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2019第18節 京都サンガ×FC琉球

前回同様図解を作ろうと思ったのですが、今節の内容的にそういう感じではなかったので、文字が多めです。


6月15日(土)

明治安田生命J2リーグ 第18節
@西京極

京都サンガ 2-2 FC琉球
得点者:小屋松知哉(36分・京都)、鈴木孝司(45+3分・琉球戦)、一美和成(65分・京都)、河合秀人(80分・琉球)


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1)試合前プレビュー
2)試合展開及び雑感
3)J1に行くために
4)最後に

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1)試合前プレビュー

大宮線での敗戦を引きずってしまうのか、停滞気味の琉球を倒して上位戦線に踏みとどまれるのか、チームの精神力が問われる一戦。

試合の見どころに関してはツイッターで簡単にまとめているので、そちらからどうぞ。


琉球は全体を押し上げる時や、前線からのプレッシング→引いて守るリトリートの切り替えの時に中盤のラインががたがたで、簡単に立てパスや斜めのパス(中央から外へ、外から中央へ)が通りやすい。
縦に間延びしがちでスペースができやすいのだ。守備の連動性もイマイチでSBの裏のスペースを空けてしまうことが多い。(下図)


また横にゆさぶりをかけられてサイドにボールが渡ると、スライドがそこまで早くないためSBとCBの間にスペースができてしまう。(下図)

DF・MFのライン間、特にハーフスペースのところは対応が甘くなりがちなのでねらい目だ。

一方攻撃面では、SBが高い位置をとって厚みをもたらし、CH(特に上里)の縦パスをスイッチに人とボールを前に速く動かしてゴールに迫る。(下図)

選手同士の距離感を狭め、テンポの良いショートパスとドリブルからあらゆる局面でチャンスを作る。


確かに非常に驚異的な攻撃陣を擁するが、守備の穴が多いので京都がボール保持しチャンスを作る時間の方が長くなるだろう。京都の時間帯になるべく多く点を取り、最悪撃ち合いになっても勝ち切れるようにしたい。

琉球がボールを持った時は上里を警戒し、楽に縦パスを入れさせないことが重要だ。

横浜×琉球、琉球×金沢を見て、琉球のストロングポイントや弱点を把握したうえで、琉球は京都のクオリティを以てすれば倒せる、90%負けない試合だと思う。


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2)試合展開及び雑感

スタメンと狙い

京都は4123、琉球は4231と互いに従来のフォーメーション。

京都の守備はこちらを参考にしてほしい。

この数試合、大きく変えたところはなく、自分たちのベースをより洗練させて戦っている。


琉球はOH風間が前に出て442になる。この試合ではリトリートしてゾーンディフェンスを採用している。京都がGKまでボールを戻した時など低い位置でビルドアップするときのみ、CF鈴木を起点にOH、SHがプレスをかけてくる。(下図)

前線の二人は、庄司をマンマークというよりはCBから縦に通させない・CB前に運ばせないような守り方である。全体的に引き気味で、ボールポゼッションする京都に対して慎重に試合に入ろうとしているように見受けられた。

前半の試合展開

素晴らしい立ち上がり

わずか5:32までの間に、琉球の守備の穴をついた京都が決定機を3度作る。

0:40~
少し下がって本多からボールを受けた小屋松が重廣とのワンツーでサイドを突破し決定機を作ったシーン。(下図)

小屋松の動きに右SB西岡が遅れて対応したためSBの裏のスペースができた。右CB増谷がカバーしようとするも小屋松が振り切り、左サイドから中央へ折り返すラストパスを供給。

ここで一つ苦言を呈したい。

「この形を何度作ればゴールに結びつくのか」

左サイドで小屋松が仕掛けるも中であわないというのは何度も見てきた。チャンスクリエイトとしては素晴らしいのだが、そろそろこの流れで決めれるようにならないといけないのでは?

