見出し画像

【美容医療と恋愛10】劣化しちゃダメですか?奇跡の○歳・ルッキズムの呪縛を考える

今回は、アンチエイジング&リバースエイジングに関わる美容皮膚科医が、
あ・え・て、申し上げたいテーマ
ずばり、『劣化しちゃダメですか?』と題して
奇跡の○○歳、ルッキズム偏向の罠について考察したいと思います。


女性芸能人の容貌変化に関するゲスな記事

ネットニュースの記事は、平和な小話から、凶悪犯罪、重大な時事ネタが並列化して流れてきます。そんな玉石混合の記事に混ざってほぼ毎日のように出てくるのが、女性芸能人の容貌変化に関するものです。
 
時が止まったかのように変わらず若ければ
『奇跡の○○歳』『時空が歪んでる』
と誉めちぎり
一方で老化が少しでも見てとれれば
『劣化に驚愕』『激変に衝撃』
と貶める
 
話題に挙げられた方にしてみれば『余計なお世話』ですし、甚だ失礼の極みです。そして有名税として済ますには、言われた側が相当傷付く言葉だと思います。

一言でいうと『PV(ページヴュー)数稼ぐためのゲスな記事』ということになるのですが、それでは医師が語るには荒すぎる説明ですので、少し思うところを述べてみたいと思います。

人間の顔は緩みがあるから表情を作ってコミュニケーションを取ることができる

まず初めに、最近劣化してると話題にされてしまった女優さんたちは、総じて皆さんとてもお綺麗です。
そりゃそうです。元々、隠れて生きるには不向きな美貌と秀でた骨格を持ち、ベテランを優に越す年月を第一線で活躍していらっしゃるのですから、人に見られる緊張感や現役感に溢れています。
 
例えば、10代の瑞々しい肢体が神々しくもあった衝撃のヌード写真集から30数年、役者として成長を重ね、名実ともに大女優になられたMさん。

骨格の美しさときめ細かく白い肌、スタイルの良さがミューズのようです。
最近のお写真や動画を見ますと、若干の脂肪萎縮と皮膚萎縮によって、笑ったときの口周りがシワっぽく(いわゆるカーテンジワ・ドレープジワ)なってはいますが、これは相当軽い方です。

また、額の凹みや頬の軽い削げは、ヒアルロン酸注入指導医としては注入適応部位と判断せざるを得ないところではありますが、逆に、この部位をパンパンに入れていないことが、自然なエイジングの証拠だとも言えるでしょう。そうです。注入適応があるからといって、注入するのが正解とは限りません。顔全体のバランスや雰囲気、その方の職業や好み次第だからです。
 
Mさんは、俳優としての本分を全うするため、表情ジワを消すボトックスはせず、成熟世代を演じるのに欠かせない若干の脂肪萎縮もそのままにしているのだろうなと推察でき、一ファンとしても医師としても尊敬の念を抱く次第です。

Mさんのような立場から言えば
「10代のように緩み皆無、顔パンパン状態でお母さんを演じられるかボケ」
でございますよ。(ご本人は絶対おっしゃらないと思いますので、わたくしが勝手に代弁)
 
萎縮、下垂、拘縮という老兆をある意味利用し、演技やパフォーマンスに円熟味を増すのが歌手や俳優などエンターテイナーの皆さんです。
マネキンのような顔では表現は制限がされますでしょう。
 
私も毎日のようにカウンセリングでお話しています。
「机や人形は笑えませんでしょう。人間の顔は、緩みがあるから表情を作ってコミュニケーションを取ることができるんです。」

表情を完全に消さないようなさじ加減ボトックス注射をし、目元や口周りの表情が美しく映えるように控えめヒアルロン酸注入ベビーコラーゲン注入をします。若干のシワや緩みをあえて残しておくことが、自然に見せる、イタく見られない、戦略ですからね。

もう一人の女優Nさんも少し前に容貌変化を報じられました。

10代のころ一世風靡した元アイドルで、華やかなお顔立ちに我々世代は総じて憧れたものです。キレキレの輪郭だった10代から20代に比べれば、若干ふっくらしてたるみが出ていますが、年齢相応の範疇です。わたくし的には、雰囲気が柔らかくなられたなと好ましく感じました。そして、「この程度で劣化したとか言われるなんて、なんて過酷な世界だ」と恐怖を覚えます。

