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狩野英孝はいかにしてトップゲーム配信者になったのか

コロナ禍でテレビ・イベントの仕事が減った芸人が次々とYouTubeチャンネルを開設している。とはいえ、ソーシャルディスタンスを保ったまま撮影を行わなけなければならず、企画の種類も限られている中で、少ない手間で始められるゲーム系コンテンツが人気だ

ビデオゲーム好きを公言する芸人は数多くいたが、ゲーム実況動画をYouTubeにアップロードしている人はほとんどいなかった。改めて2014年からこの道を切り開いてきたゴー☆ジャスは偉大である。

カジサックにはじまる芸人YouTuberブーム、そしてコロナ禍の企画制限により残された選択肢としてゲーム実況に手を付ける芸人が急増した。今ではベテラン芸人でさえ「バイオハザード」の実況をやる時代だ。

この中で頭角を現してきたのが狩野英孝で、2月に「Friday the 13th: The Game」、そして4月に「Dead by Daylight」の配信をはじめたことで人気に火が付いた。コントローラーの不具合でキャラクターが動いてしまい「勝手に斧振らないで」と嘆く様がSNSで拡散してトレンドワードにもあがった。

当時は配信の同接が1,500程度であったが、配信がバズったことでゲームのファン層に口コミが広がり始めた。

現在は「Dead by Daylight」と「バイオハザード RE:2」の配信をしているが、いずれも驚異的に数字を伸ばしている直近2020年5月の平均同時視聴者数は約1,5万人で、国内ゲーム配信者ではトップクラスの数字だ。(配信技研Accessのデータを参照 https://access.giken.tv/)

なぜ狩野英孝がゲーム配信というジャンルで頭角を現したかということを知るには、ゲーム配信というコンテンツがどのような類のものであるかという理解が必要になる。

筆者はゲームをプレイして実況をするというのはロケに似ていて、配信する(生放送する)というのはラジオに近いと考えている。

テレビ番組のロケというのは出演するタレントのリアクションをとって、編集し、演出していくコンテンツだ。撮影している街や施設ではなく、演者個人のパフォーマンスや、演者間のコミュニケーションがコンテンツになっていく。

ビデオゲームの世界はロケ場所だと考えればわかりやすい。ゲームにあらかじめ設定されているギミックはもちろん、オンラインゲームであれば素人(オンラインの他のプレイヤー)が出演して場を盛り上げる。出演者はそれぞれのシチュエーションに対して驚き、ツッコミ、コメントを入れることでコンテンツを作り上げていく。

ゲーム実況にホラーゲームが選択されることが多いのは、リアクションをとりやすいからだ。一方で「どうぶつの森」は検索流入の視聴はとりやすいものの、ストーリーに起伏が無く、プレイの大半を作業が占めるため、リアクションがとりづらいゲームだと言える。「どうぶつの森」をうまく実況するには、千鳥やかまいたち並みのロケ能力(つまり何もない場所でも無理やり起伏をつくりだす能力)が必要なのである。

ゲーム配信(生放送)となると、ロケをこなす能力に加えて、「ほとんど素に近い自分をさらけ出して視聴者と仲良くなる」という能力が要請される。ゲーム配信は長時間行われることがざらで、その長い配信のなかで常に起伏が発生するわけではなく、間延びする時間も多い。配信者は視聴者のコメントをひろって話を膨らませて、視聴者と距離を縮めていくというラジオパーソナリティのようなまわしをしなければならない。

ゲーム実況であれば表向きに創られたキャラクターを演じながらこなすことができるが、ゲーム配信という長時間の現場ではキャラクターがもたない。なので、自身のパーソナリティをさらけ出して、視聴者とコミュニケーションをとるという大胆さが必要になる。

狩野英孝の話に戻ると、リアクションの言葉選びが多彩で、ゲーム実況に必要な能力が備わっていることは間違いないのだが、ゲーム配信という領域においても、視聴者に自分をさらけ出し、積極的にコミュニケーションをとるという技術が異常にうまいのである。

ゲームがあまりうまくないゆえに、視聴者はコメントで必死に狩野に助けを出そうとしたり、ツッコミを入れたり、慰めたりする。狩野もつねに視聴者に話しかけながら、「え、どうすればいい!? みんなどうすればいいの!? あぁぁぁぁ!」とリアクションを重ね、場を盛り上げていく。視聴者はものの見事に狩野のプレイに巻き込まれていき、配信に一体感が生まれる。

ゲーム配信はコミュニケーションだ。視聴者が配信者のゲームプレイに巻き込まれていき、親密さが生まれれば、映像とコメントの両方が熱を帯びていく。隣の兄ちゃんが、大声でリアクションとりながらてんやわんやでゲームをプレイしていれば、見守るほうも必死に応援したくなるのだ

狩野英孝は今日は「バイオハザード RE:2」を配信しているのだが、同接は2.5万を超えている。ホロライブの宝鐘マリンの配信とためをはり、これ以上の視聴者をかせぐのは日本No.1配信者の加藤純一だけだ。

狩野英孝が恐ろしいパフォーマンスを発揮しているが(あとはあばれる君のポケモン配信とかも)、これにつづいてリアクション芸人、いじられポジションの芸人、濃いラジオリスナーを抱えてる芸人がゲーム配信を始めたら手が付けられないだろう。

個人的には、アルコアンドピースの生配信がみたい!まずはチャンネルだけでも!(メントスじゃなくて!)

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