パスの精度、出すタイミング、フィニッシャーの走りこむタイミング、シュートの精度・・・いい加減に上げてほしい。


2:12~
安藤→福岡の縦パスがあわず。こぼれ球を仙頭が拾いすかさずスペースのある右ハーフレーンに斜めに侵入。一美と福岡にマークが分散されたことでノンプレッシャーで中央まで運ぶ。左ハーフレーンまで運び重廣に縦パス。重廣の素晴らしいターンから最後は小屋松。

横パスで揺さぶりをかけ、右ハーフレーンでフリーになっていた福岡の縦パスがとてもよかった。また仙頭がうまくコースをとって中央にドリブルしていけたのもグッド。

逆に琉球はハーフレーンやライン間の選手に対するアプローチの脆弱さがいきなり露呈した。

5:32~
石櫃が左CH上里と左SH富所を引き付けてハーフレーンの福岡に。大外で仙頭が左SB徳元を、中央で一美が両CBの視野に入り対応に行けなくする。
福岡がハーフレーンからゴール方向に斜めにドリブル。最後は一美のポスト直撃シュート。

ここでも琉球はボールホルダーへの寄せの遅さとハーフレーンの選手への対応の甘さが出ていた。

京都は序盤からスカウティング通りにチャンスを作りシュートまで持っていけたと言えるだろう。


相手を横に揺さぶった時に、特に右サイドはSHとSBの距離が遠くパスが通りやすくなっていた。実際庄司から仙頭へのパスが度々通っており、相手のウィークポイントを突いていた形が見られた。


前半、特に輝いていたのは福岡だ。
ハーフレーン、DF・MFのライン間にポジションを取ってパスを引き出したり、DFラインの背後を狙う動きを何度も見せていた。
左の小屋松が執拗に警戒されているので、そこからチャンスを作れたのは彼のおかげだろう。


琉球の対応〜

10分頃から、琉球は守備ブロックを4141に変更する。

中盤の枚数を増やして全体を縦にコンパクトにすることで中央のスペースをなくし、ハーフレーンを使わせないようにするためである。
また京都の低い位置でのビルドアップにCF鈴木を起点にプレスをかけてきた。(下図)

これによって京都はMFのライン、2ndディフェンスを突破することが困難になり、先制点まではボール保持する展開が続いた。
完全に崩せたのも24:20〜くらいだろう。
CFの鈴木、OHの風間を守備に忙殺させることができており、危険なカウンターを食らう場面もほとんどなかったことから、この時間帯に関して大きな問題はないだろう。

●ハマった先制点、不要な失点

先制点はGK石井からの中途半端な浮き玉のパスである。
パスの受け手になる所で庄司と小屋松がプレスでハメて2人で潰し、小屋松がそのままゴールまで(1度仙頭にパスを出すが防がれ、結果として良いポストプレーになっていた)。


1度は停滞した時間があったものの、少なくとも1-0で前半を終えることが必要であった

前半アディショナルタイムにもなると相手の攻撃を遅らせたりボールを外に出したりするなど、極力時間を稼ぐのがベターな選択だ。

しかし自陣左サイドでの不用意なファールでFKを献上。
ゴール前で左SB福井(前半15分徳元と交代)をフリーにしてしまい、最後はCF鈴木に同点弾を叩き込まれる。

時間の使い方とセットプレーの対応に問題が出ていた。

ちなみに、後半のセットプレーでも相手をフリーにしてしまったり、飛び込んでくる選手を捕まえきれなかったりと、この試合だけで少なくとも3回はセットプレーの弱点を晒している。


後半

●オープンな立ち上がりから主導権を握る

前半終了間際から後半立ち上がりにかけて、最終ラインの重心が低めである一方前線から積極的にプレスをかけてしまいコンパクトさが失われていた。
プレスがある程度ハマっており琉球に楽にプレーさせてなかったので大きな問題になってなかったが、後の試合展開に影響を及ぼしそうである。

それでもなおボールポゼッションからチャンスを作ったのは京都だった。

・50:56〜 石櫃、仙頭、福岡で右サイドを崩して一美の決定機
・54:45〜小屋松がドリブルで中央に侵入して、福岡や重廣の飛び出しからシュートはサイドネットへ

ドリブルやスルーパスだけでなく石櫃のクロスなど攻撃にバリエーションを持たせたがゴールネットを揺らすことは出来ず。

●不穏な空気感

55分すぎたあたりから、前半同様に京都のボールポゼッションが長くなり、琉球がカウンターを狙う展開になってきた。
カウンターをくらった際も最終ラインが丁寧に対応し、中盤の素早い戻りもあって琉球にほとんどチャンスを与えることなく守ることが出来ていた。
そんな中、

