食べづらい食べ物は、こっちが慣れるしかない
『食べやすさ』ってあると思う。
日本でいったら、寿司をつまんで食べる、とか、サンドイッチも、ちゃんとパクッと食べられる高さにおさめる、とか、そういうこと。
そういう概念が薄いんじゃないかな、カナダ。
日本でも、エッグベネディクトがはやってるみたいだけど、あれなんかも、食べる前の見た目はいいけど、柔らかい半熟卵はいいとして、ベーコンはナイフで切るには固いし、卵を吸い込んだイングリッシュマフィンも、これまた微妙に切り分けにくい。
そして格闘しているうちに、ソースと流れ出た卵とで、皿の上がぐちゃぐちゃになって、若干ブルーになる。
まあ、「そういう食べ物なんだから、気にすんな」って話なのかもしれないけど。
こういうの、他にもあって、前に勤めてた会社の近くのサンドイッチ屋さんの『PORCHETTA(ポルケッタ)サンドイッチ』がそうだった。
なんか、上下にスライスした長めのコッペパンに、2センチ角くらいにカットしたロースト豚肉を敷き詰めて、そこに豚の皮をカリカリにしたものを振りかける。その上に、たぶんバジル系だと思う緑色のソースをまぶして、上側のパンでキュッと蓋をして出来上がり、というサンドイッチ。
サンドイッチって、中身はなんであれ、とりあえずスライスした柔らかい何かを挟むもんだと思ってたのに、まさかのコロコロとカリカリを挟んだサンドイッチ。
うん……食べづらい。
サンドイッチの両脇をしっかり握っていても、隙間からボロボロ中身が落っこちる。
味はまあ、お肉がジューシーで、カリカリがアクセントになって、ソースもバジルがきいてて確かに美味しい。
美味しいんだけどさ。
このお店、他にもミートボールサンドイッチってものがあって、たっぷりのソースに浸かった、でかいミートボールが、丸のまま、ドン、ドン、ドン、って入ってる。
またも、食べづらい。
しかも、ミートボールが敷き詰めてあるわけじゃないから、ミートボールとミートボールの間の『何も挟まれてない空間』ができるわけで。
なんかもっとあるじゃん、やりようが。
食べづらいといえば、洋食の代表選手のハンバーガーだって、ちょっとお高いやつだと、「これ食べたら、間違いなく顎が外れる」って思うような高さのやつがある。
結婚してる時、そういうハンバーガーに当たって、旦那(当時)に、
「この高さ、どうやっても食べるの無理じゃない?」
といったら、
「え、なんで? こうするんだよ」
といって、おもむろにそのお高いハンバーガーを両手で挟んで潰した。
あああ、パンのフワフワ感がっ!
もうね、またも越えられない壁を感じた瞬間だった。
そして、私にとって、食べづらい食べ物の究極は『スモア』で間違いない。
それはカナダで知らない人はいないスイーツ。
正式な(?)スモアの作り方は、
まずキャンプ場とかで火をおこして『焚き火』を用意する。
そしてマシュマロを、60cmくらいの先が三又に分かれているステンレス製の串の先端に、ぶち刺す。
焚き火にマシュマロを近づけ、遠火で四方八方、いいあんばいに焦げ目をつけていく。
この時、近づけすぎると、あっという間に真っ黒になるので、その場合は新しいマシュマロでやりなおす。
そしてマシュマロは熱されると、外はカリカリ、内側はとろとろになるので、串からずり落ちやすくなり、結果、せっかくのマシュマロが地面に落下するという事がまま発生する。
その場合、新たなマシュマロで再挑戦しなければならない。
いよいよ、いい感じに焦げたマシュマロができたら、つぶさないように気をつけつつ、串からそっと外す。
グラハムクラッカーにチョコレートのかけらをのせるか、チョコクリームを塗って、
クラッカー→チョコ→マシュマロ→チョコ→クラッカー
の順で積み上げて、できあがり。
で、食べようとすると、柔らかくなったチョコと、これまた、熱でとろとろになったマシュマロを硬いクラッカーで挟んでいるので、噛んだ瞬間、中身がだだ漏れする。
しかも、熱されたマシュマロは、指や、ほっぺたに、べっとべとにくっつく。
そして味は……『激甘』だ。
『甘すぎない』を良しとする人は、うかつに手を出してはいけない。
それにしても、やっぱり『箸』と『ナイフ、フォーク』の文化の違いなんだろうか。
口元に、ソースがくっつこうが、すぐナプキンで拭くからOK。
中身が落ちても、皿が受け止めるか、地面に落ちるだけだからOK。
ってことなのかな。
あ、でも、日本だって、豆腐とか、ところてんとか、納豆とか食べづらいか。
でも、これは『素材』であって、料理ってわけじゃないな。
まあ、いずれにしても、この際、料理の見た目が多少悪くなるのは、そんなに気にしなくていい、ってことなんだろう。