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おまじない【怪談・怖い話】

これは、ある女性教師が関わった奇妙な話を元同僚から聞いたものだ。

藍花という少女が転校してきたのは、春も終わりかけた初夏の頃だった。彼女は目立つ美しさを持っていたが、それ以上に繊細で内気な性格が印象的だった。母親に見送られる際、「早くたくさん友達を作って、家に呼んでね」と優しく送り出された藍花。しかし、新しい学校ではクラスメイトたちがなぜか遠巻きに彼女を扱い、直接話しかけることを避けるような態度を取っていた。藍花は、またしてもいじめが始まったのかと、胸の内で徐々に不安を募らせるが、その思いを母には打ち明けられなかった。

最初は小さな出来事だった。彼女の持ち物が無断で持ち去られたり、無言電話が自宅にかかってくるようになった。藍花は「また、あの苦しみが始まるのか」と、過去のいじめを思い出し、再び孤独と恐怖に囚われ始める。そしてある日、決定的なものを見つけてしまった。机や椅子には、奇妙でおぞましい模様が刻まれていた。まるで呪いのおまじないのように見えるその模様は、彼女の心を崩壊させるには十分だった。耐え切れなかった藍花は、ついに自らの手首を切り、命を絶ってしまった。

藍花の葬儀では、クラスメイトたちが涙を流して彼女の遺影を見つめていた。「藍花さん、なぜ死んでしまったの?」と泣き崩れる彼らに、藍花の母親は激昂し、「あなたたちが藍花をいじめたんでしょう!日記に全部書いてあったわ!」と詰め寄った。しかし、クラスメイトたちは口を開くことができなかった。彼らには確かに藍花をいじめる意図などなかったからだ。

実際には、クラスメイトたちは藍花と仲良くなりたいと思っていた。しかし、どう接すればいいのか分からず、結果的に距離を置いてしまったのだ。持ち物を盗んだり無言電話をかけたのも、藍花への憧れが歪んだ形で表れたものだった。そして、あの不気味な模様も、実は呪いではなく「友情のおまじない」だったのだ。誰も悪意など抱いていなかった――そう、彼らはそう信じていた。

しかし、葬儀の後、藍花の母は遺影に向かって静かに呟いた。「お母さんね、昔、親友に友情のおまじないだと偽って、不幸になるおまじないを教えたことがあるの。その彼があなたのお父さんで……その報いなのかしらね……」

そしてクラスメイトたちは帰り道でふと立ち止まり、互いに話し始めた。「藍花さん、あのおまじないのこと、誤解してたんじゃない?後で調べたら、実はあれ、友情のおまじないじゃなくて、不幸を呼ぶものだったって……」「そんな!一体、最初にそれを言い出したのは誰だったの?」その場にいた誰もが思い出したのは、あの女教師だった。

教室で冷たい微笑を浮かべ、黒板に奇妙な模様を描きながら彼女はこう言っていた。「これはね、私が昔、親友から教わった『友情のおまじない』よ」

[出典:20: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/06/20(土) 00:21:15 ID:3tOvZQbJ0]


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