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京都サンガ2021 第3節 第一試合 vs大宮アルディージャ


緊急事態宣言等によるビジター席の制限、雷雨による試合中止となった第3節の試合です。
前半19分間の攻防に両チームの意図がしっかりと出た好ゲームだったの思うので簡単に振り返ってみたいと思います。


2021年3月13日(土)
明治安田生命J2リーグ 第3節 0-19分まで
NACK5スタジアム
大宮アルディージャ 0-1 京都サンガ
得点者:武富孝介(18分・京都)


スタメン

両チームのスタメンは以下の通り。

大宮は守備タスク・プレッシング・トランジション(切り替え)・デュエル(球際の攻防)の観点から、サイドハーフ(SH)に佐相と松田詠、センターハーフ(CH)に三門を起用したと思われます。
対京都を強く意識しています。


京都はウイング(WG)のみ前節と変え、宮吉と武富をスタートから起用しました。ストライカーとしての役割を期待されるWGに武富と宮吉というゴールへの嗅覚に優れた2人の起用は注目です。
試合前の監督インタビュー通り、自分たちのやってきたことを出すという強い意志を感じます。



大宮の狙い

●ボールの奪い方
・深い位置でのビルドアップに対して前線からプレッシングをかける
・442でブロックを敷き前進してくるボール(縦パスやロングボール)をインターセプトする


●攻め方
・京都2CB脇のオープンなスペースに2トップ(中野誠、ハスキッチ)を走らせる
・2トップが孤立しないよう両SHが外から斜めに、中央に向かって入ってくる
・(後方から繋ぐときは)バックパスや距離の長い横パスで京都をおびき出し、プレスに来たところを剥がして空いたスペースにボールを送る


京都の狙い

●ボールの奪い方
・最前線からボールホルダーへプレスをかけ、後方が連動して人を捕まえにいく
・自陣後方の広大なスペースに対するカバーリング意識と中盤のセカンド回収意識で、相手のロングボールを跳ね返してマイボールにする


●攻め方
・左右に開いた2センターバック(CB)からのビルドアップで2トップを超える
・サイドバック(SB)、インサイドハーフ(IH)、ウイング(WG)と下りてくるウタカで相手のSBを釣り出して裏のスペースを使う
・SBの突破力を活かして442ブロックの外側から攻める





京都のビルドアップの脆さ

この試合では、全体としては2152の形になっていたものの、ビルドアップ時の後ろは2CB+アンカーといういつもの形でした。

京都としてはアンカーに2人でマークにつかれているので空いている2トップの両脇(円形の囲み部分)からボールを動かしたいのですが、大宮の両SHが中央に絞って、CHと連携して縦パスの出しどころを無くし(四角形の囲み部分)ていました。

ウタカが下がってくることで活路を見出そうとしていましたが、ビルドアップの段階ではあまり効果的ではありませんでした。

インサイドハーフが下がって受ける場面はほとんどなく、SBが下がることで442ブロックの外側からボールを前進させて行くルートが多くなりました。
ただコースが限定されている分相手に読まれやすくパスカットされてカウンターをくらうシーンも少なくなかったです。

ただ後ろから繋ごうという意識自体それほど高くないため、相手SBの裏を狙うロングボールも多用していました。




3トップの関係性と活路

京都の3トップは上図のように、ウタカが下がって中盤を助けるような動きをし、宮吉と武富で2トップの形になります。

ウタカはスペースでボールを受けてから前を向いてプレーするのが得意なので、相手のCBがマークに来ずらい相手のボランチの裏でボールを受け、そこから前を向いてゴールに向かうプレーを選択していました。
ここでの宮吉と武富は主にCB-SBの間からCBの背後あるいはSBの背後を取る動きで駆け引きをし、相手の最終ラインを下げて中盤(ウタカ周辺)にスペースを作る役割を果たしていました。同時にロングボールを用いる際はターゲットとしても機能していました。


宮吉と武富は2トップに、それぞれがウタカと縦関係になるので、3人が近い距離感で互いに孤立しないようプレーできていました。
WGがサイドに流れることでSBが孤立しないようにサポートシーンも多く、選手の個性と役割がマッチしている印象が強かったです。


さらに2トップ化することで、前線でボールを失った時にウタカの負担を減らしつつカウンタープレス(即時奪回)を仕掛けることも可能としていました。



3トップの連携から先制点

試合中断直前の18分、京都が先制点のシーンについてです。


スローインからの流れだったため少し下がりめのウタカにもCBがマークに付いていました。
そこで武富がCBの裏に斜めに走り込んでロングボールを引き出し、見事なポストプレーでウタカに繋げました。ウタカもそれを感じ取って落としたボールを受けれるように、さらにオーバーラップしてくる荻原に即座に展開できるようにポジショニングしていました。


