画像_6

フィジカルとサイバーが繋がるカメラ

様々な情報をデジタル化し、これまで中心であったフィジカル(物理的な)世界とサイバー(仮想的な)世界を、結び付けることで価値を最大化しようとする動きはカメラ業界にっとっても同じです。

そこにいち早く動いたのがキヤノンです。今のビジネスモデルは従来通りハードウェアを売ることに見えますが、ゲートウェイ(首根っこ)を押さえることで将来のビジネスに備えようしています。

キヤノンの事例からカメラ(ビジネス)の未来を覗いてみましょう。

ミラーレスカメラの本質

noteには何度も書いていますが、ミラーレスの本質は常に映像を撮り続けることとEVFや背面モニターによる撮影画像表示です。つまり撮影におけるカメラ自身の多情報活用とユーザーへの多情報提供による撮影体験の高度化にあります。

この高度情報化をうまく使うことで、より多くの写真を撮らせたり、新しい機材が欲しくさせ、それをビジネスにつなげていくことができる仕組みになっています。

その代表が顔・瞳認識をはじめとする被写体認識AFで、ストレスなくどんどん撮れ、これまでアマチュアでは難しかった明るい望遠レンズでもフォーカスが合わせられるようになり高価なレンズが売れる状況を作り出しています。

このような情報化を実現するために、フィジカルなカメラとサイバーのクラウドに接続するサービスを展開し、ユーザーとメーカーを結び付けることが必要です。

ミラーレスへの流れを、「ミラーボックスが無くなりカメラが小型化して機動力が上がる」というような単純な視点で考えていると見誤ることになってしまいます。

キヤノンが整いました。

キヤノンから新しい写真データのためのゲートウェイサービスが2020年の4月から開始するというアナウンスがありました。フルサイズミラーレスのための新しいマウントを作るだけでなく、その裏で動く情報環境も同時に作り出しています。

「image.canon」はアーカイブ目的でも、SNSへのシェア目的でも、カメラからシームレスにデータハンドリングが可能なようです。

大量の画像の扱いや複数カメラでの撮影など、手間のかかるデータハンドリングはユーザーのモチベーションを下げる要因になりかねません。それを排除する環境を提供し「写真疲れ」をおこさせないようにすることが狙いです。

また、これよりも前に「fotomoti」というフォトレシピ(撮影ノウハウ)共有サービスも開始しており、こちらはコミュニティーから撮影ノウハウをカメラに取り込む方向のサービスとなっています。

キヤノンは、画像データの「image.canon」と撮影ノウハウの「fotomoti」によって、デジカメUXのエコシステムを構成し、その中にカメラ、レンズ、プリンタービジネスを展開しようということが明確になってきました。

このようなアイデア自体は20年近く前からありましたが、5Gやスマホという環境が整ったことでようやく実現できるようになりました。カメラをIoT機器として扱うためには、必ず整えなければならない環境ですので、他社の動向も注目していきたいと思います。

自動撮影デバイス

サイバー世界だけでなく、カメラをフィジカルにコントロールするための環境もしっかり準備されています。

15年ほど前にソニーから発売されていた「パーティーショット」のプロ版といったものですが、小型化されれば赤道儀からパノラマ撮影まで応用が利きますので、今後の展開に期待したいと思います。

画像処理やフォーカスや、シャッター(ドライブ)に関わることであればカメラ内で対応できますが、カメラがもっとフィジカルに動けるようになるためには、このような身体が必要です。5年から10年後にはこれらの技術の有無がメーカーの立場を大きく変えてしまうかもしれません。

画像はキヤノンのニュースリリースより

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?