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サーベイの賢い選び方・使い方/Ⅰ.《理想イメージ》のマッチング/その1

色々なコンサルティング会社や研修企業が、学習能力、成長可能性、創造性などの多様な観点から組織の現状を評価するサーベイ(診断)を提供しています。この連載では、このような市販のサーベイを使ってご自身の所属組織を評価しようとお考えの方に向けて、どのようなサーベイを選んで・どのように使ったら良いかをお伝えしたいと思います。ご自身でサーベイを作ろうとお考えの方の参考にもなるように書きたいと思っています。

初めにお断わりしておきます。この連載は、中原 淳 氏 の『サーベイフィードバック入門』がネタ元です。ただし、私の実務経験と現在の関心事に従って論理の流れを組み変え、表現も一部改変しています。

「私の実務経験と現在の関心事」と申し上げました。私はプロフィールに、「マネジャー研修用の企業研究/戦略ケース教材を作って20年」と書きましたが、組織風土サーベイや組織メンバーの行動サーベイも作ってきました。

現在、これまでに作ったサーベイの見直し作業中ですので、その作業と並行して、私自身の頭の整理も兼ねつつ連載を進めていきたいと思います。

前置きが長くなりましたが、今回から第3回までは「《理想イメージ》のマッチング」というテーマでお話ししたいと思います。
「《理想イメージ》って、なに? それが何と・どうマッチングするの?」という質問が聞こえてきます。その答えは、試しに簡単なサーベイを作ってみるところから入ると、見えやすくなってきます

※試しに簡単なサーベイを作ってみる


さて、何についてサーベイしましょう? 比較的多くの方に関心を持っていただけそうなところで、《あなたが親友だと思っている友人が、本当は、どのくらい親友なのか?》を評価する《親友度サーベイ》を作ってみましょう。「よく、そんなケチくさいサーベイを思いついたな」と自分でも呆れるのですが、他にうまい例を思いつけないので、今回は、これでご容赦ください。

サーベイでは、評価対象者(この場合は、あなたの友人)に様々な質問を投げかけ、それへの回答に対して評価を加えます。
《親友度サーベイ》では、なにを尋ねましょう? 分かりやすい話しコトバで質問を考えていきたいと思います。私が男性なので、男コトバで、年齢もやや若い設定でいきます。

まず、ズバリ直球勝負で、

「君は、ボクの本当の親友だよね?」

これは、どうでしょう? 

友人から「もちろん」という答えが返ってきて、私は「そうだよな」と頭をかいて終わりになりそうな気がします。そして、この「もちろん」という漠然としていて、かつ包括的な回答に対して評価を加えることはできません

回答を評価するためには、もっと具体的に回答してもらわないと困ります。私は、質問を次のように切り替えます。

「ボクが今のアパートを追い出されたら、次の住処が見つかるまで、君の部屋に泊めてくれる?」

「何円くらいまでなら、お金を貸してくれる?」

「ボクと同じ女性を好きになっちゃったら、ボクに遠慮してくれる?」

この3つの質問は、相手が本当の親友だったら私にしてくれるはずだと私が期待する行動を、そのまま尋ねています。実にベタで芸のない質問ではあるのですが、最初の直球質問より具体的な回答が得られそうです。

親友度をサーベイするのは、私が親友だと思っている友人の間で、親友である度合いに差があるだろうという仮説を立てているからです。この仮説を検証できるサーベイは、同じ質問に対して回答者によって異なる答えが返ってきて、異なる答え同士を比較評価できるサーベイ、ということになります。

そこで、先に設定した3つの質問に対して、私があらかじめ用意した選択肢の中から回答を選んでもらうようにし、各選択肢に評価点を割り振ってみます。すると、次のような表が出来上がります。

親友度サーベイ

「1日しか泊めてくれなくて+1万円未満しか貸してくれなくて+絶対に遠慮してくれない」友人の親友度は3点です。このような親友(と私が思ってきた相手)が、実は最低の親友だということが分かります。
「いつまでも泊めてくれて+いくらでも貸してくれて+当然遠慮してくれる」友人の親友度は15点で、最高の親友です。
こうして、私が親友だと思っている友人たち全員を、3点から15点までの幅で数値評価できるようになります。

今、私の耳には、読者の「ちょっと待ってくれ。友人が本当に親友かどうかを、部屋に泊めてくれるとか、お金を貸してくれるとか、恋のライバルにならないでくれるとか、そんな表層的でケチ臭いことを根拠に決めるなんて、どうかしてる!」という怒りの声が響いています。

ここがポイントです。「誰が本当の親友であるか」を決める価値観は、人によって異なるのです。親友の価値は、住処やお金や恋のさやあてといった表層の事象にではなく、もっと深いところの心の結びつきにあると考える人には、私が作った《親友度サーベイ》は、まったく役に立たないのです。

次回は、この《価値観が人によって異なる》ことを切り口に、《理想イメージ》のマッチングというテーマの本題に分け入っていきたいと思います。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


『1《理想イメージ》のマッチング/その1』おわり


第2回はこちらです:



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