狙っていた2トップ+1シャドーという3トップの関係性が存分に生かされた先制点だったと思います。

また右サイドに人とボールを集めスペースの空いた左サイドを突破力とクロスのある荻原が使うという形はキャンプからも見られた形なので、それが得点に結びついたとも言えるゴールでした。



大きかった先制点と第二試合に向けて

先制したものの、カウンターのピンチは過去2試合よりも圧倒的に多く、どちらかと言えば大宮ペースだったように思います。
大宮は球際の激しい京都に合わせてメンバーを組んできましたが、それでもなお自らの土俵で戦える上手さ、チームの狙いを再現する力や個々の能力の高さを感じました。

その中で奪った先制点がラストプレーとなり、ここから流れを持ってこようというタイミングでの中断になりましたが、裏を返せば先制後の戦い方をチームで再共有する時間を取れたと捉えることもできます。


結局試合中止となってしまい、3月24日(水)に続きから再開することが決定しました。特殊な状況でのプランを組まなくてはならず逆に難しくなると思われます。

①残り時間72分+アディショナルタイム
②0-1でリード
③メンバーが予め固定されている
④一時的に過密日程になるためチーム全体のマネジメントが必要

まず②に関しては0-0の気持ちで試合に臨むことができるかというモチベーション次第になってきます。そこで浮ついてしまうと相手に付け入る隙を与えてしまいます。


残りの3つに共通して言えるのが「体力面でのマネジメント」です。
残り時間を考えるといつもよりプレー強度を高く保ったまま試合をすることができます。しかし一時的に過密日程になる上メンバーも決まってますので、そのあたりの選手のケアや交代枠の使い方は大きなポイントでしょう。


前半19分までの戦いで見えたウィークポイントを最大限に突いたほうが勝ちになる試合です。リーグ戦の他のどの試合よりも対策が立てやすくなるため、相手の想定を上回るプレーが必要になります。


1番気になる点がハマりきらなかったプレッシングをどう改善するかだと思っています。

0-19分の中で相手にプレスを剥がされたシーン、プレッシャーをかけ切れず質の高いロングボールを蹴られたシーンが何度かありました。だからといって守備ブロックを組み、後ろで構えて相手を迎撃するような戦い方は絶対にしないと思います。


プレスをハメるために必要なことは以下の3点です。

①ハイプレスの質を高める
②プレス開始のタイミングを決める
③プレスで誘導するエリア・選手を決める

①のハイプレスとは、ボールを失ったあとのカウンタープレス(即時奪回)とは違って相手がボール保持している状態で前線からかけるプレスのことを指します。
これに関しては普段のトレーニングで行うべきことです。パスコースの消し方、寄せる角度、寄せる速さ、後ろの連動などなどです。

②が非常に重要です。
失った直後のカウンタープレスが機能しなかった(相手にボールを持たれた)場合、バックパスに対してプレスに行っていましたが、相手との距離が遠いタイミングでもプレスをかけており、結果的にスペースを空けただけになっていました。

カウンタープレスがハマらなかった時に、後ろに引いて構えるとまでは言いませんが、どのエリア・どの選手にボールが入った時に誰がプレスのスタート合図をかけるのか再度共有する必要があります。またその際のパスコースの切り方も併せて重要です。


③は前述のような質の高いロングボールを蹴られていたのを防ぐためです。
プレスをかけてサイドにボールを誘導してもそこで奪いきれなければ意味がありません。またプレスがかかり切るまでに頭上を越されるとピンチになります。

プロとはいえ得意不得意がありますので、極力ロングボールが得意でない選手に誘導してロングボールを蹴らせてマイボールにしたり、プレスをかけきってボール奪取からカウンターまでいきたいところです。




開幕から練度を上げること・連携を高めることをずっとやっているので―ビルドアップの部分は色々と思うところがありますがこの段階で着手するとも思えませんし―攻め方・守り方で大きく変えてくることはほとんど無いでしょう。

京都側のゲームプランとしてはプレスに細心の注意を払いつつインテンシティの高いゲーム展開に持ち込むことになると思います。
大宮も選手選考自体は京都に合わせていますが、ボールを持つ時間も作ろうとしていますので、そこで相手に合わせないように(ゆったりとボールを持たせないように)していきたいです。


さいごに

特殊な状況・条件での再開で難しくなると言いましたが、1点リードしてることと残り70分少々という試合時間は間違いなく京都にプラスに働くと思っています。


フラグを立てたくないので控えめにしますが、たとえ一点取られたとしても再び勝ち越しできるくらいの試合展開・試合内容になるのではないでしょうか。


昨季はダブル(シーズン2試合とも負け)を食らってるので、今季はやり返しましょう!


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