作品集-41

デジカメUI: スマホ連携とUX拡大

デジタルカメラはそれだけで完結した製品で、撮って見るだけなら他の機器やサービスを必要としない。
初期のころはそのことが商品価値の本質でもあった。

一方でデジタル機器としてデジカメは、様々な機器やサービスと接続して、機能やユーザーの体験を拡大することができる。

以前のデジカメは、編集や管理、活用をするためにPCへ画像を転送することが中心だったが、現在はスマートフォンのアプリと一緒に使うことで撮影現場でのカメラコントロール(リモコン)機能やGPSデータのタグ付けなどにも連携機能が広がってきている。

パナソニックの「Image App」アプリのトップ画面


スマホのリソースを最大限に活用する

ではスマホのどのような特徴がデジカメとの連携において効果を持つのかみてみよう。

●大画面
撮影ファインダーとしても再生モニターとしても大画面であることで、より細かい確認ができ、タッチ操作もやり易い。

●外部との通信
データ通信によって、撮影した画像をすぐにSNSにアップできるだけでなく、カメラの空間・物体認識情報やファームウェアなどの情報を常に最新にしておくことができる。

●位置情報の取得
GPSやWi-Fi、基地局の情報によって、野外だけでなく室内でも高精度に位置情報が取得できる。

●高度な計算能力(AI/AR関連)
スマホアプリの高度化と共にそれを実現するシステムの能力が高度化しており、計算リソースとして活用することができる。

●リッチなUI
音声認識、加速度センサー、方位センサーなどを組み合わせれば新しい操作体験を提供できる。

●データ保存
複数のカメラに共通するデータを保存しておけば、バックアップになるだけでなく運用がシンプルになる。

ちょっと書き出しただけでも、スマホのリソースを使うことでデジカメをパワーアップできることが分かる。

またリモコンとして使われている通り、カメラから分離されていることによって次のようなメリットもある。

・操作によってカメラに振動を与えない(動画撮影中に設定変更が可能になる)
・複数カメラを同時に操作できる(HUBの役割ができる)
・安全なところから操作できる(撮影領域の拡大に伴う危険を回避できる)


LUMIX DC-G9の接続機能を見てみよう

まずスマホ連携の話を進める前に、その他の接続先について整理しておく。
パナソニックはパソコンからTVまで多様な製品を扱っているため、技術的に可能なことは一通りできるようになっている。

・USBケーブルを使ってPCと接続する(画像取り込み/テザー撮影)
・Wi-Fiを使ってPCと接続する(画像取り込み)
・DLNAを使ってTV/AV機器に画像を送る
・Wi-Fiを使ってプリンターへ直接印刷する
・Wi-Fiを使ってクラウドと接続する

では、次にスマホ(アプリ)連携で出来ることをみていこう。
こちらも他社でやれることは一通りやれるようになっている。唯一無いのが画像に対するエフェクト(調整、演出)である。

・Bluetoothでシャッターの操作
・撮影リモート操作(ライブビュー付)
・Wi-Fiで画像を取り込む
・SNSへの画像送信
・カメラ設定を保存/書き戻しする
・スマホの位置情報をカメラ画像に付加する
・スマホの時刻に合わせる

・カメラ画像の取り込み
・フォトコラージュ作成

リモート撮影画面、Quickメニューを使いこなすことで、多少の操作はできそうであるが、カメラのSUI(ダイヤルなど)の設定を上書きすることはできない。

一通りの機能が既にそろっているが、スマホ連携が持つ可能性を活かし切れているとは言えない。カメラの高性能コントローラーとして、またはカメラから離れていることに対して、更にこんな機能が欲しいというものは沢山あるので少しまとめておく。

・カメラ設定のメール添付(外部ファイル化、中間フォーマット化)
・複数カメラの同時操作
・複数カスタム設定の連続切換撮影のプログラミング
・マルチ置きピンプログラミング(XY設定、Z設定)
・スマホマイクの音声を動画の音声に合成する(ライブナレーション)
・動画撮影中のライブクロップ/ライブズーム

単なる1対1のリモコンや画像取り込みではなく、複数機器連携のHUBとして、または高度な撮影プログラム編集アプリとしての進化もしていくことになる。
もちろん内容が高度になれば、コンテンツとして外部ファイル化してユーザーコミュニティで共有し、それを取り込むだけで高度なことができるようになっていくことも同時に環境が整っていかなければならない。

まとめ

各社同じような状況であろうが、カメラメーカーの意地としてスマホを認めるわけにはいかない。良いレンズで圧倒的な画質の写真を撮ること以外に価値を広げるわけにはいかない。
という心のブレーキがかかってしまっているように思うが、近年の一眼カメラの出荷数の増加や高級志向は、スマホとSNSが「価値ある写真」の活かしどころを作った結果であり、この流れにブレーキをかける理由はなくなっている。

高度な使い方とそれをサポートするコミュニティを左右のエンジンにして、カメラが写真というモノを得る手段から、撮影という体験を得ることへと昇華していくと信じている。






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