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三月になって

「何だか嬉しいねー。」
「うん、ほんと、よかったねー。」
「空もきれいな水色、春の空だよ。」
「空気も ふわっとしていて、春なんだ!」

世の中が急激に慌ただしくなっていますが、
普通に いつものように 時は進み、三月になりました。

「ぽかぽか 気持ちいいねー。」
「ピクニック日和だね!」

楽しそうに お喋りしながら、近くのスーパーから買い物当番のこざる二人組が帰ってくるところです。

「ぼく達、昨日の夕方も、ちょっと買い物に行ったんだ。」
「金曜日は行かなくて、そしたら、トイレットペーパーとかパンとか、食料品もどんどん売り切れてるって 聞いて…」
「台風が来る前じゃないし、そんなに食料品も 皆、たくさん買い込んでいるの?って不思議に思って…」
「それで、スーパーにちょっと覗きに行ったんだよ。」

すると パンは、かろうじて食パンが少し残っていましたが、ほぼ すっからかんでした。
あとは、台風の時ほどではありませんが、確かに いつもの金曜日よりは、少し在庫が少ないかな?というくらいでした。
けれども聞いた通り、トイレットペーパー、ティッシュの売り場は、きれいに何もありませんでした。

「ぼく達、木曜日の昼過ぎに、普通に買い物に行って、トイレットペーパーを買っておいて、本当によかったよ!」
「ドラッグストアも あちこちの棚が 綺麗に何もなくて、ぼく達、閉店セールかと思っちゃったんだ!」
二人とも、うんうん頷きます。

「それで、昨日は、別に焦って何か買うことないよねって話して…」
「だって スーパーに商品を入れる卸問屋やメーカーには在庫はあるんだから、また普通に入ってくるよって、それで帰ったんだ。」

前日に、買い物をしておいたからということもありますが、焦って別のお店に行くことはしませんでした。

「それで、今日、また同じスーパーへ行ったら、ちゃんとパンがたくさん、いつも通り棚に並んでいて…」
「そしたら、高齢のご夫婦が、嬉しそうに『あった、あった!』って話していて、ぼく達も嬉しくなっちゃったんだ!」

その高齢のご夫婦は、にこにこと嬉しそうに、どのパンにしようか?と話して、ゆっくりカゴに入れていました。

「でも、トイレットペーパーやティッシュは全くなかったんだ。」

申し訳なさそうに、キッチンタオルが少し置かれていて、仕方なく買っていく人もいました。

「おばあさんが 店員さんに トイレットペーパー、ないの?って聞いていたんだ。」
「だって、ぼく達が買いにきた木曜日の昼過ぎは、普通にあったのに。」
「まさか、デマで買い占めに走って、こんなことになるなんて!」
こざるちゃんが強い口調で言います。

想像でしかありませんが、やはり高齢の方々の方が、ネットからは遠ざかっていると思います。
情報を得るのも、それだけ遅いでしょう。

「マスコミの報道も、的確じゃないと思うんだ。」
「そうだよ、ワイドショーも、ニュースなのか、それとも ただの視聴率稼ぐ娯楽番組なのか、正しい情報を的確に伝えるっていうところからは外れていると思うね。」

正しい情報をわかりやすく伝えるというよりも、不安を煽るようなことばかり言っていて、
もっぱらラジオ専門の りこちゃんと こざる達は、あまり見ません。

「それでも こういう時だし、何か大事なこと言うかも?って見ていても、何だか胡散臭くて….」
「喋っている人たちの話し方が、まるでドラマのようで、わざと ああいう話し方をしているのかなぁ。」
「そう、演技しているみたいなんだよね。」

それで これは見ていても意味がないと テレビを消します。

「そもそも 記者の大原則って、事実をそのまま伝えることだよ!」
こざるちゃんが きっぱりと言います。

そうです。
感情は入れずに、事実をそのまま伝えることです。

「当たり前のことだけど、ちゃんと自分で裏をとって、感情抜きで、事実をそのまま伝える、これが大原則なのにさ、
最近は そんな当たり前のこともしないで、ネットから情報を得て、それっぽく報道している感じで信用できないよ。」

二人とも怒って歩いていると、
「あ!」
「いい香り!」
「沈丁花だ!」
思わず にっこりして、二人とも 鼻から息を吸います。

「春だー。」

嬉しくなって、小走りになって、帰って来ました。

「ただいまー。」
「おかえりー。」
「りこちゃんに、沈丁花のいい香りがしたよって言ってくるー。」
こざるちゃんがスキップしながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
今、大事なのは、まず落ち着くことかもしれません。
よい毎日でありますように (^_^)



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