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紫陽花色のショール

「ただいまー。」
「お帰りー。」

梅雨空の今日、用事があって出かけていた こざるちゃんが戻ってきました。

「雨が降らなくて、良かったねー。」
「うん、ちょっと明るくなってきたよー。」
「ほんとだ、晴れるかなぁ?」

こざる達は、いつも わいわい賑やかです。

「あのね、帰りに病院の前の道を通ってきて、
そしたら、以前、りこちゃんが入院していた時に、同じように入院していた上品な おばあさんいたよね?たぶんあのおばあさんだと思うんだけど 見かけたんだ。」
「あの いつも 綺麗なショールをかけていた おばあさん?」
「うん、顔がよく見えなかったから、確かじゃないんだけど…。」

数年前、りこちゃんが入院していた時に、同じように入院していた りこちゃんと同い年くらいの おばあさん、
とてもお洒落で、いつも綺麗なショールをかけていました。

病室は違ったのですが、同じ階で、こざる達が休憩コーナーへ行くと、
ちょうど 車椅子に座って、看護師さんといるところを よく見かけていました。

「僕たち、じーっと 見ていたわけじゃないけれど、いつも無表情のような気がしていたんだ。」
「でもね、ある日、僕たちが自販機で飲み物を買っていて、ふと 少し離れたところにいた おばあさんを見たら、
僕たちを見ているような気がして、それで 笑顔で手を振ってみたんだよね。」
「そしたら、おばあさんも、ニコッてしたんだよ!」
皆、うんうん頷きます。

無表情に見えても、喋らなくても、感情はちゃんとあるのです。
表現しないだけであって、できないのかもしれませんが、
ちゃんと何かを思って、考えているのです。

そんな当たり前のことに 気がついた 嬉しい出来事でした。

「それでね、今、帰って来る時に、そのおばあさんらしき人が、車椅子に乗って病院に入って行くのを見かけたんだ。」

紫陽花色のショールをかけていました。

「元気で、そして笑って暮らしているといいな。」
皆、おばあさんの笑顔を思い出して、頷きます。

「じゃあ 僕たち、おやつにしようか?」
「うん!」
「りこちゃん、呼んでくるー!」

こざるちゃんがハミングしながら りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、おやつにしようよ! 今日は いちごのシュークリームだよ! 一緒に食べよう!」


こざるカフェは 今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
また気圧も下がっているようですので、どうぞご自愛ください。
よい毎日でありますように (^_^)

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