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著作権者不明の過去の作品が利用可能に?

読売新聞の報道によりますと、今般、政府は、著作権者が不明な音楽や写真などが含まれる過去の作品について、政府が認定する管理団体に著作権使用料を支払うことで、当該作品を利用できるような新制度の創設を検討しているとのことです(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210712-OYT1T50269/)。

そもそもテレビ局が放送する番組などで流れる音楽や写真などは別の著作権者による著作物であることが多く、当該著作物を含む映像をネットで再放送する場合には、別段の契約がある場合を除き、原則としてネット配信に際しその著作権者の許諾を取る必要があります。

この点、制作から長期間が経ち、著作権者が亡くなっていたり、連絡を取る手段がないなどの場合には、当該著作権者からの許諾を受けることができず、ネット配信自体を断念することもあったとのことです(上記記事参照)。

新制度では、国が著作権者でつくる団体を「集中管理団体」と認定し、テレビ局や映画会社などが当該管理団体と契約して一定の使用料を払えば、権利者が不明の場合にも(すなわち著作権者と直接利用許諾契約を結べない場合でも)、当該著作物の利用が認められることになります。そして、著作権者が後に判明した場合には、当該管理団体から当該著作権者に使用料等が支払われるようになるとのことです。

なお、権利者不明の場合には、現行の著作権法の下では、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することで利用は可能となっています(著作権法第67条)。もっとも、現行法上、裁定を受けるためには、「相当な努力」を払っても著作権者と連絡が取れない場合に該当しなければならず(具体的には著作権法施行令第7条の5で規定されている要件を満たす必要があります)、実際上はかなりハードルが高く利用しづらいものとなっています。当該規定と新制度との関係は上記記事からは明らかではありませんが、7月13日付政府(知的財産戦略本部)発表の知的財産計画2021(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20210713.pdf)によれば、一元的な権利処理のための制度改革の選択肢として裁定制度の抜本的見直しも挙げられており、新制度に一本化されることも考えられます。

(文責:中野正文)


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