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編集者・ライターはクリエイターではない――『デジタル・ジャーナリズムは稼げるのか』書評

メリカの書籍を翻訳した少し古い書籍(日本で2016年発売)ですが、ジャーナリズム、メディアビジネスを捉えなおす視点が得られる書籍でした。

パブリッシャーは今後、コンテンツの作成・販売業者ではなく、Google、Facebookにも似たサービス業者になっていくべきだと筆者は話す。

新聞や雑誌など報道機関がビジネスとして苦境に立たされているが、危機に瀕しているのはビジネスモデルであり、ニュース自体の利用者は増えている。

そのため、従来のパブリッシャーとして常識と思っている視点を変えていくべきだと話す。その中でも下記のことが印象に残りました。

①オーディエンスとメディアとの関係
一般の人々を一塊のもの、マスとして扱ってきたパブリッシャー。だが一般の人々の役割、関係が変化したとき、ジャーナリズムの価値はどう変わるのかを考えることが重要。

良いサービスを提供するには、利用者との間に緊密な関係の構築が重要になる。ジャーナリズムは今後、「人間関係ビジネス」になっていくべきだ。

メディアに携わる人にこれから必要なスキルは人間関係構築スキル。記事はコミュニティとその成員に何か情報を伝えるためのツールとなる。その価値は個人について何かを知るための手段としての価値だ。利用者に個人情報を明かしてもらうためのもの。どれだけ匿名の人を集めたかを成功基準にしてはいけない。顧客、ユーザーとどれだけ良好な関係を築けたかが重要となる。

②コンテンツはもはや最終製品になりえない
断片的な情報をつなぎあわせて前後関係を明確にし、整理して一つの物語にしたものが記事(コンテンツ)だ。複雑に入り組んだ情報をわかりやすく要約する役割を果たす。従来はこのコンテンツを提供するだけでビジネスが成り立っていた。

しかし、今の時代では情報を提供するだけでは不十分。価値を付加しないといけない。ジャーナリズムを広義に定義すると、人々の情報入手、そして情報整理を手助けする仕事。つまり、「読者の頭の整理を助ける仕事」ということだ。

コンテンツを提供するだけで終わるのではなく、どのような形をとってもいいので、頭の整理をするというベネフィットを提供することが必要になる。

③編集者、ライターはクリエイターではない
自分をクリエイターだと思うと、自分の価値が「どういうものをつくるか」ということになる。そうなると、つくったものを「誰が受け取り」「どう役立てている」のか、ということに目が向かなくなる。

読者がコンテンツをつくる過程にも関わり、協力するというのが起きたのは最近の出来事。以前はクリエイターが独占していたため、それを自分たちの所有物と勘違いしていた。つくり、その後に流通させる。ワンセットで考えていく必要があるのだ。


本書に書かれている事例のビジネスモデルの話なども参考になります。

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