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Webカメラになったカメラの話

3月末を境に緊急事態宣言へと向かう中、十分な準備もできずに在宅勤務を余儀なくされた方が沢山いました。私もその中の一人として当初は通信環境が貧弱で大変困りました。

世の中で困ったことの一つとして、Webカメラの不足、または手元に無いというものがありました。そのためそれを補うために出てきたのが、スマートフォンをPC用のWebカメラにするアプリと、デジカメをWebカメラにするという方法でした。

この2つは単なるWebカメラ不足をカバーするだけでなく「画質」が通常のWebカメラよりも良いということで注目されることになりました。

スマホのカメラがここ2年ほどで飛躍的に画質を向上していることは周知のことですが、この記事ではデジカメのWebカメラ化現象についての動きを追いカメラ業界の未来を占ってみたいと思います。


最初に注目されたのはSIGMA fp

私の記憶では、最初にSNSなどで注目を集めたのはSIGMA fpだったと思います。このカメラはもともとUSBでPCに接続することでWebカメラと同じように画像を出力する「ビデオクラス(UVC)」機能を持っていたため、それが注目されることになりました。

後述する他社の場合には、PCにユーティリティソフトウェアのインストールする必要があるため、WindowsとMacの両対応ができないということもありますが、SIGMA fpはカメラ自身が市販のWebカメラとして振舞うようになっているためシンプルに利用ができました。

山木社長も!(4/10の投稿なので結構早い時期です)

 

素早くユーティリティを提供したCANON

4月末には米キヤノンがBetaという条件付きでWindowsからWebカメラとして認識されるユーティリティソフトウェアを提供し、さらにその1ヶ月後の5月末にはMacにも対応しています。

今回の素早い動きをみるとカメラの開発環境がしっかり整備され、何か新しいことに対して柔軟に対応できる開発ツールや経験があるのだと感じました。

ただちょっと不思議に思ったのが、なぜ日本のキヤノンではなく、米国の法人からの提供だったのかということです。Betaと付けた上にさらに公式提供ではないことを強調するためにそうしたのかなと考えてしまいました。(もちろん本当に米国で開発されたのかもしれません)

 

それを追う、FUJIFILMとSONY

5月末には富士フイルムからもキヤノンと同じ方式でWebカメラ化するアプリが公式サイトからダウンロードできるようになりました。こちらはWindowsだけのようですが、フィルムシミュレーションが使えることが大きな特徴になっています。

フィルムシミュレーションは、静止画向きのぱっと見派手な他社のフィルター系と違い、長時間見る動画にも適用しやすく、雰囲気によるセルフブランディングに効果があるため、どの様な使われ方をするのか注目していきたいと思います。

 

ソニーからは6/21に発売予定のVlogに特化した「VLOGCAM ZV-1」がWebカメラとして使えるようになるという発表がありました。(ソフトウェアは7月予定) Vlogに適した高度なフォーカス機能がどこまでWebカメラの中で利用できるのか他社との差別化ポイントになります。

SIGMA fpの内部ファームウェア方式と違い、PC側にソフトウェアを用意する場合には、同じ設計プラットフォームで開発された複数のカメラに対応しやすいという特徴があります。ZV-1以外のカメラでも同ソフトウェアが機能する可能性がありますので、ソニーユーザーの方はちょっとだけ期待しているのではないでしょうか。

富士フイルムとソニーを見ていると単なる高性能Webカメラではなく、画作りの良さや高度なAF機能のような自社の得意な技術を体験できるようにしてきており、Webカメラ対応が第二世代になってきていると感じます。


ミラーレスを引っ張ってきたPANASONICとOLYMPUS

今回の動きの中で、SNSなどで聞こえてこないのがミラーレス一眼を生み出したパナソニックとオリンパスの両社です。

本来ミラーレスの本質には、「常時映像入力」による顔認識AFやアートフィルターなどの作画UIであり、その延長としてその映像を使った様々な機器との連携があります。

当然こういった思想は理解できていたはずですが、どのような理由でソフトウェアを迅速に作ることができなかったのでしょうか?

ミラーレスの歴史の長さによって、開発システムが最新化できていなかったり、最初にミラーレスを生み出したメンバーが世代交代してしまい思想が引き継がれていないのではないかと心配です。

これからキヤノンやニコンが本格的にミラーレスに参入し競争が激しくなる中でユーザーに寄り添い、ミラーレスの本質をリードしていくためにも、私はWebカメラへの対応は重要だったと考えています。

ミラーレス化の本質として「メカからソフトウェアへ」という言われ方もしていました。ハードウェアを変えなくてもソフトウェアで変化していくということは最も重要な点で、どの会社でもやろうと思えばできるのですが今回のような事態になってその対応力に思った以上に差があることが可視化されてしまいました。

その意味で今回のコロナウィルスに端を発した在宅勤務への対応、Webカメラ化への活用の一連の流れを振り返ってみてみると、シグマがミラーレス一眼思想の最先端にいること、キヤノンはやっぱり凄い会社だったこと、富士フイルムとソニーは映像文化にちゃんと対応しようとしていることが分かりました。




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