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社会問題は「国は動きが遅い」と愚痴るより、小さくても実績と前例を作る


■ 社会問題は多面的にとらえる


介護職は”低賃金”と言われている。

介護職は”過重労働”とも言われている。

だから介護の”担い手が減っている”と言われている。

・・・と、ここで「言われている」と書いたのは、それぞれの因果関係が明確になっていないからだ。

低賃金も過重労働も、基準や比較対象が定まっていないので労働者の主観でしか語られない。
人手不足だって介護の担い手が減少しているだけでなく、高齢者数が増加しているという相対的な話もある。

何が言いたいのかと言うと、介護も含めて、社会問題は1つの側面ではなっく多面的に検証するという必要があるということだ。
複合的に絡み合った要因を紐解いていかないと、適切な問題解決につながらないということを念頭におく必要がある。


■ 介護現場の過重労働は、問題を放置してきた「ツケ」


以前、介護現場の過重労働について記事にした。

介護現場の過重労働の原因は、介護を要する高齢者数(介護量)に対して、介護の担い手が少ないのが原因とよく言われる。

それはその通りだと思う。高齢者数はどんどん増えているし、これからも増えるなかで、介護の担い手が追い付いていないのは周知の事実だ。

しかし、このような高齢化社会に対する問題は、私が子供のころからすでに予測されていた。それが時代が進むごとに現実味を帯びて、現状ではジリ貧になっている。

上記の記事でも書いたが、このような現状は、介護業界も含めた社会全体が
自国の問題を他人事として放置してきたツケだと思っている。

予測されていた問題に打開策を講じてこなかったのに、それをこれから迅速に解消しようというのは無理な話だと思う。


■ 「国は動きが遅い」という前提


非難を覚悟で言わせていただくと、私は高齢者数(介護量)に対して、介護の担い手が充足するということはないと考えてる。

母国を否定するような物言いとなるが、エネルギー問題しかり、デジタル化しかり、グローバル化しかり、経済および産業しかり・・・そもそも日本という国は社会問題や世界の変化に対する動きがとにかく遅い。

これらも高齢化社会の問題と同様、何年も何十年も前から言われていることが大半だし、インターネットが普及して様々なデータや情報を得ることができる時代になっても、その姿勢は変わることはない。

すでに構築されている法令や制度だって、社会変化に応じて制度を抜本的に見直す(バージョンアップする)こともしない。

社会問題を少しでも解決するためには、新しい制度構築や刷新が必要であるが、そのためには国が主体となる必要がある。

しかし、歴史や前例を見ても、災害レベルの事象がない限りは、国が重い腰を上げて抜本的な問題解決に当たるということはない、という前提を抱いたほうが良いと思う。


■ 一番の障壁は「実績や前例」の有無


何も日本という国を否定しているわけではない。

私も含めた日本人の気質が、日本という国を表しているのだ。そして、その気質で日本という国が作られてきたのだから、他人事で国を否定するのは間違っている。

社会問題に対して動きが遅いのは、慎重さや堅実さの表れである。個々の意見に耳を傾け、不確実な点を一歩ずつ石橋を叩いて渡ることで前進してきたのが日本である。だから安全に強い技術大国になったのだ。

あえて問題点を述べるとすれば、「国は実績や前例がないと動かない」ということである。

介護サービス事業として行政に「このようなケースは大丈夫ですか?」「このような対応は法的に問題ないですか?」と質問することがあるが、たまに「前例がないので、何とも言えません」と言われることがある。

不確実な返答をしないことに誠実性は感じるが、問題点を打破する解決策があるのに、実績や前例がないと動けないという場面になると、何とも言えない気持ちになることがある。


■ 小規模でも実績や前例を作る


しかし、国の体制に足踏みする必要はない。

実績や前例がないから国が動かないのならば、「実績や前例を作ればよい」だけの話である。

実績や前例を作ると言っても、何も自分でイチから作ることはない。
まずは実績や前例を探してみればいい。

ご存知の方も多いと思うが、市町村や自治体はデータベース化がされていないので、全国の実績や事例が共有されているわけではない。

また、担当者が個人の採決で回答できるわけではない。近い将来、住民や事業者からの問いかけにAIが即座に回答する時代がくるだろうが、まだまだ先のことだろう。

となると、自分で全国の実績や前例を探してみて、近い情報があれば、それをもって自分の目指すゴールに適合するか確認してみるのが、現状における近道だと言えよう。

私は行政に確認しても駄目な場合は、ときには他の自治体や他県に問い合わせすることもある。
知り合いの専門業者に同行依頼をしたり、同じ役所の他部署の担当者にも働きかけをする(割と快く応じてもらえる)。

単純に自分の住まう地区や担当者が把握していないだけで、実績や前例というのは割とあちこちにあるものだ。そうでなければ、実績や前例を自分で作るしかない。

何だか回り道なように思われるが、私はむしろ近道だと考えている。
それに、実績や前例を作ることができれば、少なくともその地区の同業者が動きやすくなるというメリットもある。

例え小さくてもいいので、自らの手で実績や前例を生み出す取り組みは、「国の動きが遅い」といった愚痴を言っているよりも健全だと思う。

社会問題は一朝一夕、かつ全体的に解決できるものではない。
というか、完全にゼロにできないのが社会問題なのだろう。

しかし、社会問題は複合的な要素により起こっているのと同様に、個々の小さな取り組みが重なることで解決につながることを期待して、今日も国や地域が動くような小さな仕掛けをしている。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。


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