【#100文字ドラマ】そのさよなら、代行します

■あらすじ

訳あって親から預けられている子どもたちを集めた施設。
ここでは、必要最低限の生活が保証されるかわりに、結婚式で新郎新婦の昔の姿に扮して登場し、思い出や感謝の気持ちを代わりに伝える仕事をしていた。お別れではないけれど、今までの気持ちを代弁し、親から卒業していく様子から、「さよならメッセンジャー」と周りからはよばれていた。
聖士は、他の子どもたちと、依頼人夫婦からもらったプロフィールをみながら再現の準備をしている。聖士の今回の役は、新婦の高校生時代の役。バスケ強豪校のキャプテンであった。バスケ好きな聖士は、楽しそうに新婦のプロフィールをながめ、他の子どもたちと話していた。

■登場人物

● 大野聖士(18歳)高校3生
◯ 山本聡(24歳)会社員
◯ 早見理沙(25歳)アパレル店員
◯ 佐藤瑠奈(14歳)中学2年生
◯ 子どもたち複数
◯新郎新婦のご両親

◯女

◯施設のオーナー


■シナリオ

◯施設(子どもたちが暮らしている場所)

「うわー、すげーな。社長かよ」
聖士「どれどれ、、今回の幸せ者はっと、、、おおー、バスケ強豪高の出身じゃん。しかもキャプテンかよ。さぞかしモテてたんだろーなーコイツ。瑠奈は今回どんな役やんの?」 
瑠奈「うちは、また反抗期の中学生役だってー。どうしてこうも毎回、やんちゃな娘役にあたるのかねー」 
聖士「いいじゃん、生意気なんだし、丁度いいよ。」(幼稚園の子どもたちを仲間にして、瑠奈をからかうように笑いながら言う) 
瑠奈「はーうざすぎ、だまれ」 
聖士「ほら、反抗期だ」 
理沙「ねー喧嘩しないの。いいじゃんかわいい制服着れるんだから」

*ガヤガヤ子どもたちが会話をしているところで場面が切り替わる

◯寝室(男子部屋:聡と聖士の会話)
聖士「いいよなー、今回の新郎って人生勝ち組だよなーきっと」

「だろうな。バスケもできて、勉強もできて、しかもいまや、起業して社長だもんな。そんで結婚かー」 

聖士「どうしてこうも、世の中は不平等なんかねー」(豆電球をみて呆れたようにつぶやく)

 「いや、この人も相当努力はしてるだろ」
聖士「まぁそりゃそうだけどさー、、、やっぱ環境かなー、、だってどうせおれらって親にすて」
「聖士、やめろ。」
聖士「あーごめん、でも大丈夫だって、ほらぐっすり寝てるし」
(幼稚園児の幼い寝顔をみながら言う)
「もうその話ししないって決めただろ。おれたちは理解してるけどこいつらはまだ信じてるんだからさ」
聖士「おれからしたら真実を伝えない方がたち悪いと思うけど。言っちゃえばお互い楽になるのによ」
「言うほどかんたんなことじゃねーよ」
聖士「そーかなー、期待するだけして、本当のことに気づいた時の方がよっぽどしんどいに決まってるのに」

◯聖士の回想シーン
幼い聖士がバスケットボールを抱えて、笑顔で女性に手を降っているシーン

◯寝室(男子部屋:聡と聖士の会話)
聖士「聡兄、おれたちの仕事、世間からなんて言われてるか知ってる?」
「んー、結婚式の引き立て役?あー感謝の代弁者とか?」
聖士「新郎新婦の代わりに、過去の感謝の気持ちを伝えて、親から離れるみたいなことから、『さよならメッセンジャー』だってさ」
「おーオシャレじゃん」
聖士「おれからしたら皮肉に聞こえてしょうーがないわ。自分の親にすらさよなら伝えられてないのに、他人の親に気持ちを伝えてるんだからよ」
「まぁでも、おれはこの仕事すきだけどな、とくに親御さんが泣いてるのをみるとなんだか嬉しいし」
聖士「べ、べつにおれも別に嫌いじゃねーよ」
(反対側を向いて本格的んい寝ようとする)