そうそう、テレビって太って見えるのです。実際に見たら小顔で皆さん華奢で驚きます。よく、顔がパンパンと指摘される芸能人の方が、全員ヒアルロン酸注入を受けているわけではないと思います。きめの細かい柔らかな肉質だと、加齢により脂肪がフワフワたるたるしやすいからです。ちなみに、そのようなタイプでは注射注入より、サーマクールFLXウルセラなどの照射治療が適しています。

直接お会いしたわけでもないのに、人を貶める発言は控えたいですね。言葉には力があり、古来日本では『言霊(ことだま)』と表現されますが、医学的にも真理を突いています。

他人に向けた言葉でも、発した本人の脳を傷つけます。
発した言葉を聞いた人、読んだ人の脳も傷つけます。
当然、言葉を浴びせられた人は心身ともに傷つきます。

無意識下で蝕んでいくので、もしもマイナスワードを見たり聞いたりしてしまったら、ポジティブな言葉を自分に聞かせ直してください。
 
老化をマイナスでしかないと捉え、人間の価値まで下がったとみなす言葉は、発した人も聞いた人も『若くいなければならない』という鎖で縛ります。それでは、世の中が生きづらく、苦しくなるに違いないと思うのです。
ルッキズム(外見至上主義)による弊害って、そういう小さな言葉の積み重ねではないでしょうか。

「おいおい、アンチエイジングとかリバースエイジングとか言ってる口で何言ってるんだ」
「見た目を整えると魅力が増すとか言ってたよね」
という声が聞こえてきそうですが、美容医療は誰のためかを書いた、こちらをお読みください。

美容医療は誰のため?

私は、カウンセリングでプロとしての意見を求められるので、嫌われる覚悟で老化の仕組みと現状と治療方針をお伝えするわけですが、あくまでご本人がご機嫌になって、笑顔で過ごせたら十分だと思っています。

(お食事会とかで「美容医療何したらいい?」とか気軽に聞かれるの実は嫌です。白衣を脱いだトモコちゃんは、一緒にいる人がそのまんまで好きなんですから、お仕事モードに戻されると疲れます)

シワがあっても、たるみがあっても、チャーミングな人はチャーミングですし、シワ一つなくても、意地悪な人とは距離を置きたいです。

先日、お取引先の女性社員の方が、70代のお母様を初診でご紹介くださいました美容医療は何もなさったことがないとのこと。

診察室に入っていらした瞬間に、「人を傷つけず感謝しながらご自分の道をしっかり歩まれてきた善き人」だと分かりました。

長く生きてきた方のお顔には、生き様と性格が現れます。診療経験が長くなると、オーラを読む力が鍛えられますのでね。直ぐ分かります。

お優しいお顔に綺麗に浅く入った表情ジワを、あえて消すのが正解なのか考え込んでしまいました。

「何もしないでも良いくらいですが・・・」と何度も申し上げつつ、人生100年時代、この先を楽しみに生きたいというご本人のご希望で、一つだけ治療をいたしました。

健康的で幸せそうな印象がゴール

20代までの美しさ個性を消さず生命の輝きを活かし

30~40代の美しさエイジングサインを考慮しながら色気を増し

50代以上の美しさ内面の美を反映させて若手に夢を与えるように

全世代共通して、健康的で幸せそうな印象がゴールです。

鏡を通して、自分が調子良さそうって思えたら、自然に笑顔が増えるので、周囲も巻き込んでハッピーが拡散していきます。(美容医療でモテるようになったというのは、ご本人の自信がチョイ増しするから)

暦年齢マイナス10%の見た目にとどめ
肌質はその世代のなかで極上に仕上げる

これが18年変わらない当院のポリシーです。

言霊の力を侮らず、自身の脳をも傷つけるネガティブな言葉は発しない

そして、見た目に関わる仕事をしているからこそ発信したいこと、それは、

言霊の力を侮らず、自身の脳をも傷つけるネガティブな言葉は発しない

ということです。全てを笑いに言い換えてみれば人生楽しいものです。

劣化しちゃダメですか?

劣化したっていいじゃない?

自分が好きだった芸能人の容貌に年月を感じ、少し寂しく思う気持ちは分かります。

そうです。全てにおいて永遠はない

歌手は声が出なくなり、踊り手は身体が利かなくなり、スポーツ選手は引退の時期がくる。でも、だからこそ最盛期の破壊力が尊く、命は期間限定だから切ないのですよね。

見た目を平気で揶揄する人と付き合うと、一緒にいるこちらまで不幸になります。お付き合いする相手や友人を選ぶ時には、くれぐれもご注意くださいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?