【詐欺、ダメ、絶対!】ドーピング馬は評価したくない

ジャスティン・ガトリンというドーピング違反を2度も犯した金メダリストがいます。彼について武井壮さんがかつてこのように言っています。

「ドーピングっていうのは、ただ順位をかすめ取るだけじゃないから。オリンピックっていうでっかいビジネスに乗っかってスポーツが動いてる上では、文化とか経済も奪う略奪行為だから、国際的詐欺行為だと俺は思う。もっと大きく断罪されていいと思う。ドーピング違反でその間、競技は出なくたってトレーニングはしていいわけだから、その強くなった体を維持することができると俺は思う。絶対にナチュラルでは手に入らなかった力を1回手にしてるわけだから、そこからいかに処分を受けたからっていって、まったくフェアな戦いはない」

サンスポ https://www.sanspo.com/article/20170808-TMRCXEXMUNOILESJ6NWO6UKYWY/


僕はこの言葉は競走馬のドーピングにもあてはまると信じています。

チリにラカタン(Racatán)という馬がいます。この馬は南米大陸でもっとも歴史のあるGⅠ競走であるエル・エンサージョを勝利しました。

しかし、レース後のドーピング検査で禁止薬物のトラマドールが検出されました。もちろん、ドーピング違反で失格です。

それだけなら「GⅠでドーピングが出ちゃったねぇ~ハハハ」で済みます。つまり、チリ国内だけの出来事として片付けられます。しかし、ラカタンの場合は別に大きな問題があります。

ラカタンはエル・エンサージョを勝ってから失格処分が下されるまでの1ヶ月の間に、香港への売却が決まったのです。売却が確定したのはドーピング違反が分かるわずか数日前のことでした。

外国への売却では大金が動きます。何千万円、場合によっては何億円という規模です。薬の力を借りてGⅠを勝ち、GⅠ勝ち馬という商品価値をぶら下げて外国に売って大金を稼ぐ。これはもう立派なアムウ……じゃなくて立派な詐欺です。

しかも、ラカタンを管理していたオスカル・シルバ調教師はドーピング前科持ちです。2020年のGⅠセントレジャーでも管理馬からコカインの陽性反応が出て失格を食らってます。短期間に2回、偶然なわけねぇだろ。お前は競馬界のガトリンかネリかアリスター・オーフレイムか。

「なんでドーピング違反が分かるまでに1ヶ月もかかるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

南米大陸には IFHA のリファレンスラボラトリー、いわゆるドーピング検査などを行なう認定機関が存在しません。そのため、検体を外国の認定ラボに送って検査してもらいます。

チリは現在オーストラリアのラボに検体を送って調べてもらっています。なので、正式にドーピング違反が分かるまで1ヶ月くらい時間がかかるわけです。

もちろん僕は薬のプロでも馬のプロでもないので、ドーピングが競走馬にどれほどの影響を及ぼすのか知りません。薬の1つや2つでサイヤ人がスーパーサイヤ人になることもないでしょう。

でも、やっぱりフェアじゃないよ。たとえ能力が 1 から 2 に増えるくらいの微力だとしても、スポーツでの 1 の差はデカいです。だから禁止されているわけで。今回のラカタン事件は、誰がどう見たって競馬という巨大ビジネスを利用した略奪行為です。

僕は1度でもドーピングをした馬を、故意だろうと偶然だろうと、どんな薬物だろうと、絶対に馬のせいではないのは分かっているけれど、評価することはありません。

だから、具体例を出して悪いけど、ソーヴァリアントのことはまったく評価していません。今後どれだけ重賞を勝とうと、仮にレコードタイムを出そうと、その記録は参考記録扱いにするべきだと思っています。

「薬が完全に抜ければ別にいいじゃん」っていう意見も分かります。ぶっちゃけそうだよなとも思っています。でも、武井さんも言ってるように、ドーピングで出走停止を食らってもトレーニングはできちゃうわけだから、やっぱりそれはセコい。

残念なことに、南米競馬ではバッコバコ禁止薬物の違反が出ます。アルゼンチンとか酷いですよ。年に1,2例は必ずGⅠでドーピング違反による失格が起きます。

もっと残念なのは、日本の生産者や馬主がそうしたドーピング南米馬を知らん顔して購入していることです。日本が輸入した南米牝馬の中には、GⅠでドーピング違反をやらかして失格処分を食らった不届き者がいます。

いや、別にいいんですけどね。その人がドーピングを承知で納得して買ったなら OK だし、人様の買い物に他人がケチをつけることはできませんから。良い産駒が産まれればそれが正義なわけですし。

でも、ドーピング馬を買うなんて誰も得しないよ。誰も幸せになれないよ。むしろドーピングをした奴らにしか利益がないし、ドーピングをした奴らがウハウハで札束を数えられる。それは果てしなくアホくさい。

それに「ドーピングした馬でも結果を出せば日本は高値で買ってくれる」という間違ったメッセージを与えることになりかねません。日本の競馬はクリーンです。クリーンであることが売りだし、クリーンであることが世界的な評価に繋がっているし、クリーンであることを自ら誇りにしてるはずです。そのイメージを守りたいなら、ドーピング歴のある馬に手を出すべきではありません。間接的にドーピングに手を貸すようなことをしてはいけません。

僕は競馬界はもっとドーピングに厳しくなるべきだと思います。偶然だろうと故意だろうと、1度でもドーピングした馬は国境を越えるのを禁止するとか、繁殖馬になるのを禁止するとか、セールに上場するのを禁止するくらいの処置があってもいいと思います。

競馬はビジネスです。ドーピングはビジネスにおける詐欺行為です。詐欺、ダメ、絶対!

真っ当に競馬と向き合っている人間がバカを見て、インチキした奴が甘い蜜を吸うのはどう考えてもおかしいっすよ。今はインチキする奴こそが成功する世の中なのかもしれないけれど。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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