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ワインの価値とは

「これまでさぞかし良い(=高い)ワインを飲んでこられたんでしょう?」
ソムリエの仕事をしていると聞くとプロ以外の方は大体こう聞いてくる。

断言してもいいが今の若いソムリエにはそこまで高いワインの経験値はない。
高すぎて飲めない、と言った方が正確なのかもしれないがそれが事実である。

かつて僕が勉強しだした頃は背伸びすればサロンでも五大シャトーでも
DRCでもアンリ・ジャイエでも自分のお金で飲むことができた。
そういう意味では僕は時に恵まれた最後の世代のソムリエなのかもしれない。

もちろんそういった偉大なワインたちがもたらしてくれた感動は糧となり
今の自分のテイスティングにも多大な影響を及ぼしているとは思うが
たとえその経験がなくてもワインの本質に迫ることは可能だと信じている。

ワインの価値とはその価格だけで判断できるものではない。
その定められた価格に対して品質がどうであるのかを見極めることこそが
プロフェッショナルのテイスティングの本質と言える。

誰もが知っているような偉大かつ高額なワインの味わいを理解することよりも
世界中に無数に存在するカジュアルな価格のワインたちの中から
輝く一握りのワインを選び出せる能力の方がはるかに尊いと僕は思う。

そんな今回のテーマに沿った今日のワインはハンガリーから。
シャトー・デレスラのトカイ・フルミント・ドライ2015。

かつて極甘口が隆盛を極めたこの地にて世界市場を意識して造られる辛口。
モーゼルを思わせるほのかな残糖とシャープな酸のバランスが素晴らしい。

はじめてこの造り手のワインをテイスティングした時の感動は忘れられない。
確実に価格の倍以上の価値のある味わいだと今でも信じて疑わない。

世の中には偉大なワインもあればこんなにも安価で素晴らしいワインもある。
選択肢の多さこそが日本というマーケットの魅力であり個性でもあるのだ。
改めてすべてのバイヤーに感謝したい。

ワインの価値とは・・・。
プロなら常に考えてなければいけないこと。

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