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七夕の奇跡と猫たちのこと

我が家には2匹の兄弟猫がいる。母親は近所の野良猫だ。彼らが我が家にやってきたのは、7年前の7月。当時5歳の娘が、七夕の短冊に「ねこがかいたい」と書いた1週間後だった。七夕の不思議な巡り合わせと、猫たちのことを書いておきたいと思う。

ちなみに私の幼少期の憧れは、ムツゴロウこと畑正憲さんの生活ぶりだったが、ずっと貸家で育ったので犬猫は飼えなかった。そして飼ったことはなくとも犬派で、夫婦そろって猫アレルギーだった。

その日は日曜日だった。惰眠をむさぼっていると「ミィミィ」と壊れたエアコンの室外機のような音が庭から聞こえた。庭に出ると、ネズミの死体にアリがたかっていた。よく見ると、それは白黒模様の子猫だった。わずかだが動いている…。

嫌な予感がして庭を見回ると、隣家との境にサビが1匹、隣接する歩道の植え込みにキジ白が2匹、計4匹いた。母猫が迎えにくる気配はない。アリがたかるほどだから、放置されてそれなりの時間が経っていたと思う。

近所の動物病院に連れて行くと「へその緒がまだ濡れている。生まれたばかりでしかも未熟児、50gしかない。育児放棄かなぁ、どんなに面倒をみても全滅する可能性もあります。どうしますか?

見捨てるつもりなら、はなから保護していない。その動物病院は、若い獣医師夫妻が開業したばかり。丁寧に世話の仕方を教えてくれた。会計をしようとすると、女性獣医師が「先生、いいわよね?」男性獣医師が「そうだね」とこたえる。この夫妻はお互いを「先生」と呼んでいる。

「お金はいりません。悪いのは去勢、避妊もせずに猫を外飼いする人。子猫を保護した高野さんは悪くありません。この子たちを助けようとする高野さんを応援します。いつでも相談にきてください」

いやいや知ってますよ、獣医師になるには人間相手の医師になるのと同等の時間とお金がかかることを。しかも開業したばかりで借金返済もあるでしょう。

「保護したのはこっちの判断だし、お金は払わせてください」

「じゃあ、お金の代わりに古タオルをください。感染防止のために入院中のこの子たちに必要なんです」

当時、このやりとりをFBに投稿したら「今すぐ古タオルを送る」という連絡をたくさんもらい、あたたかい気持ちになった。

未熟児4匹の子育ては大変だった。未熟児じゃなくても、生まれたての子猫には、3時間おきに授乳と排せつ補助をする必要がある。自分でオシッコもウンチもできない。母猫は本当にエライ。

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特にアリにたかられていた白黒とサビは弱く、ミルクを飲むのも下手だった。粉ミルクのメーカー、濃度や温度、哺乳瓶の乳首を工夫したり、スポイトを使ったり。飲んだミルクの量や排せつの状況も全て記録した。4匹終えるのに1時間かかることもあった。その場合、ミルクは温め直しだ。白黒とサビはときおり入院もし、シリンジで強制的に飲ませてもらった(すべて獣医師夫妻の好意で無料)。

カミさんも限界だったが、私はストレスから帯状疱疹を発症した。頭部に発症したので、大騒ぎとなった。

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その後も懸命に世話を続けたが、白黒は動物病院に入院中、力尽きた。連絡を受けて駆けつけると、小さな紙箱にたくさんの花と一緒に寝かされていた。

泣いた

獣医師夫妻の優しさと、自分で面倒が見れなかった後悔で。

サビも状態はよくなかったが、自宅で面倒をみることにした。1gでも多くミルクを飲んでくれるとカミさんと喜び合った。生まれ落ちた世界をもっと見せてあげたかったけれど、退院から数日後、サビは私の手のひらの中で徐々に呼吸を弱めていった。「よくがんばったなぁ」と声をかけると呼吸が止まった。自分で看取れば納得できるかな、と思っていたけれど、涙が止まらなかった。

二匹とも自宅の庭に埋葬した。あんなに小さかったから、もう骨も残ってないと思うけど、たまに手を合わせている。

残ったキジ白兄弟は、なかなか目が開かなかったりしたものの、順調に育った。当初、里親を探そうとしていた気持ちはなくなり、二匹とも我が家で飼うことにした。カミさんは相変わらず猫アレルギーだったが、私は平気になった。どうも洋猫の繊細な毛がダメなようで、我が家の猫たちの毛は大丈夫だった。カミさんとは別の部屋で寝ることになったが、猫たちとはいつも一緒だ。

娘と相談し、七夕にちなんで、ソラとテンテンと名付けた。二匹とも自分の名前を理解していて、呼ばれると返事をする。

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獣医師に、我が家の一員にすることを伝え「今後は診察料を払う」と話すと「じゃあ、初回検査までは無料でやらせてください」と。本当に尊敬できる獣医師と巡り会えた。

一年後、仕事で関わった動物保護施設から犬を引き取った。ジアルジアに感染していて、手足は下痢まみれ。自宅に連れ帰る車中、臭くて窓を閉めることができなかった。ジアルジアはやっかいだ。人間にも感染するし、駆除が難しい。そのころ仕事も忙しく、毎晩深夜に下痢まみれのケージと犬を洗っていた。

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6年後の2019年5月、また生まれたての子猫を4匹保護した。今度はカラスが襲おうとしていた場面に遭遇した。カミさんは「これもまた自然の摂理」と大人の対応。でも前回保護したときに獣医師は言っていた。「野良猫は野生とペットの間で野生動物じゃない。責任は人間にある」と。小学5年生になっていた娘に相談すると「私が面倒みるから助けよう」。成長がうれしかった。

結局、以前より仕事が増えて忙しい私と、面倒みると宣言しても要領を得ない娘をフォローし、子猫たちを育てあげたのはカミさんである。ありがとう。

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その子猫たちを連れて行くと「また拾っちゃいましたか」と獣医師は笑った。今回は、150gある健康優良児で、ごくごくミルクを飲んだ。「健康な子猫の世話は、こんなに楽なのか」と思った。でも、やっぱり3時間おきは大変だった。ちょうど仕事でもびっくりするような人事があって、プレッシャーから痛風を発症した。でも、目が開き、徐々に耳が立ってきて、活発に動くようになる子猫は、最高にかわいい。カミさんには「また病気になるからやめて」と言われるが、機会があったら育てたい。

この4匹は、FBで里親募集をして、2匹ずつ2家族に引き取られていった。それぞれ兄弟で楽しく暮らしている。

娘がこらえきれずに泣く姿をみて「今日はいったん帰って、またお迎えにくるね」と言ってくださる優しい里親さん。遠方からだったので、その日に連れ帰っていただいた。残り2匹とのお別れのときには、娘は泣かずに説明をしていた。こういった出会いもありがたい。

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今は、犬1匹と猫2匹と、ひとつ屋根の下暮らしている。犬はわかりやすくかわいいが、猫のほうが頭がいいな、と思う毎日。

それ以降、子猫は保護していないが、今年は自宅の庭で2匹、自宅前の道路で1匹の計3匹の野良猫の死にめぐりあい、自宅敷地内に埋葬した。我が家の猫は完全室内飼いだし、野良猫の餌になるようなものは庭に置いていない。どうして死に場所に選ばれるのか。よくわからないけれど、毎回丁寧に埋葬している。今は、計6匹の猫が敷地内に眠っている。

七夕の今日、我が家の願いは「世界の猫たちが幸せに暮らせますように」。

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長文を読んでいただき、ありがとうございました。



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