Kiramune presents リーディングライブ「カラーズ」

子供の頃から普通にアニメを見ていたが、ここ2年ほど”声優”に非常に興味を持つようになった。
元々は友人たちの影響で、話を聞く中でなんとなく頭の中に声優さんの名前が入り、覚えた。
深夜アニメを見ていて、キャストを調べると結構な頻度で目にするひとが居るなぁとか
あのキャラクターもこのひとだったのかとか
そういった事の繰り返しで顔と名前が何人も一致していった。

そうすると次は、そのひとの声での表現・芝居に興味が移った。

たった一言でも、キャラクターによって演じるひとによって言い方、声のトーン、語尾の抜き方、様々な要素で印象がガラリとかわり、時には「こういう表現の仕方があったんだ…!」と驚く事も増えた。
(この辺、よく驚いたのは三木さん・神谷さん)

声優、というのはイメージする通り、「声による芝居」をする方たち。
キャラクターがあって、その声帯となり表現し命を吹き込む方たちである。
そんな声優さんたちの芝居する姿を見られるひとつが、Kiramuneのリーディングライブ(朗読劇)。
普段なかなか見る事ができない姿を見る事ができる。
これは一度は体験してみたい!と思い、一昨年の10月、初めてライブビューイングで観劇した。
それは「パンプキンファームの宇宙人」という演目で、吉野裕行さんがカタコトの宇宙人をいくつもの声色を瞬時に使い分けて演じ、目をひんむくほど驚いたことを今でも鮮明に覚えている。
やはり声優さんとは役者である、と頭を殴られたような衝撃を覚えた。

昨年は神谷さん原案の「Be-Leave」。
冒頭、マンションのエレベーターで次々と住人があらわれ、部屋へ出入りする様子が繰り返される。
観客は「どういうことだ??」と考えながらもストーリーは進み、後にそれはひとりの中に住まう様々な人格が入れ替わる様子であるということが分かる。
複雑な人格たちと、その統合を試みる医師との苦悩と葛藤を描いた物語だった。

■「カラーズ」 
 そして今年は「カラーズ」。
親友灰原を失った緑川がその死を不審に思い、死に関与した黒部に騙されつつもひょんなことから義賊的詐欺集団カラーズのメンバーとなり復讐するというストーリー。
今年のBチームキャストは
「井上和彦/江口拓也/岡本信彦/神谷浩史/木村良平/三木眞一郎」(公式サイトより引用ママ)
というラインナップでとんでもなく豪華なゲスト(井上和彦さん/三木眞一郎さん)を迎えており、カーテンコールではそのチケット応募総数が1万数千件を超えていたと明かされ、会場中がどよめいた。
※会場の舞浜アンフィシアターの席数は2,170

“足”の表現に出るキャラクターのちがい
緑川(木村さん)が親友の不審死を警察に相談するも門前払をくらうがそこで警察である黒部(三木さん)が個人的に接触し、ふたりでの長いやりとりのシーンが冒頭の見せ場。
喫茶店で話し込むふたりがそれぞれ掛けた席はテーブルと椅子がくっついており、話のテンポや内容によりアンサンブルがそれを移動させ、ふたりの心情をみせるような構成だった。

緑川はどことなく頼りなさげにおろおろしていて、揃えた膝はキュッと曲げられ、椅子の脚どうしを繋ぐ細いパイプに両足の裏をつけており、いささか緊張気味の雰囲気がよく出ている。
それに対し、警察でありながらも悪党である黒部は長い脚をテーブルの下へ投げ出し、足首あたりで軽く組んでいる。
キャラクターの明確な違いがそれぞれの足に出ていることに気付いた時には思わず「おお」と唸った。

白澤
しばらくのやりとりのあと、OPシーンとして音楽をバックに各キャラクターの名前と出演者の紹介があり、そこでもうひとりのゲスト井上和彦さんが登場。
登場した瞬間に空気が一変するようなベテランの貫禄に見ているこちらもドキリとした瞬間だった。

井上さん演じる白澤は灰原の父であり、カラーズのボスであり、詐欺師。
ドリームキャッチャーというプログラムを開発した息子・灰原が黒部によって殺され、カラーズもまた黒部への復讐を考えている。
白澤は余裕のある雰囲気で決して乱暴に怒鳴ったりなどはしないが、感情に流されず顔にも出さない。
時折見せる乾いた笑いにはゾクッとするほどの静かな迫力があった。

青柳と黒部
青柳は黒部にかつての恋人を殺され、その復讐に燃えており、計画の途中で黒部に「なぜ金が欲しいのか」と尋ねる。
すると黒部は「物欲はない。金で人が落ちていくのを見る事が楽しい」と答えた。
その時、黒部はいきいきと若干興奮気味に語っているものの、“そんな個人的な醜い欲のために恋人は殺されたのか”と青柳の表情はみるみるうちに怒りと呆れとどこか蔑むような憐れみに染まり、温度差が一気に広がる様が勢いよく伝わってきた。
こういった感情を爆発させる演技の神谷さんは凄まじい。

物語の終結と巻き込まれる観客たち
大先輩を巻き込んだアドリブパートが終わり、物語はクライマックスへ。
大量の個人情報をもとに多くの人の預金を奪った黒部をおびきだし、観客を被害者と見立てた演出で大金(ドル紙幣のようなもの)を会場中にばらまき被害者へ返還。
その様子は大々的に中継され、黒部は逮捕されることに。

ばらまかれた紙幣(のようなもの)を掴もうと観客は手を伸ばし、落ちたものは拾おうとする。
ライブビューイングでは俯瞰で見るその様子が妙にリアリティを増幅させ、観客たちがまるで本物の被害者たちに見えてくるのだ。
これは観客の行動を読んでの演出だったのかと思えるほど見事で、客席をも巻き込んでひとつのストーリーが組み立てられていた。

結局最後にはカラーズの面々は白澤に騙され、白澤はまんまと行方をくらます。
必ず追いつき捕まえてやろうと次のターゲットへ向け、青柳をリーダーにカラーズは再始動するのであった。
(個人的にはこの展開により、白澤が灰原の父であるということが怪しくなった気がしている。
結局白澤も詐欺師なので、これはチャンスだとカラーズメンバーを裏切った可能性もある)

カーテンコール
 毎年、カーテンコールの挨拶で神谷さんはこう話す。
「来年もあるか分かりませんが、またできたら。引き続き応援宜しくお願い致します」
舞台に立てることが当たり前ではないこと、観客が時間とお金を割いて来てくれることが当たり前ではないこと、それをしっかりと忘れずに真摯に取り組まれているのだと思うとこちらも身の引き締まる思いだ。
そんな役者のみなさんが素晴らしい時間を提供してくださることに観客である私たちも感謝せねばならないなと思うし、次回があるのならまた是非観劇したい。

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