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8月2日の新聞1面のコラムたち

 涌井慎です。趣味は新聞1面のコラムを読むことです。話題が実に多岐に渡り、知らないことを知ることができるからです。読売新聞『編集手帳』は世界的バイオリニストの佐藤陽子さんの訃報について書いていました。二刀流といえば、いまは大谷翔平の代名詞のようになっていますが、佐藤さんも二十代の頃、バイオリニストとして以外にもオペラ歌手として、ヨーロッパの舞台で「蝶々夫人」を演じたこともあったそうです。バイオリンに影響が出るんじゃないか、と周りがごちゃごちゃ言うなかでの挑戦だったようです。ごちゃごちゃ言う周りの気持ちはわかるようなわからないような、です。人としてみるか商品としてみるか、はたまた、そのどちらにも割り切れず、どうしたものかと途方に暮れるか。人として見る人にも商品として見る人にも、どちらにも曲げられない正義があります。だいたい立場の強い人の意見が通ります。たいていの場合、商品として見る人の意見が通りますが、佐藤さんご自身の信念が通ったということでしょう。だって佐藤さんは人ですもの。人を商品としてしか見ない人、あるいは、人ではなく金しか見えない人たちには、人の抱くロマンがわからないのでしょう。それがわからない人ばかり偉くなっていきます。

 偉い人は、ウイルス禍において舵をとる重要な役割を担いますから、ちゃんと人を見てほしいものですが、人にもいろいろありますから、どの人を見るのか、というのも人それぞれ。例えば京都新聞『凡語』に載っていましたが、大阪府の吉村知事は濃厚接触者の待機期間自体を廃止すべきだと言っているそうです。いっぽうで、クラスターの発生を懸念する声が医療や介護の現場からは上がっています。待機期間の短縮には科学的根拠が乏しいとする専門家の意見もあります。何が正解か、ということは私にはわかりかねますが、一つ確実に大事だといえるのは、方針を決めるリーダーが「信頼されていること」だと思います。信頼できる人ならば「あの人がそう言うのなら」と思えますが、信頼できない人には何を言われても「なんでおまえにそんなことを言われなあかんねん」となるのが人情というものでしょう。世間体だけ気にして責任逃れをするようなリーダーの言うことを誰がちゃんと聞くでしょう。

 己の私腹を肥やすことしか考えていない連中も考えものです。朝日新聞『天声人語』には、またまたオリンピック関連の醜い金の話が出ていました。東京五輪・パラリンピックのスポンサー契約を取るにあたり、紳士服大手のAOKI側が、大会組織委の理事だった高橋治之氏側に多額の資金を提供したのではないか。そんな疑いが強まり、東京地検が捜査しています。難しいことはよくわかりませんが、例えばこれが裁判沙汰になったときに、焦点は、この金が「賄賂にあたるか否か」ということになるのでしょう。私は、裁判でいつもこれが不思議でして、焦点は、そんなことではなく、「良心の呵責」とか「あなたにとっての正義」とか「本当にあなたたちには悪気がなかったのか」とか、そういうことだと思うんですよね。そこにいつも違和感があります。人を裁くシステムの限界を感じます。お花畑でしょうかしらね。

 産経新聞『産経抄』も訃報について。フィリピンのフィデル・ラモスさんがお亡くなりになりました。1986年2月22日、国軍参謀総長代行だったフィデル・ラモスさんは、エンリレ国防相と、数百人の兵士とともに軍の基地に立て篭もりました。独裁を続けてきた当時のマルコス大統領に反旗を翻したのです。2週間前に行われな大統領選でマルコスさんは勝利宣言していましたが、これは不正集計の結果であり、実際の勝利者は民主化勢力が推すコラソン・アキノさん。ラモスさんは国民と国軍兵士にマルコス打倒を訴え、呼応した100万人近い群衆が基地に続く通りを埋め尽くしました。大統領夫妻はマラカニアン宮殿を脱出。ラモスさんは、まさにピープルパワー革命の主導者だった、とは『産経抄』。しかし、功績の大きさの割には元軍人らしい手堅さが地味に映るのか、政治家としての「華」に欠けるからなのか、国民からの人気は高くないらしい。これも不思議で、政治家に必要なのは「華」ではなく「堅実さ」ではないのかしら。どちらか一つだけ選びなさいといわれたら絶対に「堅実さ」のある政治家を選びますけどね。

 日本の首相も「堅実」な感じがしますが、実際はどうなんでしょう。前の二人が堅実から程遠かったので堅実に見えるだけで、本当のところはよくわかりません。毎日新聞『余録』には、岸田首相が日本の首相として初めて核拡散防止条約(NPT)再検討会議に参加するため、ニューヨーク入りしたとありました。昨日の段階では朝刊では、まだニューヨーク入りしたところで止まっていて、岸田首相がどの程度、何について言及したのか、などはわかっていません。実は私もまだ今朝の新聞を読んでいないし、このニュースに関してはネットでも追いかけていないので、どうだったかはわからないのですが、岸田首相の場合、広島出身であるご本人の個人としての思いと、首相という立場で発信せねばならないことに少なからず乖離があるのが、ご自身も、もどかしいところではありましょう。難しいことを考えなくていい私たちとは違い、難しいことを考えなくてはならない仕事ですから、どうか、難しく考えに考え抜いて「堅実に」駒を進めていただきたいものです。

 日経新聞『春秋』を読んで驚いたのは、昆虫学者ファーブルの書いた『昆虫学的回想録』を『ファーブル昆虫記』と名付けて和訳したのが、社会運動家でアナキストの大杉栄だということです。監獄の中で読みはじめ「描写の詳密さ!」「文章の簡素雄渾さ!」に日常の不自由がすっかり晴れたのだといいます。前の二人の首相はとにかく国民への説明が下手くそで誠意がなく、タイプ的には描写はテキトーなくせに文章はやたら難しいという感じだったので、岸田さんには、是非ともファーブルを見習ってほしいものだと思う次第でございます。

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