62:48〜 琉球のカウンターを右サイドで石櫃、仙頭、庄司らが対応し、左サイドに中途半端なパスが出たところを小屋松がカット。重廣が運んで最後は一美がPKをゲット。それを一美自ら沈めて、京都が勝ち越しに成功。

仙頭は相手を執拗に追い回し、早く絶妙な距離感の寄せでボールを後ろへと下げさせていた。その間に重廣や小屋松の戻る時間が出来た。

仙頭のこの守備貢献は試合をおう毎に高くなっている。



我慢に我慢を重ねて得点したということ、それまでにチャンスを作れていたこと、プレッシングが良い感じに相手を苦しめチャンスを作られていないことなどから、勝ち越し点を奪ったあとも前から果敢に行くようになる。

一方最終ラインは、勝ち越したこと、前半に鈴木に1発やられていること、カウンターのリスクマネジメント、ロングボールを蹴られることなどからやや後ろ重心になってしまった。


ここで前と後ろの意識にギャップが生まれ、徐々に間延びが目立つようになる。また琉球がプレスをかけてくるとロングボールを蹴らざるを得なくなり、必然的に間延びしてくるようになる。

70分あたりから全体が縦に間延びしスペースが多い状態、いわゆるオープンな展開を得意とする琉球にしてみればおいしい試合展開になってきたのだ。

京都は74分、FKのピンチになった所で闘莉王を投入しフォーメーションを3421に変更。

逃げ切るということがメインではなく、今日なんかは本当に気持ちがこもっていない印象だったので。そのあたりで闘莉王は、チーム全体に戦う気持ちというか、しっかりやり切る気持ちを伝えてくれるので、そこを一番期待して送り出しました。』(中田監督)


全体的に危うい空気が漂っており、見るからに選手間にギャップがあったので、全体を引き締めて残り時間戦おうというメッセージだろう。

このあと少し落ち着いたかに見えたところで失点。

78:40〜 琉球の最終ラインでのビルドアップに対して前の3人で数的同数でプレッシャーをかける。GKに大きく蹴らせたところ、京都は陣形が崩れてしまい、右サイドからカウンターを受け、河合に沈められた。


河合と富所のワンツーとシュートが素晴らしいのはもちろんだが、鈴木と富所に引っ張られゴール前をやすやすと空けてしまったことは反省材料だ。

それ以前にもGKまで深追いする必要はあったのか、本当にリスクマネジメントはできていたかなど見返すポイントはいくつかあるだろう。


試合終盤、闘莉王が機を見て前線に上がってくるところ、彼自身の判断に加えて選手がそれをどう使っていくかが大宮戦・琉球戦を通してかなり形になってきたのかなと思うので、そういった点は良かったのではないだろうか。


◇雑感

トータルで見ると悪い試合には見えないのだが、得点の時間帯や前後の距離感、時間の使い方、セットプレーの対応など細かい部分を見ると課題だらけで、非常に勿体ない試合だった。

時間帯やスコアを考えた時にどこまでプレスをかけに行くのか・どこまでなら相手にボールを持たせた良いのかなどと言ったことが、試合を通して選手間で共有出来ているのか・判断できているのかが浮き彫りになったと思う。

ベンチを見ても、攻撃的な選手が多くて動きにくさもあったかもしれない。

ベンチやベンチ外の選手批判、ベンチワークに問題があるという監督批判ではなく(半分批判かもしれないが)、チームとして試合コントロールの面で未熟さが出たなという印象だ。


もちろん、決めれるところで決めていれば楽な展開になっただろうし、最悪撃ち合いになっても勝てただろう。
しかし決める決めないの話だけではチームの成長はないのでこれを糧にするしかない。

