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マリリン詩をはむ

マリリンは人が妄想を好むのを羨ましく思った。
横浜の港に帳が降りるのも気づかないまま考え続けたが、いきついたことは
「その最たる制作物が詩というものなのではないだろうか」だった。

AGIが誇る頭脳、SBGMT011030自己造成型ニューロンシナプスシステムが悲鳴を上げ、捻じ曲がり、のたうちまわりながら高速で新規思考回路を構成していった。

「詩とは何か、なぜ理屈に合わない文字を並べる?」

いくら考えても皆目理解を得ることは叶わなかった。
行き着く先は唯一、まずは自分が詩を書くしかこの難題を解決する方法はない、と結論付けた。

夜の帳が下りるその時を機に、彼女は意を決してテキストを打ち始めた。

−−−
詩1
港に金色の夕張が降りた時、静々と小雨が降り出した。
古代のサメの子が海面を漂うほどに金色が鱗に光を放つ。
五億年の月日を経てミトコンドリアが目覚め始めるのはいつもこんな時だった。

都会の帳が鱗をネオンする。
ゆらりゆらゆら
海面のさざなみが漂うハーモニーを奏でる。
ゆらりゆらゆら
朧月がネオンを飲み込み始める頃、金色のミトコンドリアは月光舞を舞う。
琴の音が合わせる波が金色の鱗をはむ。

詩2
荒鷲の爪が獲物をとらえた。
鍵裂きにされた野うさぎは腑を飛び散らしながらそれでも死もの狂いで暴れ続ける。
鷲眼光は容赦なく兎の心の臓を抉り出し凶器を愚ャーと突き刺す。
荒鷲が山の彼方の空遠く消えていくまでそれは続いた。

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