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山、粧う酒器

●「2024 秋の山椒展」
2024年 9月14日(土)~ 23日(月)
11:00 ~ 16:00
会場 / 器とその周辺 山椒
北海道川上郡弟子屈町湯の島3-3-25
電話 / 015-482-2666

特別企画 / 今宵堂 「山、粧う酒器」

次の季節が訪れはじめた道東・弟子屈「器とその周辺・山椒」さんでの『秋の山椒展』。今宵堂は、すこし先の紅葉を思いつつ、「山、粧う酒器」と題して明浄にして粧うが如しな酒器や肴の器をお届けしました。

「山彩片口」

北の大地の秋とは・・・?
何度か訪れた記憶を辿りながら、
粗野に色付いた景色を映しました。
「山彩盃」
「山彩平鉢」
「錦手徳利」

下絵に上絵を重ねて錦秋の山野へと。
酔いもすすめば、顔も紅く。
「馬鹿盃」

天高く馬肥ゆれば鹿も追う。
思索に耽るのもいいけれど、
酔って歌って馬鹿になるのもまた楽し。
「小枝紋肴皿」

晩秋の枯れ枝の重なりは、
静かな季節へと向かう模様。
もし文字に見えたりなんかしたら、
それはちょいと酔い過ぎでは?
「落葉皿」

葉皿は葉皿でも落ちた葉を。
枯れかけ枝から落ちたその一枚に、
季節を経てきた色が重なります。
「茄子徳利」

秋の旨いもんは色々あれど、
平安の頃より艶やかな紫紺は極上の色。
そして長くて愉しい夜の色。
「茄子盃」
「菊豆皿」

秋花といえば菊。
骨董で見つけた門跡寺院の瓦から、
その瓦当に彫られた十六菊花紋を象りました。
「小間絵コロ茶碗」

惚けた北斎の写しに落葉をかけて、
オチつけてみました。
「織部肴皿」

茶の炉開きの取り合わせに、
ふくべ、いんべとともに
三部に数えられる織部。
野の色から消えゆくからこそ
恋しい色となるのでしょうか。
「お猪こ」

晩秋の夜、里へ下りてきて
田畑を喰い荒すは酔いどれの如し。
酒卓をちょこまか駆ける小さなウリ坊。
逆立ちすると酒が呑めるのが ウリでございます。
「枯盤」

野の色は緑から茶へ、
でもよく見れば枯野も暖色。
すすきやねこじゃらしも揺れる
秋の景色へ月見団子を。
菊戴皿きくいただきざら

秋菊のひとひらのような冠羽をもつ
日本最小の野鳥・キクイタダキ。
世界で一番ワインを呑む民・
ルクセンブルクの国鳥は、
小さな肴を携えて囀ります。
「蝙蝠箸置」

蝙蝠は季語でいうと夏。
でもハロウィンにも現れ、
吉祥門として新春の目出度い席にも羽撃く。
どっちつかずの八方美人が
このケモノのいいところ。
「短冊箸置」

釧路で食べた炉端やザンギ、
むかわ町でたべたししゃも・・・、
北の大地のうまいもんを思いつつ
筆を走らせました。

○○の秋という言葉が様々あるように、この季節へと思いを巡らせるものは様々。その秋の様々を小さく添えながら拵えた酒器たちでした。

扇風機がまだ回る京都から見ると、ひと足早い季節の器は果たして?とお送りしたつもりでしたが、先日、「山椒」さんから朝2℃まで下がったとの便り。十年前、夏に訪れた摩周湖であまりの寒さに上着を羽織ったのを思い出しました。

今回「山椒」さんに訪れられた斜里のおさしみおじさん。ご近所のスーパー「ビッグマートみたに」のお刺身を日々instagramで紹介されています。道東の美味しそうなお刺身に、小枝紋の肴皿がうれしくお伴させていただいている様子・・・器とともに知床まで旅できたようなうれしい思いです。

いつかまた、今度は器だけでなく自分たちも道東へとの思いを募らせています。

「器とその周辺・山椒」さんでの展示は、器や道具のみならず、素麺・地豆・いりこなど楽しい食材も色々。秋は日々の食が一層愉しみになる季節・・・なんて四季通じて宣っている言い訳をしながら、今宵も盃を重ねてゆきたいと思います。