夫の淹れた謎茶
夫は味覚が鈍感である。食べることは大好きなのに、舌は特に磨かれないらしい。
私は普段料理をするとき計量スプーンを使わないのでかなり適当な味付けなのだが、濃いとか薄いとか言われたこともない。何かの調味料が切れてしまっても安心だ。一切気づかれたことがない。
"料理の塩分を毎日少しずつあげていき、夫が不健康になり自然死に見せかける殺人"みたいな話があった気がするけれど、たしかに夫みたいな人は気づかないかもしれない。
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夫の味覚レベルの低さが露呈した事件があった。
子供が早く寝た日があって、のんびりお茶でも飲もうとなり、夫が紅茶を淹れてくれることになった時。
紅茶をいれる、といっても、ティーバッグにお湯を注ぐだけ。こだわりのない庶民です。
淹れてもらった紅茶を見て一瞬、? となった。
なんだか色が濃いというか…、紅茶というよりコーヒーのような色をしている。
もしかして、間違えてコーヒーを淹れた?まぁ、そのくらいの間違いは日常茶飯事なのだ。
じゃ、コーヒーでもいいや。
そう思いながら口をつけるとなんだか味がおかしい。明らかにコーヒーではない、しかし紅茶でもない!烏龍茶?黒烏龍茶?そんなのうちにはなかったけど…。夫は何食わぬ顔をしてこの謎茶をすすっている。
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私「ねぇ、このお茶、何?紅茶じゃないよね?」
夫「え、いつもの紅茶のティーバッグだけど」
私「え…?」
夫「そんなに変?普通だよ」
私「なんか色も濃いし味も濃いし…」
夫「ふむ…。現場に何か手掛かりがあるはずだ」
そう言って夫はキッチンに戻っていった。
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夫「僕は大変なことをしてしまった」
やはり。
「お湯ではなくヤカンに入っていた麦茶を注いでいたんだ」
謎のお茶は麦茶+紅茶だったのだ。
一体どれだけボーっとしていればそんなことになるのだろう?
そういえば、夫はセンター試験の日に受験票を忘れたらしい。そんな大事な日に緊張感がないくらいだから、紅茶を淹れるなんて全く集中していないだろう。…いや、普通は紅茶を淹れるのに集中は必要ないはずなのだけれど。
リラックスするためのお茶の時間なのに、謎茶の件以降、不思議なドキドキ感が生まれている。
次は、何と何を混ぜたのか正解してやりたいと思っている私だった。
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