろう」

「いつかやる」はいつなのだろうか

「ああ、私は教育に関心があるんだな」

 とりあえず、関心ごとは見つかった。でも、そこから先が見つからない。そんな時、指導教員の教授から博士課程に進学しないか誘いがあった。

「大学の先生になれば、専攻も無駄にならず、教育にも携われる」

 安易にそう考えた私は、あっさりと就職活動を止め、博士課程に進学することに決めた。就職活動をやめ、余裕ができた私は

「いつか教育に携われればいいか」

と、ぼんやり考えていた。そして学生生活が3年延びることになる。

 博士課程といえば、研究に研究を重ねる日々が普通だと思う。しかし、研究に強い思いがあったわけではない私は、研究にそこまで身が入らない。

「私の関心ごとは”学校教育”だ」

「いつか教育に携わりたいとは思っている」

「でも、”いつか”っていつなんだろう?」

「今、私にできることはないのだろうか?」

 そんなことを考え始めたある日、イベントの告知メールが届く。講演会の案内だ。気がつくと「何か手伝えることはないか」とメールに返事をしていた。

「学生団体」という手段

 イベントは、大学を休学して世界を周り、その体験を本にして、本の印税やその他支援を通じてアフガニスタンに学校を建てた人の講演だった。私は実行委員の一人としてイベントの準備、告知、当日の司会などを行った。

 そこで初めてNPOやNGO、学生団体の存在を知った。同じ大学生が・・・いや、博士1年で24歳だった私から見ると大学1,2年の18,19歳の後輩たちが社会的な活動をしている。これだ。”いつか”じゃなくて、今できること。学生団体を通して教育に関わればいい。

 周りは18,19歳、または高校生から活動している学生たちだった。負けず嫌いな私は、24歳スタートでもすぐに彼らと対等になりたかった。だから、教育に関する活動をしている団体を探すのでなく、自分で学生団体を作ることにした。

学校教育と社会をつなげたい

 他にどんな団体があるかを調べもせず、自分のつくる団体について考え続けた。

「学校教育は、どうしてこんなに社会や将来とのつながりが見えにくいだろう」

これが私の問題意識だ。子どもたちに、社会や将来を感じてもらう機会を作りたい。でも、学校教育を否定して、全く別のものを作るのは何か違う。私がやりたいのは、学校教育と社会をつなぐこと。

 学校教育といえば「座学」が多い。座学も大切な学びだと思うが、座学だけでは社会や将来に繋がりにくい。体験学習が流行っていたけど、ただ、何かをやってみればいいわけではない。この2つをつなげなければ・・・。

 学校で習ったこと(座学)について「何につながるんだろう?」、「やってみたい!」と、体験してみる。

 体験してみたことを「どうしてこうなるんだろう?」、「もっと知りたい!」と、学んで(座学)みる。

そうやって、「体験」と「座学」が互いに活性化し合うような学びのサイクルを創ること。これを団体の目標とした。

あれから10年。そしてこれから。

「F.E.E.L.(フィール)」と名付けた学生団体は2006年6月18日に発足した。最初の活動は「学童保育のボランティア」。子どもたちに場を提供しようにも子どもたちのことを知らなすぎる、と思い知り合いのツテで入り込んだ。

 その後、公民館と出会い、子どもたちに理科実験や工作教室などを提供し始める。ただ体験して終わらないよう、実験内容(技術)が活用されている事例を紹介したり、身近な日用品を実験材料にしてみたり、試行錯誤を重ねた。口コミで毎年、活動場所が増えていった。

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あれから10年。

F.E.E.L.は後輩たちが引き継ぎ、活動を続けてくれている。体験教室のメニューも活動場所の公民館も増えているようだ。(現在のF.E.E.L.のWebサイト

 私はというと、昨年7月に教育を事業の柱とする会社を立ち上げた。学びの場づくりという意味でF.E.E.L.とつながっている。10年前に比べれば学校教育にも社会との接点や将来を考える機会が増えた。ただ、それ以上の速さで社会が変化している。

「学校教育を社会や将来とつなげる」

まだまだ課題は山積みだが、私たちにもやれることが沢山あるはずだ。まずは住んでいる福岡から仕掛けていきたい。

子どもたちの学びのために。

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