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韓流(K-POP)が日本の「二重まぶた信仰」を壊す

はじめに自己紹介をする。早稲田大学の文系学部に通っている学生だ。また、現在声優と通話できるサービスVoiceUtopiaを運営している。興味の幅が非常に広く、私自身ジャニーズ、坂道系アイドル、そしてK-POPに対する関心がある。

この中でも、日本に住む私たちにとって異質なものは、おそらくK-POPだ。K-POPは日本にとっては外国の文化だからだ。ただ、今や、若者はK-POPを海外の文化として受容しているというよりかは、エンタメの選択肢の一つと評価している。

K-POPの中でも特に幅広く受容されているのが、BTS(防弾少年団)、TWICE、BLACK PINKなどだ。彼らは皆、J-POPにはあまりみられない一糸乱れぬダンスや、日本人メンバー、海外メンバーなどによる多様性で私たちを魅了する。

ただ、私たちがK-POPから受容しているのは単に「音楽」だけではない。文化的にも非常に多くの影響を今日受けている。K-POPというメディアを通して韓国の文化を私たちは受容しているのだ。その一つが「一重まぶた」だ。今回は男性アイドルにフォーカスして考察する。

一重まぶた=カッコいいという新しい価値観

K-POPが日本に本格的に流入してきた2000年代後半〜2010年代前半は記憶に新しい。東方神起、BIGBANG、EXOなどの男性アイドルが日本でも活動をし、日本語を話していた。彼らは当時の日本人にとっては非常に奇抜だった。彼らのアイメイクには特徴があり、非常に強いアイラインを引いていた。

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EXO-K『History』(2012年) MVより

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『美男ですね』に出演していたチャン・グンソク

当時の韓国芸能界には、一重まぶたをアイラインなどで大きく見せることで、そのコンプレックスを隠すというテーマがあったと推測できる。韓国では女性が整形をすることによって一重まぶたから二重まぶたにするという傾向は大きい。

もちろん当時の日本はK-POPは流入していたが、嵐を筆頭にジャニーズが若者を魅了しており、彼らの多くは二重まぶたをしていた。そして、かっこよさの特徴として二重まぶたは受容されていた。

しかし、今日のK-POPアーティストをみてみると、上記の傾向が薄れつつあるように思う。

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BTS 『Stay Gold』(2020年) MVより

BTSはれっきとしたK-POPを代表するグループだ。所属事務所はBigHitエンターテインメント。2018年に韓流や韓国語の普及に貢献した功績があるとして、韓国政府から史上最年少で花冠文化勲章を受章した経験もある。

上記は、メンバーの一人であるパクジミンだ。彼の目元に注目してほしい。2000年代後半から2010年代前半にみられたアイラインが目立たない。一方で韓国人では一般的である「一重まぶた」、「色白」、「リップとのコントラスト」などが目立つ。

この傾向には二つの理由があると考えられる。

1.日本からの脱却 と 2.海外への進出 

以前のK-POPは日本への進出が最重要課題だった。KARAや少女時代のメンバーが日本語を話して日本のバラエティ番組に出ていたことを記憶している人も多いのではないか。

K-POPは韓国の内需だけでは収益をあげる限界が知れているので、日本という世界二位の音楽市場に目をつけていた。そして、K-POPが日本進出をするためには、日本ウケをよくするための、「現地化」が必要だったのである。当時の日本人にとって「良い」とされていたのは大きな目元だ。それゆえ、日本に進出するK-POPアイドルはこぞって目元を大きく見せることにこだわったのである。

しかし、今日のK-POPはBTSを筆頭に北米、南米、ヨーロッパなどに進出している。これらの国々の人々にとって「二重であること」は日本人ほど意味をなさない。むしろ、一重まぶたは「アジアらしさ」、「エキゾチックな雰囲気」を示すものであり、特別なものとして受容される。K-POPの市場の中での日本の相対的な地位低下が結果として日本に媚びない目元になったのだろう。

日本に影響を与え始めた韓国の目元

これまでは、K-POPにおける「一重まぶた」「目元」という部分にフォーカスしてきた。これからは今日の日本の目元に対する価値観を考察してみる。

先述の通り日本のアイドルは二重まぶたが多い。日本の一重まぶた:二重まぶた=7:3と言われている中で、ジャニーズのメンバーの二重まぶたの割合はあまりにも多い。しかし、この傾向に変化が生まれ始めている。

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(ジャニーズ事務所所属の人気メンバー三人は皆目元がはっきりとしている)

韓国のオーディション番組PRODUCE 101を輸入したPRODUCE 101 JAPANから生まれたグループJO1の人気メンバーに「川尻蓮」というメンバーがいる。彼は最終的にデビュー時に二位でデビューを果たした。これは個人的には衝撃的なことだった。「二重まぶたでない」メンバーが日本のアイドル界でそのアイドルの中心として選ばれたからだ。

これは韓国から輸入されたオーディション番組であり、元々の視聴者にK-POPファンが多かったから「スッキリした目元」に対して抵抗がなかったからとも考えられるが、これはこれからの日本のアイドル業界にとって風穴を開けたと言っても良いのではないか。ある意味極端な「二重信仰」は日本の若者を苦しめてきた。それをK-POPが壊し始めているのだろう。

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JO1『無限大(INFINITY)』(2020年) MV より。中心にいるのが「川尻蓮」

まとめ

K-POPの世界での流行は「日本依存」からK-POPを脱却させ、日本的な目元を求めるためのアイラインはK-POPの象徴でなくなった。そして、世界での地位を獲得したK-POPは今や日本に流入し続け、日本の「二重まぶた信仰」を壊し始めているのだろう。少し極端な論理かも知れないが、日本にはこれから一重まぶたのアイドルが多く活躍する時代がやってくるはずだ。

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