【第８話】ステマ通販とインチキ電話勧誘｜特定商取引法ストーリー

　古びたアパートの１ＬＤＫの部屋に住むようになって半年が過ぎた。窓際や机の上にはストライクフリーダムや初代ガンダムのプラモデル、いわゆるガンプラが１０機ほど鎮座している。長尾颯太は大学３年の期末試験を終え、明日からの春休みの予定についてボンヤリと考えながらガンプラを眺めていた。実家に帰ればガンプラはこの３倍の量があるが、これ以上は増やすなと親に口うるさく言われている。
　春休みといっても、バイト以外の予定は何もない。アニメ研究会のメンバーは帰省や旅行で不在となり、大学に行っても知り合いはいなくなる。いつものように独りでアニメ鑑賞三昧の日々を過ごすことになりそうだ。
　布団に横たわりながら、スマホ片手にツイッターとインスタグラムでアニメに関する投稿を流し見をしていたときに、歴代ガンダムについての思い入れを語るツイートが目についた。フォグというアカウントだった。見慣れないアカウントだと思いフォロワー数を確認したが３万を超えるインフルエンサーのようだ。普段はビジネス系の話題をツイートしているようだが、たまたまガンダムについて語ったようだ。ガンダムに関するツイート内容はニワカとは異なるコアなものだったため、やるな！と思い迷わずフォローをした。
 
　フォグのツイートはツイッターのタイムラインによく表示されたため、ビジネス系の話題を読む機会が増えた。フォグはキャリア形成、資産運用、転職活動、ネット副業などの情報をわかりやすく解説していて、大学生の身にはすごく有益な話に思えた。時折、ディープなガンダム・ネタを挟んでくれるのも嬉しかった。
　ある時、フォグは“ガノタ（ガンダムのオタク）に超オススメの副業ビジネスがあるのだけど”とツイートし、続けて“興味ある人はＤＭして”と書き込みをした。副業ビジネスなんて考えたこともなかったが、ガンダムに関連することで小遣い稼ぎになるなら面白そうだと感じた。面識のないインフルエンサーにＤＭを送ることに躊躇いがあったが、勇気を振り絞って問い合わせをした。