スーパーのチラシが面白い

 私はいま一人暮らしをしている。人間が生活するには衣食住の三点を揃えることが必須だとは言われているが、一人暮らしをする際に話題に上がるのは食に関することだろう。


 私が今住んでいる部屋の周りには、10分も歩けばいくつも飲食店が存在するから、その気になれば外食で三食を賄うこともできる。しかしそれは経済的にも健康的にもよろしくない。そういうわけで自炊をしている。まあ自炊といっても大した料理はできないわけで、ほとんどの場合「豚バラと玉ねぎともやしを炒めて醤油で味付けしたもの丼」に落ち着くのがほとんどだが。

 そんな生活のなか、行きつけのスーパーが改装のために2週間ほど閉店となった。冷蔵庫が寂しくなってきたら何も考えずにスーパーへ自転車を走らせていた私にとっては由々しき事態であった。幸いにもそう遠くないところに別のスーパーがいくつかあるので特別困るわけではないのだが、肉や野菜が一番安く手に入る店だったので私はほかの店に行ったことがなく、どれくらいの価格帯なのか情報があまりない状態だった。

 というわけでインターネット上でチラシを検索したわけだが、そこでふと「チラシ、面白いかも」と思った。小さいころ、母親がチラシを眺めているのを見て何が面白いんだかと思っていた(落ち着いて考えたら生活するうえで必要なことだから面白いとか関係ない気もする)が、今母親の気分が分かった気がする。

 「面白い」という言葉には「興味がある」という意味と「笑える」という意味があるが、私はこの2つの両方をスーパーのチラシから感じた。

 「興味」という意味では、レイアウトの工夫があげられるだろう。最近は寒くなってきたこともあって、鍋に使う具材を目立たせていることが気になった。他にも家庭で常備しておきたい調味料の安売りをしていればそれも主張の強い位置に配置してある。行動経済学という分野だったか、こうした人間に対する訴えかけの工夫を学問するのも面白いと感じた。

 「笑い」という面では色使いと字体がその要因である。安さを強調するために数字を大きく、赤・黄色の字にしているわけだが、「圧」で笑ってしまうのだ。「圧」で。パッとチラシを見たときにデカくて鮮やかな色の「198円」が飛び込んできたら思わず笑ってしまうだろう。理屈としてはにらめっこと同じだと思う。

 とまあこんな感じでスーパーのチラシの面白さを生誕19周年を目前にして初めて享受できた。生活に必要な情報・学問的な興味・エンタメ的な笑いの3拍子揃ったチラシをこれから心のどこかで応援したいと思う。

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