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ヒストリックライド遠乗り

2019年3月に「前原宿を感じる旅」と題して、今までやっていた前原宿散策ツアーと前原宿についての座学と、初めての試みで自転車ツアーというのを企画した。

街道ツアー2019

そもそも、この企画を思いついたのは、2017年のゴールデンウイークに、どこへも行くあてがなくて、子供たちと自転車でうろうろしたのがとても面白く、純粋にツアーとして企画してみたかったのが構想のはじまり。

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今まで、前原宿の中を歩いて散策する散策ツアーは何度もやっていたけれども、やっているうちに、もっと広範囲に見ることができればいいのにと思っていた。周辺を見ることによって前原宿の存在がより浮き出てくる、そんなツアーに自転車は有効だった。

自転車であれば、ある程度の範囲は回れるし、高低差のある地形も体感することができる。大河ドラマで見るような田んぼの真ん中を馬で進むという風景も体感できるし、なにより自転車のスピードが風景を見たり会話するのにちょうどよく、経験を共有できるのは自転車ならではだと考えていた。

ツアーの名前である「遠乗り」は、幕末に長崎海軍伝習所から福岡にやってきたオランダ海軍のカッテンディーケの日記から。福岡から馬に乗って太宰府天満宮を参詣しに行った時の記録に、「馬に乗って遠乗りに出かけた」とあり、これからタイトルである「遠乗り」と名付けた。

コースは、「前原宿を周辺から見る」というコンセプトで、町が成り立つ要因ともなった干拓地や、近くを流れる河川、周辺の村や海との関係などが見れるように組み立てた。回遊しながら風景を愉しむということで池泉回遊式庭園のようだと我ながら思った。

2019年3月24日(土)、風がまだ冷たい初春であった。まず、糸島市観光協会を出発し、前原宿にちょっと立ち寄り、それからかつて海だった雷山川河口部を経て加布里まで。その後、唐津街道を前原宿までトーレスして帰ってくるというもので、終了後に古材の森で食事をする2時間程度のコース。

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今回配布のマップは、得意の巻物で作成した。出発する前、是非やりたかった切符を切る。今回の参加券は切符を模した物を作り改札鋏を買っていたので、切符を切った。

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出発すると、まず前原宿を北へ下る。坂道なので、前原が台地上に位置している事が体験できる。そして、雷山川を渡り目の前に現れるのは可也山。これから自転車が進むに連れて、形を変えていく可也山を見ながらのツアーとなる。

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前原の北側に広がる広大な干拓地。その平野の中には新田いう集落があり、干拓の際にできた集落という事が村名でも分かる。干拓地から前原を見ると、かつて前原が海に突き出した台地上に作られていることが分かる。

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真っ直ぐな道。干拓地ならではの風景

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しばらく進むと雷山川河口部に出る。この部分は干拓を指揮した菅和泉守の名をとり泉川と呼ばれている。夏は黄色い花をつけるハマボウが有名だが、晩秋から冬にかけてハマボウの紅葉や渡鳥が見れて、ほとんど知られてないが、晩秋は穴場スポット。(写真は11月末の写真)

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ハート型をしたハマボウの葉っぱ。夏に黄色い花を咲かせるハマボウは秋になるとこんな哀愁漂う風景となる。

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川に沿って進むと波穏やかな加布里湾がいきなり現れる。干満によって広い干潟が現れ、春には漁師さん達がハマグリ漁をしている光景にも出会うことがある。

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自転車はそのまま加布里の港町へ。江戸時代に幕府領だった加布里には、当時の町割が残っている。明治期に創業された叶醤油に立ち寄り、甘酒を頂いたり、醤油や味噌などお土産を購入。


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漁港を突き当たって、海岸沿いも自転車で行けるようになっている。浜辺にある大きな石。加布里には八つの大きな石があるという伝説が残っている。

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加布里の海岸では、まるで広重か北斎の浮世絵を思わせるような風景に出会うこともある。

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浜辺を後にし、加布里天満宮へ。この神社では以前、山笠が行われていた。「博多写し」と呼ばれる博多の行事のコピーの1つで拝殿には山笠の絵馬が飾られていた。

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加布里天満宮から見た加布里湾。可也山や町並みも見れてとてもいい風景。

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加布里からは、国道202号線に沿って唐津街道を進む。唐津街道は途中、道が細くなる部分もあり、車では行けないけれど自転車であれば、かつて唐津藩の殿様も通った道をトレースすることができる。ツアーの途中に立ち寄る神社にとても興味深い彫物を見ることができる。干拓集落である岩本の西宮神社には鯛、田中の諏訪神社には鯉。おそらく同じ彫師が彫ったものなのだろう。

最後に、歩きではなく自転車を使った歴史散策ツアーは初めての試みだったが、15名以上を案内するバスツアーではなく、6名程度で機動力のあるツアーが、話を伝えたり共有するうえでは最適だと思った。また、進むにつれて宿場町から田園、河川、漁村、海、農村など様々な風景が転換していく様子は糸島ならではだと思った。来年春にはまた企画したいと思っている。





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