ソフトバンクグループの株主価値はいくらか?

ソフトバンクグループの孫さんが決算説明時に毎回語る内容として株主価値はいくらかという話をする。直近2020年度のQ2では「22兆円」であり、それに対して時価総額は9兆円。ディスカウント60%。

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1株あたりでは12,372円となる。

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保有株式の内訳は以下の通り。

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アリババ、ソフトバンク、スプリントは上場しているため、時価である。しかし、ARM、ビジョンファンドは未上場企業であるため、どのような中身になっているのか不明である。
まず、Armの金額算出方法が、2016年にプレミアム40%込みで購入した額3.4兆円を使用している点が気になる。それに対してビジョンファンド移管分を控除した75%分の2.6兆円に対して株数2億710万で割っている。
3.4兆円はあくまで孫さんが将来成長を織り込んだ数字のため、現在の価値はいくらか切り分けて考える。ARMの業績は以下。

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調整後EBITDA=$279m=300億円。収益利回り=7%相場に当てはめると、0.5兆円程度。2.6兆円に対して1/5程度。よって、ARM株主価値(現在)は260円/株程度。これがWorstケースの価値。
将来性を考慮すると、R&D(研究開発)費用とSG&A(販管費)が2017年以降に2倍近くとなっている。これは孫さんの意向もあり、最先端TOPの地位を確実に維持するために、10年先を見据えた技術を設計に盛り込むため(R&D)、かつ優秀な社員を招き入れるため(SG&A)である。この影響はARMの説明資料にも記載があるが、研究開発初期から5~7年経過して収入に反映される。よって、このコスト$1557mは今後も維持されるが、2022年~2024年程度で新商品である改良チップが続々と出てくると思われる。
ARMのビジネスモデルは、チップ設計図を使用すると発生するライセンス料とそのチップの出荷数と比例してロイヤリティ収入となる。要はチップ数と比例して売り上げが増える。
では出荷チップ数はどの程度増えるか。これはARMの出荷数が過去18%という実績があり、IOT時代の今後はこれ以上に増えることは明らか。今までは日常生活に触れるスマホだけにARMという時代が、使用する家電、車、今までにないウェアラブル端末と考えると10倍以上という世界は予見できる。仮に増加率20%と考えれば、10年で売り上げ(2000億円x1.2^10=1.2兆円)。EBITDA=1兆円程度となり、収益7%相場では14兆円という時価総額に収束する。ARM買収時3.4の4倍であるため、株主価値は5200円/株程度となる。Bestケース。
リスクとしては、R&D費用をかけたにも関わらず、競合に負ける技術であれば、Worstケース程度の価値のままであるだろう。

ARM株主価値
 260円/株(Worst)
 5200円/株(Best) 10年先見込み


つぎはビジョンファンドの価値を見極めたい。未上場企業を多く含むビジョンファンドはどのように1545円/株という数字が表れているのか不明である。そこで、すべての投資企業の評価額と投資額を報道されている値を参考にして、各企業の株主価値を洗い出した。

算出結果は1652円/株と公表値1545円/株に対して8%という差はあるが、SBG全体からしたら1%未満となるので、誤差程度。評価額が適正かどうかは、未上場企業のため、情報も少なく判断できないが、資本提供側LPに諮問委員会、選任独立評価機関を設けており、ソフトバンク側の評価に対して是正が入れる仕組みにはなっている。よって、株主価値は概ね妥当な値だろう。

最後にこれらすべての株式は売却時の法人税30%が割り引かれていない。よって、完全子会社ARM以外に0.7をかけると
アリババ:7552円/株x0.7=5286円/株
ソフトバンク:2259円/株x0.7=1581円/株
スプリント:1528円/株x0.7=1070円/株
ビジョンファンド:1082円/株
ARM:260円/株(worst)
その他:372円/株

合計保有株式:9651円/株

株主価値:9651円/株-2190円/株 = 7461円/株
株価4800円に対してディスカウント35%程度である。

これは将来を全く見込まずに計算した場合の最低価格。
次回は各銘柄の将来性を含めて計算する。

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