マガジンのカバー画像

輪廻の風 第3章

77
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

輪廻の風 3-35

結界を張って数秒も経たぬ内に、魔界城一階フロアは瞬く間に戦火に包まれていた。

激しい怒号と太刀音、銃撃音が鳴り響いては木霊し、魔族側もバレラルク側も勢いが徐々にヒートアップしていた。

ラーミアとアマレットは結界の効力を保たせる為に、驚異的な集中力を研ぎ澄ませていた。

それを魔族側が放っておく筈がなく、2人が攻撃対象になるのは必然だった。

ラーミアとアマレット、更にアマレットの腕に抱かれるル

もっとみる

輪廻の風 3-34

「作戦開始!」
ロゼが大きな声でそう合図すると、獄門前で待機していた戦士達は、目の色を変えて続々と魔界城へと雪崩れ込んで行った。

突然、奇襲をかける様に突入してきたロゼ一行に、エンディ達も冥花軍のメンバーも魔族達も、ぴたりと動きを止めてロゼ達を注視していた。

すると、アマレットが杖を取り出した。
左腕ではルミノアを抱き抱え、右手には杖。

アマレットが杖を天井に向ける様にして取り出すと、ラーミ

もっとみる

輪廻の風 3-33

昏睡状態だったモスキーノとマルジェラは、5日前に意識が戻っていたのだ。

本来ならば目を覚ます目処もなく、医師が匙を投げていたのだが、ヴェルヴァルト大王が王都上空に出現した際、彼の発する禍々しい邪悪なオーラに刺激されて意識を取り戻したのだ。

不幸中の幸いと言うべきか、まるで全身の細胞が警鐘を鳴らしているような感覚に見舞われ、両名は昏睡状態から生還を果たしたのだ。

恐らく、2人の遺伝子に眠るヴェ

もっとみる

輪廻の風 3-32

世界中の空が闇に覆われてから5日が経過した。

その間、魔族達は、本格的に血の侵略を始動させていた。

冥花軍(ノワールアルメ)を筆頭に、数多の戦闘員が世界中の国々を蹂躙しては、力づくで屈服させていた。

たったの5日で、世界は瞬く間に魔族の手に落ちた。

彼らは、悪しき心の持ち主を見定める嗅覚が非常に優れていた。

世界各地に点在する極悪人が収容されている監獄をまわっては襲撃を繰り返し、次々と囚

もっとみる

輪廻の風 3-31

「世界を護るなんて大それた大義を掲げるつもりはない。でも、今こうしている間にも魔族によって苦しめられてる人たちがたくさんいる。大事な仲間達が脅威にさらされている。それを見過ごす理由はないだろ?俺は人より強く産まれてきた…だったら俺はその強さを、こういう時にこそ役立てるべきだと思う。ていうかそれが、俺の…俺達の義務だろ?だから俺は…苦しんでる人達を護るために戦うんだよ!護る意味とか価値とか、そんな話

もっとみる

輪廻の風 3-30

「世界の未来を見せるだと?そんなことが本当に可能なのか?」
エンディは半信半疑だった。

「ああ、俺には未来を見通す力があるんだ。とは言っても、未来なんてのは些細な事象で容易く大きく変わっちまう。だから俺が見せれる未来は、"そうなる確率が極めて高い不確かな未来"だ。」
ユラノスはズバリと言った。

しかしエンディは、いまいちピンときていない様子だった。

首を傾げているエンディに、ユラノスは「まあ

もっとみる

輪廻の風 3-29

生物の身体の外傷を完璧に治癒する聖なる光。

ユラノスは、この能力を以てすれば自身の肉体は不老不死になるだろうと、確信にも似た強い感情を抱いた。

老いる事のない不朽の肉体。
気づけばユラノスは、それを喉から手が出てしまいそうになるほどにまで欲していた。

人類が支配するこの惑星に、未来永劫君臨する。

人類が滅亡した先の景色を見てみたい。

滅びた文明を再興し、新しい世界を創世する。

例え地球

もっとみる

輪廻の風 3-28

今から555年前の夏、山奥の小さな村に1人の男の子が生誕した。

総人口100人にも満たないその小さな村は盆地だった。

そのため燦々と輝く太陽の熱が循環しやすく、毎年夏になると人々は日照りに苦しめられた。

男の子が産まれたその年は特に酷かったという。

大地は枯渇し、農作物は軒並み枯れ果て、雨が降らないため湧水も雀の涙ほども出なかった。

村の民は自給自足もままならない状況で、狩猟に出る気力も

もっとみる