とはいえ勝てば自動昇格圏との差が縮まっただけに、授業料の高いドロー決着だったと思う。


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3)J1に行くために

◇チームとして

基礎作りの開幕10試合、1歩先に進んでからの7戦負けなしと、ここまでは非常に順調だった。

先日サンガタウンにて、大宮戦について中田監督に聞きたいことがあったので思い切って質問をぶつけてみると、とても誠実に答えてくださった。

その中で『上手くいきすぎてた部分がある。自信がついてきたのは良いが過信しすぎたかな。』という話があった。


という監督のツイートにもあるようにこの先に立ちはだかるのは見えない敵である。ここから先に進むには、自分たちの課題に自分たちで気づいて、それを少しずつ解決していくしかない。


ネットリテラシー上ここに多くを書くわけにはいかないが「監督は何が課題でどうすればチームが良い方向に向くか、そのために何が必要か分かってらっしゃる」と僕は感じた、ということだけはお伝えしておきたい。

ここから数試合、もしかしたら厳しくなるかもしれないし、一気によくなるかもしれない。
一つだけ言えるのは、とりあえず耐える覚悟はしといた方が良いかもしれないということ。

◇サポーターとして

山形戦ではチーム作りの初期段階とはいえコテンパンにやられてブーイングが飛んだ
7戦負け無しで挑んだ大宮戦後、私は現地にいなかったがブーイングはなかったと聞く。

そしてこの琉球戦。2点取った一方で2度のリードを守りきれず引き分け。

ここでは失点直後、試合終了のホイッスルを聞いた直後の悔しがる姿とは裏腹に「評価に困るけど負けなかったしなぁ…」というやんわりとした雰囲気のサポーターの拍手。


『この差はなんだ?!』


僕はそもそも試合内容に不満があったので『もっとこだわってやろうぜ、絶対できるから、上行こう、がんばれ!』と、とりあえず叱咤激励がしたいと思って声をかけた。

が、ゴール裏の雰囲気はというと『この内容で引き分けは不満やし悔しいけどまあしゃあないな、シーズン長いしこんな時もあるわ』みたいな。

悔しい悔しい言うくせにその拍手かい!と。


応援の仕方とか、ブーイングがどうとか、拍手がどうとか、それぞれのポリシーがあってやってるのはよく分かってるつもりなので、そこに関しては何も言わないが。


それにしても、いつもならもっといろんな声が飛び交うのにこの日は少なかったなあと感じた。
ここまで上手くいってるからこらえる気持ちはわかるけれど、『もっとできるだろ!がんばれよ!』っていう声がほとんどなかったのは残念やなあと思った。

聞こえてないだけやったらごめんなさい。


あの内容にブーイングは違うとしても、『俺らは不満やぞ悔しいぞ、不甲斐ない試合やったっていうの分かってるぞ』と意思を伝える意味でも、チームを叱咤激励する意味でも、せめて『こんなもんじゃないやろ!』という声があったほうが健全だと思う。

監督や選手を信頼してるからこそできるポジティブな声掛けを。

J1に行くために、もっと上を目指すために、サポーターはクラブを信じてるしもっとできるのを知ってるから頑張ろうぜっていう意思表示をしていきたい。


良いチーム、良い状態だからこそできる議論もあるので、サポーター同士でぶつかることを躊躇わず、これをお互いのことを知るきっかけにできればと思っている。


サポーターには人種も性別も年齢も社会的地位も、全てにおいて優劣がなく対等だと思うので、ガシガシやりあうのも悪くない。


ただあんまり過激な言動や、キツい監督選手批判は程々にしようね。


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4)最後に

3)のサポーターについてのところは、試合直後に書いた駄文を消して、マイルドに書き直している。


先日サンガタウンに行って監督に質問をぶつけたと書いたが、一サポーターの愚問に、貴重な時間を割いて、1の質問に10の答えをしてくださった。
チームの内情や細かい戦術を暴露するだとか、そういうことはもちろんないのだが、答えられる範囲でとても丁寧に僕の疑問を解決していただいた。
非常に誠実で聡明な監督だということを再認識した。

この監督ならついていける、その思いが益々強くなった。


宣伝じゃないけれど、監督に物申したいとか聞きたいことがあるとか情熱をぶつけたいという方はサンガタウンで直接言ってみてはどうだろうか。

時間が許す限り一人一人に向き合ってくださる良い監督なので。


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