◯結婚式当日
(会場の様子、新郎新婦が友達と話してるシーンが流れる)

◯結婚式の控室
理沙「綺麗な新婦ね、背も高いし、モデルさんみたい」

瑠奈「理沙姉も負けてないじゃん!うちは理沙姉の方がきれいだとおもうな理沙「はいはい、ありがとね」

聖士「うわー、、瑠奈、そろそろ中学生役もきつくなったんじゃねーか」

(ゲラゲラ笑いながら)
瑠奈「はぁーまだぴちぴちの14才だっつーの!」
瑠奈「あ!聡兄!かっけー、社長の雰囲気出てるねー」

聖士「よっ!社長!!」
「ただのカジュアルスーツだろ、まぁでも悪い気はしないな」

*プロフィールをみながらフェードアウト

◯結婚式(子どもたちの出番)
司会「それでは本日の主役、新郎新婦からご両親へ、感謝の気持ちをお伝えしていただきます。」

幼少子役の子どもたちが新郎新婦のもとにかけより、過去の思い出や感謝の気持ちを伝え始める。

*続けて反抗期役の瑠奈が新婦のご両親のもとへ駆け寄る
瑠奈(新婦の中学生役)「中学生の私は、少し反抗期。学校もサボったり、行ってもずっと保健室で寝てたり。ママともたくさん喧嘩した。『あんたには関係ないでしょ』『うるさい』とか。とにかくひどいことをたくさん言っちゃって。でも私のために何度も先生に頭を下げてるパパの姿をみてたら涙が溢れてきた。その時やっと、自分の進路や将来を考えるようになった。本当に二人には迷惑かけたね。見捨てないでくれてありがと。」

(ご両親は泣いており、会場では涙を流す姿)

◯裏で大人役の準備をしている二人

理沙「あーやっぱり瑠奈の演技はすごいね」

「あーほんとにな。ただ、おれには本当の自分の姿に重ねているようにみえるんだよな。どこにもぶつけられない気持ちを、他人の過去に重ねて、伝えてるっていうか」

◯新婦の高校生時代
聖士(新郎の高校生役)「小学生から続けていた大好きなバスケ。強豪高に入学したおれは、今まで以上に努力した。なかなかレギュラーになれず苦しんでいたおれをいつも励ましてくれた親父。練習や大会に、忙しい毎日をサポートしてくれたおふくろ。本当にありがと。キャプテンとして挑んだ冬のウィンターカップでは準優勝で悔しい思いをしたけど、なにより最後までバスケットを続けられたのが嬉しかった。本当にありがとう。」

(新婦の両親が号泣している)

聖士(「あー、ほんとにこいつは幸せものだ。好きなバスケもやれて、両親からもこんなに愛されて」)

想いを伝えた後、会場の方を向くと、明らかに泣き崩れている人がいた。

(ずっと女はことばを口ずさんでいる「さ・よ・な・ら」)

聖士(「お!すげー感動してくれてる。おれの演技も瑠奈に負けてねーな」)

*そのまま子どもたちは順番にすべての役をこなし、新郎新婦へバトンタッチして、新郎新婦本人たちが、想いを伝えていく。

◯結婚式の控室

「立派に育ててくれて本当にありがとうございます。あの子も、バスケットが大好きだったんですよ。ずーっと父親からもらったボールを離さなくてね。それで、、」(泣きながら、懐かしそうに思い出を話す)

施設のオーナー「最後に声が聞けてよかったですね。心の中でさよならは言えましたか。」

そういって、施設のオーナーは封筒を女にそっと手渡した。

(封筒には「さよならメッセンジャー」と記載されている)


■あとがき

結婚式の「メモリプレイ」を、訳ありで施設に預けられた子どもたちが演じることでそれぞれの過去や施設に預けられた理由が少しづつ理解し、真実に近づいていく。さよならメッセンジャーと呼ばれている仕事だが、本当の「さよならメッセンジャー」の正体、意味とは。ストーリーが進んでいく中で「さよならメッセンジャー」がなんのことなのかをとにかく気になる展開に、それぞれの人生を描けたらなと思います。

#テレ東ドラマシナリオ

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