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岩塩と青LEDに封じられた怨念【怪談・怖い話】

これは、あるIT企業に勤める竹内さん(仮名)から聞いた話だ。

竹内さんが駆け出しのシステムエンジニアだった頃、Windows XPからWindows 7への移行が盛んに行われていた。彼が担当したのは、小規模な製造業を営むA社での作業だった。小規模とはいえ、200台近いパソコンの移行作業を、数人のチームで一日で終わらせるというタイトな計画が組まれていた。

A社の事務所に初めて足を踏み入れたとき、竹内さんは不思議な違和感を覚えたという。事務所内には金属と油のにおいが充満し、その中に混じって何とも言えない腐臭が漂っていた。目を引いたのは、事務所のあちこちに置かれた小皿と、その上に無造作に置かれた石。そして、夜になると青白い不気味な光を放つLEDの間接照明だった。

作業当日、竹内さんは他のメンバーと別れて一人で工場の詰め所に向かった。工場は土曜日で無人のはずだったが、詰め所の中に入るとすぐに違和感を覚えた。挨拶をし、作業を始めようとPCに手を伸ばした瞬間、「カシャッ」という音と共に、まだ触れてもいないDVDトレーが勝手に開いたのだ。

「気のせいだろう」と自分に言い聞かせ、作業を続ける竹内さん。しかし、別のPCのファンが突然全力で回り始め、床に落としたペンを拾おうと机の下に潜り込むと、反対側の机の下から安全靴のつま先が見えた。「うわっ!」と驚いて頭をぶつけたが、改めて確認すると、それはただの靴が揃えて置かれているだけだった。

作業が進むにつれ、竹内さんは何度も不気味な出来事に遭遇したが、古い工場だからこそ建付けが悪く、偶然に過ぎないと自分に言い聞かせた。ようやく作業が終わり、部屋を出る際、彼は再びペンを落とした机の下を見た。そこにあったはずの安全靴は、跡形もなく消えていた。竹内さんはその瞬間、背筋が凍りつき、急いで部屋を後にした。背後で扉が「ガタガタガタ!」と激しい音を立てたが、振り返る勇気はなかった。

昼休みには、他のメンバーもそれぞれが怪現象に遭遇したことを報告し合った。しかし、作業は続行せざるを得ず、皆で午後も無心で作業を進めることにした。その日の夜、ようやく作業が完了し、工場の担当者に報告を終えた竹内さんは、部屋の隅に目を留めた。そこには例の小皿に乗った石と青いLED照明が置かれていたのだ。

「ところで、あれは何ですか?」竹内さんが尋ねると、担当者は一瞬ぎょっとした表情を見せ、少しの沈黙の後に語り始めた。あの石は岩塩で、盛り塩より強い効果があるという。青い照明は霊媒師が「悪い気が溜まらないように」と勧めたものだというのだ。

数年前、この工場の裏手に流れる川で身元不明の遺体が見つかり、それ以来、工場内で霊現象が頻発し、従業員が機械に挟まれて大怪我をする事故まで起きたという。その事態に霊媒師が呼ばれ、悪い気が集まっていると言われた場所に岩塩と青い照明が置かれるようになったというのだ。

霊的な現象はそれ以来ほとんど収まったものの、今でも消したはずの電気が朝になると点いているなどの不思議な出来事が、時折起こるとのことだった。

竹内さんは、二度とその工場に足を踏み入れることはなかった。

[出典:834 :本当にあった怖い名無し:2022/08/12(金) 13:33:24.43 ID:7gmZYfRY0.net ]


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