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個別株運用の心構え。

買いたい時が買い時?

 個別株の運用で最も難しいのは売買であることに異論はないだろう。買い注文ひとつ取っても、年初来安値や上場来安値などの目安をある程度参考にして、高値づかみを避けたり、恐怖指数を参考に誰も買いたがらないタイミングで買いを入れるなど、周囲が株式を欲しがらない時期に買うのは、安値で仕込める可能性が高いものの、隠れたリスクを見落としているのではないかと疑心暗鬼になり、勇気がいる。

 とは言え、トマ・ピケティさんが証明したr>gの不等式からも分かるように、経済成長のスピードよりも、金融資本の増殖スピードの方が早く、株価は長期的に右肩上がりを続けてきた。

 これからも成長し続ける保証はどこにもないが、現在既に高値圏だと思って買わずにいた銘柄が、時間を追う毎に高値更新して手が出せなくなっていたなんてことも往々にしてある。

 私は2021年5月に「コンテナ物語」を読んだことで、ITとコンテナの存在が、疫病以前のグローバル経済やサプライチェーンの鍵を握っていたことに気付き、そのポテンシャルの高さから日本郵船(9101)や商船三井(9104)と言った海運銘柄に目をつけていたが、配当がショボくチャートから既に高値圏だと判断して保有せずに様子を見ていた。その後、日本郵船(9101)の超増配発表を皮切りに株価がどうなったかは、チャートを確認して頂ければ、私が感じた悔しさを理解して頂けると思う。

 この時の教訓は一概に株価水準で高値だと思っても、買いたいと思った時が買い時な場合もあるから、チャートに惑わされず、自分ルールで適格だと判断したら買えば良いと学んだ。

頻繁な売買は手数料負けする。

 自分の価値観や運用方針に沿ったルールを設けて、売買を実行することは、判断基準を他人に委ねない意味で、個人投資家に必須な素養と言える。

 とは言え、1事業年度内の短期的な売買に限っては、株式と言えどゼロサムゲームでしかなく、無闇矢鱈に売買していては証券会社の手数料の分だけマイナスとなってしまう。そのため、売買は必要最小限に留めるのが賢い運用となるのが大枠の考えとしてある。

 理想は日頃からネット証券で手数料が掛からない範囲(50万円〜100万円/日)でコツコツ買い注文を入れて、生涯保有を前提として売らないことであるが、実際に運用してみるとなかなか難しいのが現実である。

 私は生涯保有を前提でバリューな高配当銘柄を集める傾向があるものの、価値が見直されてもはや高配当ではなくなってしまった時に、売りに出して、同じ価格帯の高配当銘柄に鞍替えするか相当迷うし、過去に投資適格と判断して買った銘柄の前提条件が崩れることもある。

 高配当目当てで買ったのに減配又は無配となった。連続増配株だから買ったのに増配が止まった。優待銘柄だから買ったのに廃止になった。それ以外にも、昨今の疫病や戦争でこれまでのグローバル経済の根底がひっくり返り、今の事業内容では時代の変化に適合できないことが明白な場合もある。

 そのような時、如何に塩漬けで資金効率を悪化させないか、利益を相殺しないためにひとつの銘柄に固着せず、即断即決で損切りできるかが重要だったりする。

 私が日本株を個別で買う場合、3,800社超の中から選んで買い注文に至ったのだから、「その決め手を一言で言うなら?」と自問自答して、買いに至った前提条件が崩れた場合は、チャートがどんな状態であっても、売り時だと判断している。

 反対に、長期投資の宿命とも言える大暴落や恐慌に巻き込まれた際、どれほどの含み損を抱えていようが、決め手となった魅力が健在ならば、決して売らずに資金が許す限り買い増すように心掛けている。

 株式の本質は、出資者の権利を細分化したものであり、株価は個人、機関、海外からの様々な投資家の思惑が血みどろに混ざりあい、直近で売買が成立した単なる均衡点でしかない。だからこそ、自分の軸で運用できるようになることが、余計な売買を防止する上で役立つのである。

長期保有のインセンティブを作る。

 そうは言っても、投資初心者で経済や会計の知識が不足していると、自分の軸なんてものが確立できていないのだから、具体的にどうすれば良いのか分からないのが正直なところだろう。

 そんな方には、長期で保有した方が得だと思えるような銘柄を選定すると良いだろう。連続増配株であったり、長期保有優遇がある優待銘柄が相当する。特に、3年以上や5年以上保有時に株主優待がアップグレードする銘柄であれば、暴落時に狼狽売りしてしまうと、保有期間がリセットされてしまうことから、極力売りたくないと思う筈である。

 実際に私も株価が上がりすぎてもはや高配当ではなくなっているKDDI(9433)や、優待廃止が発表されたオリックス(8591)の長期保有者で優待がアップグレードされているため、かつての日本航空のような、上場廃止の可能性が出てくるほど重大な事態でもない限りは、積極的に手放そうとは思えず、高配当ポートフォリオの足を引っ張っているのが玉に瑕である。

 結果として無駄に売買して手数料負けすることなく、企業の成長の果実を享受しているのだから、配当に目が眩んでバリュートラップの罠銘柄を掴まないための保険だと考えれば、多少利回りが低くても緩く持ち続けているのも悪くないと考える今日このごろである。


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